[PE011] 学校統廃合による心理的影響からの回復過程に関する研究
レジリエンスと学校享受感・ストレス反応との関連から
Keywords:学校統廃合, レジリエンス, 精神的健康
問題と目的
学校統廃合により学校享受感の低下やストレス反応の上昇のような心理的変化が生じることが明らかになっている。(金子2009)。
近年,注目を集めている概念であるレジリエンスではあるが,学校統廃合による心理的な影響に対する効果は,未だ報告されていなかった。そこで本研究では,学校統廃合後の精神的な健康の回復過程をレジリエンスの機能との関連から検討することを目的とした。
方法
調査対象 青森県内の中学生及び小学校5・6年生402名(男子183名,女子219名)。 (有効回答率94%)。調査対象者が居住する地域では,平成23年度に学区再編による学校の統廃合が行われた。その時点で受け入れ側の大規模校に属した児童生徒を統合先群,受け入れられる側で廃校になった学校に属した児童生徒を被統合群とした。
質問項目 レジリエンス尺度23項目,学校享受感情尺度13項目:「とてもそう思う」~「まったくそう思わない」の5件法。ストレス反応尺度(SRS-C) 20項目:「よくあてはまる」~「全然あてはまらない」の5件法。
結果と考察
レジリエンス尺度と学校享受感尺度,ストレス反応の各得点について統合の態様(2)×学年(6)を要因とする分散分析を行った。交互作用では有意差は見受けられなかった。
学校統廃合とストレス反応 被統合群のストレス反応の「総得点」および「不機嫌・怒り」の得点が統合先群に比べて有意に高かった。統廃合後約2年半が経過した時点ではあるが,依然に群間において有意差が確認できる結果となった。
学校統廃合と学校享受感 今回の調査で学校享受感の有意な差は見出されなかった。約2年半が経過し,被統合群の児童生徒が新しい学校に慣れ愛着を持ち始めていることを示していると考えられる。学区再編に際して行われた各校の様々な交流活動の成果の可能性も考えられる。
レジリエンスの機能の検討 レジリエンス尺度総得点およびレジリエンス下位尺度得点については,平均値+SDよりも得点が高い者を高群,平均値-SDよりも得点が低い者を低群とした。そして学校享受感尺度とストレス反応の得点をそれぞれ従属変数とした2(レジリエンスおよび各下位尺度についての高群・低群)×2(統合の態様における統合先群・被統合群)の分散分析を行った。
学校享受感を従属変数とした際,レジリエンス尺度の下位因子である「積極的活動性」と統合の態様において,交互作用の有意傾向(F(1,118)=3.27,p<.10)を見出すことができた。積極性高低群・統合の態様の条件別にみた学校生活享受感の得点を図示したものがFig.1である。積極性が高い児童生徒であれば,被統合校に属していても統合先校よりも学校を楽しむことができるということが明らかになった。
総合考察 レジリエンスの下位因子である「積極性」が高ければ,小規模校の児童生徒であっても統廃合というストレスフルな経験後も統合先校よりも学校享受感が高い傾向があることが本調査において見受けられ,レジリエンスが学校享受感に影響を与えている可能性が示唆された。金子(2009)で報告されているように,学校享受感は一時的に低下したと考えられる。統廃合から2年が経ち,ストレス反応には依然群間差が見られる一方で,学校享受感に差は認められなかった。一度は低下した精神的健康が回復する様相は,レジリエンスの概念が説明する現象そのものである。統廃合による心理的影響からの回復過程には,レジリエンスが影響している可能性あることが本研究から読み取ることができる。
学校統廃合により学校享受感の低下やストレス反応の上昇のような心理的変化が生じることが明らかになっている。(金子2009)。
近年,注目を集めている概念であるレジリエンスではあるが,学校統廃合による心理的な影響に対する効果は,未だ報告されていなかった。そこで本研究では,学校統廃合後の精神的な健康の回復過程をレジリエンスの機能との関連から検討することを目的とした。
方法
調査対象 青森県内の中学生及び小学校5・6年生402名(男子183名,女子219名)。 (有効回答率94%)。調査対象者が居住する地域では,平成23年度に学区再編による学校の統廃合が行われた。その時点で受け入れ側の大規模校に属した児童生徒を統合先群,受け入れられる側で廃校になった学校に属した児童生徒を被統合群とした。
質問項目 レジリエンス尺度23項目,学校享受感情尺度13項目:「とてもそう思う」~「まったくそう思わない」の5件法。ストレス反応尺度(SRS-C) 20項目:「よくあてはまる」~「全然あてはまらない」の5件法。
結果と考察
レジリエンス尺度と学校享受感尺度,ストレス反応の各得点について統合の態様(2)×学年(6)を要因とする分散分析を行った。交互作用では有意差は見受けられなかった。
学校統廃合とストレス反応 被統合群のストレス反応の「総得点」および「不機嫌・怒り」の得点が統合先群に比べて有意に高かった。統廃合後約2年半が経過した時点ではあるが,依然に群間において有意差が確認できる結果となった。
学校統廃合と学校享受感 今回の調査で学校享受感の有意な差は見出されなかった。約2年半が経過し,被統合群の児童生徒が新しい学校に慣れ愛着を持ち始めていることを示していると考えられる。学区再編に際して行われた各校の様々な交流活動の成果の可能性も考えられる。
レジリエンスの機能の検討 レジリエンス尺度総得点およびレジリエンス下位尺度得点については,平均値+SDよりも得点が高い者を高群,平均値-SDよりも得点が低い者を低群とした。そして学校享受感尺度とストレス反応の得点をそれぞれ従属変数とした2(レジリエンスおよび各下位尺度についての高群・低群)×2(統合の態様における統合先群・被統合群)の分散分析を行った。
学校享受感を従属変数とした際,レジリエンス尺度の下位因子である「積極的活動性」と統合の態様において,交互作用の有意傾向(F(1,118)=3.27,p<.10)を見出すことができた。積極性高低群・統合の態様の条件別にみた学校生活享受感の得点を図示したものがFig.1である。積極性が高い児童生徒であれば,被統合校に属していても統合先校よりも学校を楽しむことができるということが明らかになった。
総合考察 レジリエンスの下位因子である「積極性」が高ければ,小規模校の児童生徒であっても統廃合というストレスフルな経験後も統合先校よりも学校享受感が高い傾向があることが本調査において見受けられ,レジリエンスが学校享受感に影響を与えている可能性が示唆された。金子(2009)で報告されているように,学校享受感は一時的に低下したと考えられる。統廃合から2年が経ち,ストレス反応には依然群間差が見られる一方で,学校享受感に差は認められなかった。一度は低下した精神的健康が回復する様相は,レジリエンスの概念が説明する現象そのものである。統廃合による心理的影響からの回復過程には,レジリエンスが影響している可能性あることが本研究から読み取ることができる。