[PE008] 過剰適応傾向と不登校傾向との関連
顕在・潜在意識に着目して
Keywords:過剰適応, 不登校, FUMIEテスト
【問題と目的】
「過剰適応」は「…内的な欲求を無理に抑圧してでも,外的な期待や要求に応える努力を行う(石津,2006)」とされる。高校までは何とかやってきた過剰適応傾向の子どもでも,大学入学後には一般的な大学生と同様に人間関係や活動範囲の拡大等を経験し,それに伴うストレスも増大すると考えられる。過剰適応者は「たとえ心の内に深い問題を抱えていても,そのような面を他者に見せようとしない上に,見せることが求められる場面を避ける傾向がある」(杉原,2001)ことを踏まえると,過剰適応者の意識を顕在的に測定するだけでは,過剰適応の様相を知ることはできないのではないかと考えられる。社会的望ましさの影響を受けない測定方法を指摘した浅井(2012)を踏まえ,本研究では,一度に多量のデータが収集可能な潜在的指標であるFUMIEテストを用いることとした。大学生を対象に,過剰適応傾向の特徴を,学校に対して抱く顕在的意識と潜在的意識の両側面から検討することを目的とし,仮説を3つ立てた。
1.過剰適応傾向が高い群は,潜在的には高い学校への不快感を示し,顕在的には低い不登校傾向を示すだろう。2.適応群は,潜在的にも顕在的にも低い学校への不快感と不登校傾向を示すだろう。3.不適応群は,潜在的にも顕在的にも高い学校への不快感と不登校傾向を示すだろう。
【方法】
4年制A大学B大学大学生373名(男性:116名,女性:257名,平均年齢:19.63歳)に,授業中に協力を依頼し,1.フェイスシート(調査日,学科,学年,年齢,性別),2.FUMIEテスト(1試行20秒)を11試行(練習試行含)-FUMIEテストは,先行研究を元に1列60単語で質問紙を作成した。刺激語を「学校」とし20語,肯定・否定の対になっている単語を20語ずつ計40語,選出した。手続きは先行研究を参考に,カテゴリ化課題と説明し,練習試行と肯定課題Aでは刺激語と肯定語に○,否定語に×を,否定課題Bでは肯定語に○,刺激語と否定語に×を記入するよう教示し,時間をストップウォッチで計測しながら課題を順番に行うよう測定者が指示を出しながら試行した。3.大学生版不登校傾向尺度(1~5の5件法):先行研究から抜粋した項目と,独自に作成した項目を大学院生2名,教員1名で検討し,20項目とした。4.過剰適応尺度(石津,2006)33項目(1~5の5件法)の質問紙調査を行った。
【結果と考察】
性別と過剰適応5下位尺度から分類した4クラスタを独立変数,z得点化した顕在指標の不登校傾向と,潜在指標の学校不快感である,尺度の幅を合わせたIAS(潜在連合スコア:Implicit Association Score),テストの遂行数が各々異なるため算出したIAQ(潜在連想比率:Implicit Association Quotient)をそれぞれ従属変数として,2要因の分散分析を行った。過剰適応群は,顕在的には高い値を示し,潜在的には低い値を示したため,仮説1は支持されなかった。適応群は,顕在的には過剰適応群よりも低い値を示しているが,潜在的には有意な主効果が見られていないため,仮説2は部分的に支持されたといえる。不適応群は,顕在的には不登校傾向は低い値を示し,潜在的にも有意な主効果が見られていないため,仮説3は支持されなかった。
過剰適応群は,意識しないところではまだ学校を嫌いになっていない可能性を示した。学校に行きたくないと感じているが,潜在的レベルでは学校を嫌いになっているわけではないため,適切なサポートや肯定的な体験をすることで,意識レベルにおける不登校傾向が下がる可能性があると考えられる。
今後は顕在・潜在意識の食い違いを臨床的意義としてはどのように捉え扱っていくのかが課題である。また顕在・潜在意識両方で学校に対して肯定的ではない適応あきらめ群が把握され,この場合にはどのようなサポートが有用かを考えていく必要があると言える。
