[JH08] 子どものキャリア形成に寄与する学校外要因の心理学
Keywords:キャリア発達
企画趣旨
近年,学校におけるキャリア形成支援への関心が高まり,教育学や教育心理学において検討が行われつつある。しかし,子どものキャリア形成は,学校だけで行われるわけではない。学校内での直接的なキャリア教育とはまた別のさまざまな要因が,結果的にキャリア形成に寄与していくことは想像に難くない。
そこで本シンポジウムでは,学校外の遊びや学習の場,家庭や幼少期の環境など,学校の外ではたらく要因がキャリア形成におよぼす影響に焦点を当てて,意欲的な研究知見を提出している先生方を迎えて,議論を行いたい。また,子どものキャリア形成を意識した支援や環境づくり,学校教育との連携の可能性などへの示唆を導きたい。
子どもの放課後生活とキャリア形成
佐藤哲康(川村学園女子大学)
子どもたちは学校内での授業や交流のみならず,放課後の自由な時間に経験する遊びや活動を通じて,社会性やコミュニケーション能力を発達させる。充実した放課後生活は学童期の発達課題を達成するために不可欠なものであることは言うまでもない。
しかし,現代は間接的・擬似的なコミュニケーションが増加する反面,子ども同士の直接的な交流やコミュニケーションなどの減少から社会性を十分身につけることができず,精神的な不安定さや集団への不適応という形で問題が顕在化していることが指摘されている。
本シンポジウムでは1)小学生の放課後生活についての研究結果(基盤研究C:課題番号24530833 )と2)充実した放課後の過ごし方を提供するために取り組まれている「放課後子ども教室」の事業から,子どもたちにとってのキャリアとは何か,適切なキャリア形成に寄与する要因と不適切なキャリア形成が及ぼす悪影響について話題を提供したい。
親の期待の受け止め方と自己形成
渡部雪子(東京成徳大学)
キャリア形成に寄与する学校外要因として,親の期待の受け止め方について検討する。子どもが親から期待されることをどう感じているかということが子どものキャリア形成に関連することが示されている。仲間との関係が重要になってくる中学生においても,進路や職業選択においては両親への同調が継続するとの指摘があるように(Berndt, 1979),まだ自分自身の将来の方向性を模索している年齢において親の期待を様々な形で受けとめることは自己を明瞭にするうえで一定の役割を果たしていると考えられる。中学生を対象に親の期待の受けとめ方と自己形成の関連を調べたところ,親の期待を積極的に受け止めている子どもは自己が明瞭になっており,将来やりたいことが明確になっていることが示されている(渡部・新井・濱口, 2012)。
このように期待の受けとめ方と自己形成の関連が示されたことから,具体的なキャリア形成につながる支援策を提案し議論することとしたい。
学習塾とキャリア発達
伊田勝憲(静岡大学)
中高生を対象に通塾動機を探ってきた。通塾を開始する理由・動機として,受験対策・成績向上のみならず,保護者や友人との関係を挙げるケースがあり,通塾を継続する理由として,塾講師や友人との関係や塾という場・環境の居心地のよさを挙げるケースも見られる。加えて,Eriksonの心理社会的発達理論における第Ⅳ段階「勤勉性」に及ぼす影響を検討すると,学校での学習を補完するという通塾動機は負の影響であったが,塾での学習を通して実力をつけたいという通塾動機は正の影響を示した。通塾経験者の中の個人差ではあるが,学習塾という場とそこでの学習活動が児童期から青年期にかけてのキャリア発達に寄与する可能性が考えられる。学校教育に比べて研究が少なく,競争や格差等の視点から批判的に見られがちな学習塾について,その形態の多様性や生徒側の内面にも着目した研究が望まれる。
音楽の専門教育とキャリア発達
佐藤典子(東海大学)
大学等の高等教育機関で音楽を専門に学ぶ学生が,高等学校までの学校の授業以外で音楽を学ぶことなく進学することはほとんど無いと言って良いだろう。それほど,学校外の音楽経験が当たり前のように必要とされる分野はそれほど多くはないと思われる。
具体的には,楽器の演奏技能等を学ぶために行われるお稽古事等を,早い場合には幼児期から始める場合もある。その際には本人の意思というよりは親の意向が優先されることも多く,子どもの性別や家庭の経済状態,親自身の音楽活動に対する考え方などが大きく影響する。それらの影響力は,開始時点だけではなく,継続するか否か,より高度な学習機会を求めるかどうかの判断にもかかわる可能性がある。
一方で,学校の授業や学校内での課外活動等に参加することがきっかけとなって,音楽へのより深い学びにつながる場合もある。
このような学校内外での音楽経験に影響を与える諸要因についての研究は国外でも近年行われることが増えており,国内の学生を対象にした調査結果も含めて,当日は考察を行いたい。
