[PB028] センター試験における成績未利用者の受験行動の背景
センター試験成績で大学に出願しないのになぜ受験するのか?
キーワード:センター試験, 大学入試, 進学意思決定
問 題 と 目 的
高校生の大学進学に関わる意思決定は,どのようになされているのだろうか。
大学入試が選抜的意味を持つ状況では,受験者の絶対数と入学定員数の間で合否ラインが定まる。現在,少子化の影響で高卒者数は減少している。すると,学力要因以外に長期的なトレンドを持つ人口動態によっても出願動向は左右される。
またセンター試験では,従前からの国公立大学に加えて,私立大学の参加利用が増加している。それにより,一回の受験で多数の大学に出願できるようになり,事実上,受験機会が拡大している。
このような社会状況・入試制度の変化は,高校生の進路選択にどんな影響を与えているだろうか。
内田・橋本・鈴木(2014)は,高校新卒でセ試を利用する国公立大学への出願者は,この20年余の間,20万人の水準で安定的に推移していることを見出した。この受験者層は,人口収縮に際しても減少することなく,私大の参入に伴うセ試志願者の漸増といった変化とも一線を画する,特異的に安定した中核受験者層である(Fig.1)。
一方,私大のセ試利用の増加と共に,新参入層と呼ばれるセ試志願者が増えてきた。その内訳は,(1) セ試で私大だけに出願した私大専願者(短大含),(2) セ試の成績では,国公立大学にも,私立大学にも,短大にも出願をしなかったセ試未利用者,(3) 受験料は支払ったけれども受験はしなかった未受験者,の3つに大別される(Fig.2)。
本稿では,(2)のセ試未利用者の特徴を検討する。
Fig.1 センター試験志願者の中核層と新参入層
[内田・橋本・鈴木(2014)より再掲]
Fig.2 新参入層の内訳と私大のセ試参加率 (右軸)
[内田・橋本・鈴木(2014)より再掲]
方 法
セ試成績の未利用者について,(1) セ試志願者の高校の学科別の出願状況を分析。(2) 100名以上のセ試志願者がいる高校(1,660高校単位)を対象にして,セ試未利用者の構成比率を算出し,県別の頻度分布を分析。(3) 構成比率が際立って高い(平均±2SDの範囲外)特徴的な高校を抽出。
結 果 と 考 察
セ試成績の未利用者は単層構造ではなく,複層的と考えられる。彼らはAOや推薦入試の利用者だろうといった直観的な解釈は誤りのようである。
セ試未利用者は,私大のセ試参加率の上昇と共に減少してきたことから,多くは私大への出願を意図した志願者が中心だったと思われる(Fig.2)。
また少数派だが,高校の職業科(工業科・商業科・農業科)からの志願者が含まれることがわかった。
高校単位の分析からは,大学入試としての利用を意図していない受験層が垣間見られた。県単位,高校単位での指導方針が,セ試の志願行動に影響を及ぼしている可能性がある。
この大学入試に使わないセ試の受験について,受験生が心理的にどのように納得しているのか,どんな目的意識を持って受験しているのか,今後明らかにしていく必要があろう。
引 用 文 献
内田照久・橋本貴充・鈴木規夫 (2014). 18歳人口減少期のセンター試験の出願状況の年次推移と地域特性 日本テスト学会誌,10(1), (印刷中).
高校生の大学進学に関わる意思決定は,どのようになされているのだろうか。
大学入試が選抜的意味を持つ状況では,受験者の絶対数と入学定員数の間で合否ラインが定まる。現在,少子化の影響で高卒者数は減少している。すると,学力要因以外に長期的なトレンドを持つ人口動態によっても出願動向は左右される。
またセンター試験では,従前からの国公立大学に加えて,私立大学の参加利用が増加している。それにより,一回の受験で多数の大学に出願できるようになり,事実上,受験機会が拡大している。
このような社会状況・入試制度の変化は,高校生の進路選択にどんな影響を与えているだろうか。
内田・橋本・鈴木(2014)は,高校新卒でセ試を利用する国公立大学への出願者は,この20年余の間,20万人の水準で安定的に推移していることを見出した。この受験者層は,人口収縮に際しても減少することなく,私大の参入に伴うセ試志願者の漸増といった変化とも一線を画する,特異的に安定した中核受験者層である(Fig.1)。
一方,私大のセ試利用の増加と共に,新参入層と呼ばれるセ試志願者が増えてきた。その内訳は,(1) セ試で私大だけに出願した私大専願者(短大含),(2) セ試の成績では,国公立大学にも,私立大学にも,短大にも出願をしなかったセ試未利用者,(3) 受験料は支払ったけれども受験はしなかった未受験者,の3つに大別される(Fig.2)。
本稿では,(2)のセ試未利用者の特徴を検討する。
Fig.1 センター試験志願者の中核層と新参入層
[内田・橋本・鈴木(2014)より再掲]
Fig.2 新参入層の内訳と私大のセ試参加率 (右軸)
[内田・橋本・鈴木(2014)より再掲]
方 法
セ試成績の未利用者について,(1) セ試志願者の高校の学科別の出願状況を分析。(2) 100名以上のセ試志願者がいる高校(1,660高校単位)を対象にして,セ試未利用者の構成比率を算出し,県別の頻度分布を分析。(3) 構成比率が際立って高い(平均±2SDの範囲外)特徴的な高校を抽出。
結 果 と 考 察
セ試成績の未利用者は単層構造ではなく,複層的と考えられる。彼らはAOや推薦入試の利用者だろうといった直観的な解釈は誤りのようである。
セ試未利用者は,私大のセ試参加率の上昇と共に減少してきたことから,多くは私大への出願を意図した志願者が中心だったと思われる(Fig.2)。
また少数派だが,高校の職業科(工業科・商業科・農業科)からの志願者が含まれることがわかった。
高校単位の分析からは,大学入試としての利用を意図していない受験層が垣間見られた。県単位,高校単位での指導方針が,セ試の志願行動に影響を及ぼしている可能性がある。
この大学入試に使わないセ試の受験について,受験生が心理的にどのように納得しているのか,どんな目的意識を持って受験しているのか,今後明らかにしていく必要があろう。
引 用 文 献
内田照久・橋本貴充・鈴木規夫 (2014). 18歳人口減少期のセンター試験の出願状況の年次推移と地域特性 日本テスト学会誌,10(1), (印刷中).