日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD026] 仲間はずれによるネットいじめに関する考察

噂情報の違いは人物評価や行動に影響を与えるのか

加納寛子 (山形大学)

キーワード:ネットいじめ, 仲間はずれ, 噂情報

1.ブロックいじめ
国立教育政策研究所の調査によれば,いじめの4割は仲間はずれ,からかう・悪口は3割,かるくたたくは2割,ひどくたたくは1割であり,いじめのレパートリーの中では,仲間はずれが一番多いいじめの形態である 。特に昨今では,Line等のSNSが子どもたちの間で流行り,既読後即レス (即座の返事)を怠るとKS(既読スルー,既読無視)と見なされ,仲間はずれの原因となりがちである。子どもたちがSNSを利用する際には,複数のグループに所属している。しかし,一つのグループでKSから反感を買い,ブロックされると,悪評が伝播し,他のグループからも次々とブロックされるというブロックいじめの構図 ができあがる。

2.情報の蓄積と拡散
インターネット上では一度流れた情報は蓄積され拡散されるという特徴を持つ。R. D. パットナムによれば,「信頼」や「規範(非形式的な秩序)」,「ネットワーク」といった社会的仕組みは,人々の協調行動をしっかりと支え,社会の効率性を高めているというソーシャルキャピタルという概念を唱えた 。ソーシャルキャピタルを逆手にとれば,例えば「信頼」や「規範」を失墜させるような噂情報が流れると,デマであっても真偽に寄らずインターネット上の情報は蓄積され拡散される。

3.目的と方法
本稿では,いじめレパートリーの中の「仲間はずれ」に着目した。仲間はずれになるパターンについて,大学1年生17名に対し,円座型グループインタビューを行ったところ,A~Dに示す4パターンに集約できた。そこで,過去に接点がなく,大学入学と同時に知り合ったという設定で,ネット上の噂情報によって,仲間はずれの人に対する人物評価や行動に差が見られるのか否か大学1年生17名(有効回答数14名)に対し質問紙調査を行った。4人物の噂ストーリーを用意し,学生はそれをインターネット上で読んだ。人物評価は信頼,理解,親しみ,好感に関して6件法で,財布やノートを貸すか否かに関しては2択により回答を求めた。
A:規範的※+成績下
B:規範的※+成績上
C:反規範的+成績下
D:反規範的+成績上
E:噂情報なし
※おとなしく社会秩序を乱さないという点で規範的
4.結果と考察
人物評価の結果は図2に示した。信頼,理解,親しみ,好感の平均値は折れ線(左軸メモリ),4尺度の合算値は棒グラフ(右軸メモリ)である。クロンバックの信頼係数αは,A:0.97,B:0.94,C:0.93,D:0.83,E:0.92であり,4尺度には内的一貫性があると判断したため,合算値を使用する。
そこで,4尺度の合算値と物を貸すか否かに関する相関をとったところ,昼食代はr=0.85で高い相関,ノートはr=0.69で相関が見られた。信頼がおけると思う相手には貸すが,そうでない相手には貸さないという結果は当然のことであるが,リアルでは過去に全く接点のない相手であっても,ネット上の噂による情報は,人物評価や行動に大きく影響を与えることがわかった。不確かな情報は絶対に発信しない・伝達しない・鵜呑みにしない教育の重要性が示唆された。

図2 人物評価