近年,学校におけるキャリア形成支援への関心が高まり,教育学や教育心理学において検討が行われつつある。しかし,子どものキャリア形成は,学校だけで行われるわけではない。学校内での直接的なキャリア教育とはまた別のさまざまな要因が,結果的にキャリア形成に寄与していくことは想像に難くない。
そこで本シンポジウムでは,学校外の遊びや学習の場,家庭や幼少期の環境など,学校の外ではたらく要因がキャリア形成におよぼす影響に焦点を当てて,意欲的な研究知見を提出している先生方を迎えて,議論を行いたい。また,子どものキャリア形成を意識した支援や環境づくり,学校教育との連携の可能性などへの示唆を導きたい。
子どもの放課後生活とキャリア形成
佐藤哲康(川村学園女子大学)
子どもたちは学校内での授業や交流のみならず,放課後の自由な時間に経験する遊びや活動を通じて,社会性やコミュニケーション能力を発達させる。充実した放課後生活は学童期の発達課題を達成するために不可欠なものであることは言うまでもない。
しかし,現代は間接的・擬似的なコミュニケーションが増加する反面,子ども同士の直接的な交流やコミュニケーションなどの減少から社会性を十分身につけることができず,精神的な不安定さや集団への不適応という形で問題が顕在化していることが指摘されている。
本シンポジウムでは1)小学生の放課後生活についての研究結果(基盤研究C:課題番号24530833 )と2)充実した放課後の過ごし方を提供するために取り組まれている「放課後子ども教室」の事業から,子どもたちにとってのキャリアとは何か,適切なキャリア形成に寄与する要因と不適切なキャリア形成が及ぼす悪影響について話題を提供したい。
親の期待の受け止め方と自己形成
渡部雪子(東京成徳大学)
キャリア形成に寄与する学校外要因として,親の期待の受け止め方について検討する。子どもが親から期待されることをどう感じているかということが子どものキャリア形成に関連することが示されている。仲間との関係が重要になってくる中学生においても,進路や職業選択においては両親への同調が継続するとの指摘があるように(Berndt, 1979),まだ自分自身の将来の方向性を模索している年齢において親の期待を様々な形で受けとめることは自己を明瞭にするうえで一定の役割を果たしていると考えられる。中学生を対象に親の期待の受けとめ方と自己形成の関連を調べたところ,親の期待を積極的に受け止めている子どもは自己が明瞭になっており,将来やりたいことが明確になっていることが示されている(渡部・新井・濱口, 2012)。
このように期待の受けとめ方と自己形成の関連が示されたことから,具体的なキャリア形成につながる支援策を提案し議論することとしたい。
学習塾とキャリア発達
伊田勝憲(静岡大学)
中高生を対象に通塾動機を探ってきた。通塾を開始する理由・動機として,受験対策・成績向上のみならず,保護者や友人との関係を挙げるケースがあり,通塾を継続する理由として,塾講師や友人との関係や塾という場・環境の居心地のよさを挙げるケースも見られる。加えて,Eriksonの心理社会的発達理論における第Ⅳ段階「勤勉性」に及ぼす影響を検討すると,学校での学習を補完するという通塾動機は負の影響であったが,塾での学習を通して実力をつけたいという通塾動機は正の影響を示した。通塾経験者の中の個人差ではあるが,学習塾という場とそこでの学習活動が児童期から青年期にかけてのキャリア発達に寄与する可能性が考えられる。学校教育に比べて研究が少なく,競争や格差等の視点から批判的に見られがちな学習塾について,その形態の多様性や生徒側の内面にも着目した研究が望まれる。
音楽の専門教育とキャリア発達
佐藤典子(東海大学)
大学等の高等教育機関で音楽を専門に学ぶ学生が,高等学校までの学校の授業以外で音楽を学ぶことなく進学することはほとんど無いと言って良いだろう。それほど,学校外の音楽経験が当たり前のように必要とされる分野はそれほど多くはないと思われる。
具体的には,楽器の演奏技能等を学ぶために行われるお稽古事等を,早い場合には幼児期から始める場合もある。その際には本人の意思というよりは親の意向が優先されることも多く,子どもの性別や家庭の経済状態,親自身の音楽活動に対する考え方などが大きく影響する。それらの影響力は,開始時点だけではなく,継続するか否か,より高度な学習機会を求めるかどうかの判断にもかかわる可能性がある。
一方で,学校の授業や学校内での課外活動等に参加することがきっかけとなって,音楽へのより深い学びにつながる場合もある。
このような学校内外での音楽経験に影響を与える諸要因についての研究は国外でも近年行われることが増えており,国内の学生を対象にした調査結果も含めて,当日は考察を行いたい。