[PD069] 自閉症傾向が認められる幼児の行動類型と社会的コンピテンスとの関連性の検討
養育者への質問紙調査にもとづいて
Keywords:自閉症スペクトラム障害, 行動類型, 社会的コンピテンス
【問題と目的】
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)の幼児の行動様式について,認知発達・身体発達・社会性の発達の途上にある幼児期では,他者理解の困難さや共同注意障害だけではなく,情緒的な対人経験の蓄積も関連しているとされ(狗巻,2010),多様な個性が認められると考えられる.実際,自閉症児の認知発達やコミュニケーション機能の発達により,孤立的態度・受身的態度・積極的態度というように,自閉症のタイプ論に即した発達が観察されたとの報告もある(田辺,2006).
仮にASD幼児の行動類型に違いがあるとすると,その違いはASD幼児の社会性の違いにも反映されるはずである.柴田(1995)によると,幼児の仲間関係における社会的コンピテンスの規定因に,愛着の形成やしつけの方略,両親との遊びの形態,仲間との対人経験などがあげられている.しかし,ASDにおける幼児期の社会的コンピテンスにどのような特徴があるのか,十分検討されていない.
<目的>
本研究では,ASDの傾向を示す幼児の母親の観察をもとに,幼児の日常的行動傾向を分類し,各々の類型ごとの社会性を検討することを目的とした.
【方法】
調査協力者および手続き:18名のASD支援団体に所属する養育者に団体を経由して郵送法にて調査を実施した.対象となる養育者の子どもの年齢は2~6歳であり,少なくとも医療機関で自閉症の可能性が指摘されていた.
調査票:主に分析に用いた調査票は以下であった.
(1)自閉症スクリーニング質問紙日本語版
保護者からみた幼児の行動様式を測定するため,大六ら(2004)の自閉症スクリーニング質問紙(ASQ)日本語版を用いた.
(2)幼児のための社会的コンピテンス尺度
柴田(1993)が日本の文化状況に合わせ作成した幼児のための教師評定用の社会的コンピテンス尺度を用いた.
調査期間:調査期間は2008年10月27日~11月10日であった.
【結果と考察】
(1)自閉傾向を示す幼児の行動類型
ASQの評定をもとにクラスター分析(ウォード法)を行い,調査対象児を2群に分類した.行動類型×行動項目をFisherの直接法で検討したところ,自傷行為・こだわり・コミュニケーション全般・言語的コミュニケーション・社会性に関わる項目群に有意な行動類型間の違いが認められた.それぞれ養育者から見て言語的コミュニケーション能力があり,自傷行為やこだわり行動が乏しい群を「高コミュニケーション」群,言語的コミュニケーション能力が乏しく,自傷行為やこだわり行動が認められる群を「低コミュニケーション」群とした.
(2)行動類型ごとの社会的コンピテンス
図1に,各々の行動類型ごとの社会的コンピテンスの違いを示した.
分析の結果,高コミュニケーション群の方が,協調性や仲間関係,主導性,対大人関係性の評定平均が高く,コミュニケーション行動の違いにより社会的コンピテンスに違いが生じていることが明らかになった.これらの結果は,行動類型の違いが社会的経験の量や質に影響する可能性を示唆している.
一方,大人との接触を好む傾向や仲間とけんかしない,仲間に指示的でない傾向には行動類型間に有意差がなく,コミュニケーション能力が高くなっても,同年代との子どもとの主導的な相互交流が発達しにくい傾向が示唆された.
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)の幼児の行動様式について,認知発達・身体発達・社会性の発達の途上にある幼児期では,他者理解の困難さや共同注意障害だけではなく,情緒的な対人経験の蓄積も関連しているとされ(狗巻,2010),多様な個性が認められると考えられる.実際,自閉症児の認知発達やコミュニケーション機能の発達により,孤立的態度・受身的態度・積極的態度というように,自閉症のタイプ論に即した発達が観察されたとの報告もある(田辺,2006).
仮にASD幼児の行動類型に違いがあるとすると,その違いはASD幼児の社会性の違いにも反映されるはずである.柴田(1995)によると,幼児の仲間関係における社会的コンピテンスの規定因に,愛着の形成やしつけの方略,両親との遊びの形態,仲間との対人経験などがあげられている.しかし,ASDにおける幼児期の社会的コンピテンスにどのような特徴があるのか,十分検討されていない.
<目的>
本研究では,ASDの傾向を示す幼児の母親の観察をもとに,幼児の日常的行動傾向を分類し,各々の類型ごとの社会性を検討することを目的とした.
【方法】
調査協力者および手続き:18名のASD支援団体に所属する養育者に団体を経由して郵送法にて調査を実施した.対象となる養育者の子どもの年齢は2~6歳であり,少なくとも医療機関で自閉症の可能性が指摘されていた.
調査票:主に分析に用いた調査票は以下であった.
(1)自閉症スクリーニング質問紙日本語版
保護者からみた幼児の行動様式を測定するため,大六ら(2004)の自閉症スクリーニング質問紙(ASQ)日本語版を用いた.
(2)幼児のための社会的コンピテンス尺度
柴田(1993)が日本の文化状況に合わせ作成した幼児のための教師評定用の社会的コンピテンス尺度を用いた.
調査期間:調査期間は2008年10月27日~11月10日であった.
【結果と考察】
(1)自閉傾向を示す幼児の行動類型
ASQの評定をもとにクラスター分析(ウォード法)を行い,調査対象児を2群に分類した.行動類型×行動項目をFisherの直接法で検討したところ,自傷行為・こだわり・コミュニケーション全般・言語的コミュニケーション・社会性に関わる項目群に有意な行動類型間の違いが認められた.それぞれ養育者から見て言語的コミュニケーション能力があり,自傷行為やこだわり行動が乏しい群を「高コミュニケーション」群,言語的コミュニケーション能力が乏しく,自傷行為やこだわり行動が認められる群を「低コミュニケーション」群とした.
(2)行動類型ごとの社会的コンピテンス
図1に,各々の行動類型ごとの社会的コンピテンスの違いを示した.
分析の結果,高コミュニケーション群の方が,協調性や仲間関係,主導性,対大人関係性の評定平均が高く,コミュニケーション行動の違いにより社会的コンピテンスに違いが生じていることが明らかになった.これらの結果は,行動類型の違いが社会的経験の量や質に影響する可能性を示唆している.
一方,大人との接触を好む傾向や仲間とけんかしない,仲間に指示的でない傾向には行動類型間に有意差がなく,コミュニケーション能力が高くなっても,同年代との子どもとの主導的な相互交流が発達しにくい傾向が示唆された.