日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PA067] 鳥取県におけるメンタルヘルスリテラシー教育に関する調査研究

藤田恵津子 (鳥取環境大学)

キーワード:心理教育, メンタルヘルス, 子育て

Ⅰ.問題と目的
近年,災害や事件,事故などの緊急事案が増加し,国民のメンタルヘルスリテラシー(メンタルヘルスやカウンセリングに関する知識と態度)の向上が急務となっている。筆者が平成24年度に実施した「地方都市と大都市におけるカウンセリングの意識に関する研究-鳥取県における乳幼児の保護者グループカウンセリングの普及をめざして-」の質問紙調査では,(1)カウンセリングに対するイメージは,主に「有益」「危機支援」「不利益」「未知」の4つに分かれた。(2)鳥取県と大阪市でカウンセリング・イメージに対する有意差は認められなかった。(3)鳥取県では相談相手にインフォーマルな社会的資源(家族,友人知人)を,大阪市ではフォーマルな社会的資源(教員,心の専門家,医療)を選ぶ傾向が見られた。(4)カウンセリングや心理教育を受けることでカウンセリングに対する理解が深まっている。(5)カウンセリングの基本的理解を深め,状況に応じた対処のしかたを知りたがっていることが明らかになった。
本研究では,県東中西部における乳幼児の保護者および教職員へ,以下の心理講座ならびにインタビュー調査を実施した上でメンタルヘルスリテラシーの向上を目ざすことを目的とした。
Ⅱ.方法と結果
対象園は研究目的および概要を説明した上で了解の取れた園のみとした。
1.東部および中部保育所における心理講座およびインタビュー (1)平成25年9月~平成26年1月(5回),東部A町まちづくり推進事業保育所「子育てサポート講座」。各回30名参加。(2)平成25年8月~平成26年2月(3回)中部B保育所 鳥取県教育センターアドバイザー事業「保護者支援を研究する会 保護者理解に関する講座」,保護者カウンセリング実施。各回20名参加。
2.平成25年10月 県東部保育協議会職員研修「ストレス・マネジメント講座」およびインタビュー 保育職員60名に実施。尚,東部4町保育職員4名にグループインタビューを実施。
3.西部保育所における心理講座およびインタビュー調査 平成26年6月現在,西部の保育園3園と実施日程の調整中。
Ⅲ.考察
1.心理教育 東部:(1)発達,(2)自己・他者理解,(3)カウンセリング,(4)多様な心理的アプローチ,(5)メンタルヘルス,発達障害などをテーマに講義と体験学習の構成で実施,理解と日常生活への応用を促進した。中部:(1)カウンセリング,(2)発達障害,(3)ストレス・マネジメント講座を実施後,各回,保護者へのカウンセリング実施。
2.各講座後の質問紙調査 内容,理解度共に8~9割が「満足」と回答。他のテーマに関する希望や関心領域(コミュニケーション,ストレス・マネジメント)について域の質問が多かった。また,講義とロールプレイやワークシートなど体験型の構成が支持を得た。
3.フォローアップのおたより(通信)発行 講座欠席者に向け,講座内容のまとめを発行。社会的援助資源へのアクセス向上に寄与した。
4.保育職員へのインタビュー 保育職員が必要と感じている心理的支援は(1)保護者へは愛着や信頼関係,発達,(2)園児へはアンガー・マネジメントなどの感情教育,(3)保育士には心理的支援,若手のフォローアップまた,カウンセリング自体の基本的知識や啓発,どこで受けられるか等の情報等があげられた。
Ⅳ.今後の課題
本研究の対象園は研究目的および概要を説明した上で了解の取れたごく一部の園のみとなったため,今後,対象園を増やすことでメンタルヘルスリテラシーやカウンセリングに対する一層の啓発に努めたい。尚,本研究は,鳥取環境大学平成25年度特別研究助成により実施された。