[PE026] 児童の積極的授業参加に関する研究(21)
ソーシャル・サポートとの関連
キーワード:積極的授業参加行動, ソーシャル・サポート, 児童
問題・目的
児童の積極的授業参加行動を検討してきたこれまでの研究から,積極的授業参加行動とは「注視・傾聴」,「挙手・発言」,「準備・宿題」の 3 つにまとめられること,授業に対する動機づけと最も関連が強いのは「注視・傾聴」であることが明らかとなった(布施ら, 2006)。さらに,積極的授業参加行動は,学習に対する達成目標およびコンピテンスとも関連することが示された(安藤ら, 2009)。
しかし, 積極的授業参加行動の生起に関わる要因としては,動機づけ的要因以外にも様々なものが考えられる。例えば,安藤ら(2013)で実施された教師に対する面接調査では,積極的授業参加行動に影響する要因の一つに学級の雰囲気や他の児童との関係が挙げられている。そこで本研究では,クラスメイトから受けているソーシャル・サポートの認知と積極的授業参加行動との関連について検討することを目的とする。
方法
調査対象者 関東地方の公立小学校3~6年生312名(男児156名,女児156名,平均年齢10.36歳)。
調査内容:(1) 積極的授業参加行動(23 項目, 4 件法) 安藤ら(2009)で用いた授業に対する積極的授業参加行動を尋ねる質問項目から項目を整理し,23 項目とした。「注視・傾聴」「挙手・発言」「準備・宿題」の 3 下位尺度から構成された。
(2) 認知されたソーシャル・サポート尺度(16項目,4件法) 嶋田ら(1993)で作成されたソーシャル・サポート尺度を用いて,級友たちから,どの程度援助を受けていると感じているかを測定した。
調査では,他に自己意識尺度・動機づけ尺度も併せて実施したが,本研究では分析の対象としない。
手続き:クラス毎に担任教師が調査用紙を配布し,一斉に回答を求めた。
調査時期:2014年1月~2014年2月。
結果・考察
積極的授業参加行動尺度は先行研究に従い,下位尺度の項目得点平均を下位尺度とした。α係数は,「注視・傾聴」が .85,「挙手・発言」が .78,「準備・宿題」が, .69であった。ソーシャル・サポート尺度についても同様に,全16項目の項目得点平均を尺度得点とした。α係数は, .95であった。
そして,ソーシャル・サポートと積極的授業参加行動との相関係数を学年・性別に算出した(Table 1)。
その結果,男児では5年生を除いて有意な正の相関が多く見られ,ソーシャル・サポートを受けていると感じている児童ほど積極的授業参加行動を行う傾向にあった。一方で,女児は5,6年生の「挙手・発言」との間に有意な正の相関が見られたが,その他の相関は有意ではなかった。
以上の結果より,男児において,全体的な積極的授業参加行動とクラスメイトからのサポートの認知に関連が示されたが,女児では高学年の「挙手・発言」との間にのみ有意な相関がみられた。「挙手・発言」は特に他者の視線を意識する行動であり,クラスメイトからのサポートを認知できると,「挙手・発言」に対する抵抗感が減少し,行動へのつながるのではないだろうか。しかし,女児では,その他の相関は有意ではなく,サポート認知の影響に関する性差については,今後の検討が必要である。※本研究はJSPS 科研費【課題番号24530838】の助成を受けた。
児童の積極的授業参加行動を検討してきたこれまでの研究から,積極的授業参加行動とは「注視・傾聴」,「挙手・発言」,「準備・宿題」の 3 つにまとめられること,授業に対する動機づけと最も関連が強いのは「注視・傾聴」であることが明らかとなった(布施ら, 2006)。さらに,積極的授業参加行動は,学習に対する達成目標およびコンピテンスとも関連することが示された(安藤ら, 2009)。
しかし, 積極的授業参加行動の生起に関わる要因としては,動機づけ的要因以外にも様々なものが考えられる。例えば,安藤ら(2013)で実施された教師に対する面接調査では,積極的授業参加行動に影響する要因の一つに学級の雰囲気や他の児童との関係が挙げられている。そこで本研究では,クラスメイトから受けているソーシャル・サポートの認知と積極的授業参加行動との関連について検討することを目的とする。
方法
調査対象者 関東地方の公立小学校3~6年生312名(男児156名,女児156名,平均年齢10.36歳)。
調査内容:(1) 積極的授業参加行動(23 項目, 4 件法) 安藤ら(2009)で用いた授業に対する積極的授業参加行動を尋ねる質問項目から項目を整理し,23 項目とした。「注視・傾聴」「挙手・発言」「準備・宿題」の 3 下位尺度から構成された。
(2) 認知されたソーシャル・サポート尺度(16項目,4件法) 嶋田ら(1993)で作成されたソーシャル・サポート尺度を用いて,級友たちから,どの程度援助を受けていると感じているかを測定した。
調査では,他に自己意識尺度・動機づけ尺度も併せて実施したが,本研究では分析の対象としない。
手続き:クラス毎に担任教師が調査用紙を配布し,一斉に回答を求めた。
調査時期:2014年1月~2014年2月。
結果・考察
積極的授業参加行動尺度は先行研究に従い,下位尺度の項目得点平均を下位尺度とした。α係数は,「注視・傾聴」が .85,「挙手・発言」が .78,「準備・宿題」が, .69であった。ソーシャル・サポート尺度についても同様に,全16項目の項目得点平均を尺度得点とした。α係数は, .95であった。
そして,ソーシャル・サポートと積極的授業参加行動との相関係数を学年・性別に算出した(Table 1)。
その結果,男児では5年生を除いて有意な正の相関が多く見られ,ソーシャル・サポートを受けていると感じている児童ほど積極的授業参加行動を行う傾向にあった。一方で,女児は5,6年生の「挙手・発言」との間に有意な正の相関が見られたが,その他の相関は有意ではなかった。
以上の結果より,男児において,全体的な積極的授業参加行動とクラスメイトからのサポートの認知に関連が示されたが,女児では高学年の「挙手・発言」との間にのみ有意な相関がみられた。「挙手・発言」は特に他者の視線を意識する行動であり,クラスメイトからのサポートを認知できると,「挙手・発言」に対する抵抗感が減少し,行動へのつながるのではないだろうか。しかし,女児では,その他の相関は有意ではなく,サポート認知の影響に関する性差については,今後の検討が必要である。※本研究はJSPS 科研費【課題番号24530838】の助成を受けた。