「過剰適応」は「…内的な欲求を無理に抑圧してでも,外的な期待や要求に応える努力を行う(石津,2006)」とされる。高校までは何とかやってきた過剰適応傾向の子どもでも,大学入学後には一般的な大学生と同様に人間関係や活動範囲の拡大等を経験し,それに伴うストレスも増大すると考えられる。過剰適応者は「たとえ心の内に深い問題を抱えていても,そのような面を他者に見せようとしない上に,見せることが求められる場面を避ける傾向がある」(杉原,2001)ことを踏まえると,過剰適応者の意識を顕在的に測定するだけでは,過剰適応の様相を知ることはできないのではないかと考えられる。社会的望ましさの影響を受けない測定方法を指摘した浅井(2012)を踏まえ,本研究では,一度に多量のデータが収集可能な潜在的指標であるFUMIEテストを用いることとした。大学生を対象に,過剰適応傾向の特徴を,学校に対して抱く顕在的意識と潜在的意識の両側面から検討することを目的とし,仮説を3つ立てた。
1.過剰適応傾向が高い群は,潜在的には高い学校への不快感を示し,顕在的には低い不登校傾向を示すだろう。2.適応群は,潜在的にも顕在的にも低い学校への不快感と不登校傾向を示すだろう。3.不適応群は,潜在的にも顕在的にも高い学校への不快感と不登校傾向を示すだろう。
【方法】
4年制A大学B大学大学生373名(男性:116名,女性:257名,平均年齢:19.63歳)に,授業中に協力を依頼し,1.フェイスシート(調査日,学科,学年,年齢,性別),2.FUMIEテスト(1試行20秒)を11試行(練習試行含)-FUMIEテストは,先行研究を元に1列60単語で質問紙を作成した。刺激語を「学校」とし20語,肯定・否定の対になっている単語を20語ずつ計40語,選出した。手続きは先行研究を参考に,カテゴリ化課題と説明し,練習試行と肯定課題Aでは刺激語と肯定語に○,否定語に×を,否定課題Bでは肯定語に○,刺激語と否定語に×を記入するよう教示し,時間をストップウォッチで計測しながら課題を順番に行うよう測定者が指示を出しながら試行した。3.大学生版不登校傾向尺度(1~5の5件法):先行研究から抜粋した項目と,独自に作成した項目を大学院生2名,教員1名で検討し,20項目とした。4.過剰適応尺度(石津,2006)33項目(1~5の5件法)の質問紙調査を行った。
【結果と考察】
性別と過剰適応5下位尺度から分類した4クラスタを独立変数,z得点化した顕在指標の不登校傾向と,潜在指標の学校不快感である,尺度の幅を合わせたIAS(潜在連合スコア:Implicit Association Score),テストの遂行数が各々異なるため算出したIAQ(潜在連想比率:Implicit Association Quotient)をそれぞれ従属変数として,2要因の分散分析を行った。過剰適応群は,顕在的には高い値を示し,潜在的には低い値を示したため,仮説1は支持されなかった。適応群は,顕在的には過剰適応群よりも低い値を示しているが,潜在的には有意な主効果が見られていないため,仮説2は部分的に支持されたといえる。不適応群は,顕在的には不登校傾向は低い値を示し,潜在的にも有意な主効果が見られていないため,仮説3は支持されなかった。
過剰適応群は,意識しないところではまだ学校を嫌いになっていない可能性を示した。学校に行きたくないと感じているが,潜在的レベルでは学校を嫌いになっているわけではないため,適切なサポートや肯定的な体験をすることで,意識レベルにおける不登校傾向が下がる可能性があると考えられる。
今後は顕在・潜在意識の食い違いを臨床的意義としてはどのように捉え扱っていくのかが課題である。また顕在・潜在意識両方で学校に対して肯定的ではない適応あきらめ群が把握され,この場合にはどのようなサポートが有用かを考えていく必要があると言える。