The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PE017] 教室内での関係性を考慮に入れたいじめ問題の検討

いじめ問題と傍観者およびスクールカーストとの関連

岸俊行 (福井大学)

Keywords:いじめ, 傍観者, スクールカースト

<問題・目的>
近年,学校現場における「いじめ問題」が大きな社会問題化している。いじめ問題に関して,従来,当事者間の関係性や加害者の心理状況,環境などについて検討し,被害生徒をどのように支援していくのかという観点での研究など,これまでの学校現場では,いじめに関しての対症療法的なアプローチが多くみられている。しかし,いじめを構造的に理解するという点では森田(1986)が指摘しているように,被害者と加害者のみならず,被害者と加害者を取り巻く周囲の要因も重要になる。いじめ問題をいじめの加害者と被害者の問題のみでとらえるのではなく,その周囲にいる人々(傍観者)も含めた子どもたちの関係性の問題という視点で考える必要がある。
これまで,学校場面の問題を,児童生徒の関係性の視点から明らかにした研究はいくつかなされている。大久保・加藤(2006)は問題行動を起こす児童生徒がクラスから受容的,支持的であるほど学級が荒れている傾向にあると指摘している。また,森口(2007)は教室内の子ども同士の関係性をより緊密に表現したものとして「スクールカースト」という言葉を用い,クラス内での子どもたちの関係性を規定するステイタスとした。鈴木(2010)はこの「スクールカースト」が,閉ざされた教室内での人間関係を規定する要因となっており,クラス内での人間関係が,「スクールカースト」に大きく影響されることを示唆している。本研究では,いじめ問題を,当事者を含む周囲の関係性の問題として捉える視点で,いじめ問題を考えていく事を主眼としている。そこで,本研究では下記の2点を明らかにすることを目的とした。一つにいじめの当事者ではない傍観者に着目し,その特徴を検討した。二つに教室内での人間関係としてスクールカーストに着目し,スクールカーストとの認知およびいじめとの関連の検討を行った。
<方法>
対象:関東,甲信越の大学に通う大学生393名(男性225名,女性168名),平均年齢は19.8歳(SD:1.738)
実施時期:2013年6月~9月の期間
質問紙の構成
・いじめ経験の有無:いじめをした,された,見た,の3つの経験に関して2件法
・いじめを目撃した際の対処行動に関する質問:6場面,2条件(いじめ対象が【友人】【他人】)での場面想定法を採用した。回答は4つの選択肢を用いた。
・傍観者認識尺度:渡部(2000)の傍観者意識尺度を参考に23項目を用いた。回答は4件法を用いた。
・集団主義尺度:ヤマグチら(1995)の集団主義尺度14項目(1因子)を用いた。
・スクールカーストの認知及び意識:スクールカーストについての実態および認識についての回答を求めた。実態に関しては,中学3年,高校3年時の自分の意識を「1軍,2軍,3軍,意識したことがない」の4件法で回答を求めた。また,認識については,11の質問項目を用意し,5件法で回答を求めた。
<結果>
1.「いじめ」の概要と傍観者との関連
いじめ経験の概要に関しては,いじめをした,された経験のある人数はどちらも全体の約30%であるのに対して,いじめを見た経験のある人数は約67%であった。このことより,学校生活の中で多くの学生が何かしらのいじめに関わっていたことが示唆できる。次にいじめの対象が友人か否かによって,介入行動に差が生じるかの検討を対応のあるt検定で行った(表1)結果,6つの場面全てにおいて,いじめの対象が友人の場合の方が行動を起こしやすいという結果となった。
2.スクールカーストの認知といじめとの関連
スクールカーストに関して,中3,高3時点で意識したことのある学生は,どちらの時期も約50%であった。また,意識したことのある学生の中では,中学高校ともに2軍>1軍>3軍の順で人数が多かった。いじめ経験とスクールカーストとの関連を検討するため,いじめ経験(4)×スクールカースト(4)でχ2検定を行った。その結果,中学高校とも5%水準で有意な関連が認められた(中学:χ2(9)=23.336,p<.05 高校:χ2(9)=21.182,p<.05)。残差を検討した結果,中学よりも高校の方がより,スクールカーストといじめとの関連が明確化していることを指摘できる。以上の結果より,スクールカーストといじめの経験とは関連があることが推察される。