日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD002] 社会化エージェントの多層的影響に関する研究(9)

中学3年間における親・友人・教師エージェントが自己制御に及ぼす影響の変化

原田知佳1, 吉澤寛之2, 吉田琢哉3, 浅野良輔4, 玉井颯一5, 吉田俊和6 (1.名城大学, 2.岐阜大学大学院, 3.東海学院大学, 4.浜松医科大学, 5.名古屋大学, 6.岐阜聖徳学園大学)

キーワード:社会化, 自己制御, 発達的変化

中学3年間はいじめや非行行為の好発時期であり(法務省法務総合研究所,2013),問題行動が顕在化しやすい時期といえる。こうした中,我が国では,中学3年間の変化を追跡したアプローチが少ないことが指摘されている(五十嵐,2010)。吉澤他(2014;一連発表8)では,Grusec & Davidov (2010) の提唱する5つの社会化領域 (protection,reciprocity, control, guided learning, group participation) に基づき,親・友人・教師エージェントが中学生時の社会化指標に及ぼす個別的影響を確認した。本研究では,吉澤他(2014)に続き,縦断研究に向けた基礎的知見の報告として,横断データを用いて中学3年間の変化を考慮した分析を行う。具体的には,問題行動との親和性が高い自己制御指標として社会的自己制御(原田他,2009)を取り上げ,中学3年間における親・友人・教師エージェントからの影響力の差異を検討する。
方 法
対象者 2014年1月上旬~2月中旬にかけて,公立中学校1校で3回の調査を行った。1年生252名, 2年生121名, 3年生112名を分析対象とした。欠損値は完全情報最尤法で補完した。
測定内容 (1) 親の養育・しつけ(小学校低学年時):中道・中澤(2003)の応答性と統制からなる養育尺度,安香他(1990)の望ましい行動(良)と望ましくない行動(悪)からなるしつけ尺度を回顧法で用いた。 (2) 友人関係機能:丹野(2008)の尺度を改訂し用いた。 (3) 教師リーダーシップ:三隅・矢守(1989)の尺度を用いた。配慮,厳しさ,指導,親近の下位尺度を構成した。(4)社会的自己制御:自己主張,持続的対処・根気,感情・欲求抑制からなる原田他(2008)の尺度を用いた。
結果と考察
中学3年間における親・友人・教師エージェントから自己制御への影響力の差異を検討するため,まず,学年別に重回帰分析を行った。次に,重回帰分析の結果をもとにモデルを構成し,その学年差を多母集団同時分析(ロバスト最尤法)で検討した。等値制約を置いた4つのモデルの適合度指標および尤度比検定の結果から(Table1),友人指標から自己制御へのパス係数のみに等値制約を置いたモデル2を採用した。モデル2において有意差が示された標準化係数をTable2に示す。親の養育やしつけの肯定的影響は中学1年時でのみ確認され,2年,3年時では確認されなかった。一方,友人関係機能や教師の影響は,学年を通して確認された。当該結果は,児童期以降,親の影響よりも仲間集団などの家庭外において集団レベルでなされる社会化が重要な役割を果たすとするHarris(1995)の指摘と合致する。なお,学年によって,教師指標から自己制御へ影響する社会化領域が異なっていた。このことから,1年時ではprotectionの影響が強いが,学年が上がるにつれ,他の社会化機能の影響が強まることが示唆される。
以上の通り,Harrisの主張は,複数の社会化指標に焦点を当てた吉澤他(2014)の知見だけでなく,中学3年間の変化を考慮した本研究とも整合的であり,一定の頑健さが示されたといえる。ただし,親のしつけが友人からの影響を左右するとする知見(Mounts & Steinberg, 1995)も報告されていることから,今後は各エージェント間の交互作用的影響や縦断データを用いた検討が必要である。