日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PC068] 充実した余暇活動とその終結に伴う行動の類型化

佐野司 (筑波学院大学)

キーワード:余暇活動, ファン行動, 心理的健康

問題と目的
学生の余暇活動は,社会人が行うものと比較して時間的制約を受けない側面がある。睡眠時間や学業の時間などを割いた趣味への没頭や,平日でもコンサートやイベントに参加するファン行動などは,学生時代に許される行為である。一方で,就職,結婚,出産など,学生生活以降のライフイベントの中で,やむなくその熱中した活動を止めねばならないケースも多く知られ,心理健康面に危機をもたらすことが想定される。
そこで本研究では,本人の熱中・没頭度が高い充実した余暇活動を,やむを得ない理由でやめる,またはやめなくてはならない時にとる行動パターンを調査することを目的とした。さらに参加している余暇活動のカテゴリーによる,活動終結に伴う行動パターンの相違について検討した。
方法
調査協力者 高等教育機関に在籍する学生120名(男性:58名,女性:62名,年齢:18歳~29歳)。
質問紙 (1)調査対象者が現在,熱中・没頭している活動について自由記述で回答を求めた。複数ある場合は熱中・没頭度の高いもの1つに限定した。(2)(1)の活動への熱中・没頭度について,西川(2007)のEnthusiasm尺度の一部と調査者が作成した尺度8項目を5段階で評定させた(本件では分析から除外)。(3)(1)の活動をやめる際にどのような行動をとるのか,予備調査結果から選定された行動パターン44項目について,6段階で回答を求めた。やめる場面は就職や結婚などのライフイベントを含めいくつか事例を提示して,場面想定しやすいように配慮した。
結果と考察
熱中・没頭度の高い活動をやめる際の行動パターン44項目について探索的因子分析を行った。天井効果とフロア効果が示された15項目と,十分な因子負荷量を示さなかった4項目を除外した25項目で主因子法・Promax回転による因子分析を行った結果,5因子構造が妥当と判断された(Table 1)。第1因子は気を紛らわす行動のような終結からの逃避を示す「逃避的行動」,第2因子は終結による絶望感や失望感を強く感じる「絶望的思考」,第3因子は体を動かしてリフレッシュすることを意図する「アクティブ行動」,第4因子は趣味による束縛からの解放を享受する「解放感獲得」,第5因子は終結することで抱くネガティブな感情を前向きに捉えようとする「ポジティブ思考転換」と命名した。
次に調査協力者の因子得点を個別に算出し,その5因子の得点をもとにWard法による階層的クラスター分析を行った。その結果から,解釈可能なクラスター4層に類型された(Figure1)。自由記述の回答も併せ分析した結果,第1クラスターの活動はアイドル等へのファン行動が多く,活動の終結を受け止められない行動が顕著に高かった。第2クラスターはゲームやアニメ鑑賞を趣味とする回答者が多かったが,止めることへの否定的な反応は少なかった。第3クラスターもアイドルやアーティストへのファン行動が多かったが,第1クラスターと比較してネガティブな行動や思考の回答が低かった。第4クラスターは余暇活動のジャンルは広範で,5つの因子得点に突出したものが認められなかった。
ファン行動のように,対象の人柄や生き方への共感,対象への好意などによる熱中・没頭度が高いと,終結させることを割り切れないネガティブな思考や行動を取りやすいことが伺えた。一方で,ゲームやアニメ鑑賞といったいわゆる「オタク」な趣味への没頭があっても,その終結は前向きに捉えられる傾向にあることが推察された。