日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PE027] 中学生の規範意識向上をめざした映像教材の効果の検証

映像教材作成に生徒会活動を関連させた取組を通して

奥村龍也1, 高松勝也2 (1.遠賀町立遠賀南中学校, 2.福岡教育大学)

キーワード:規範意識, 映像教材, 生徒会

研究の目的
本研究では,規範意識の中でも学校で示されている校則やモラル,マナーを規範意識として定義づけ,その醸成の方策として,山口(2004)が提唱する映像教材を活用する。なお,映像教材とは,生徒出演の動画を編集ソフトを利用してコンピュータ上で自作したものである。奥村(2012)では,映像教材を見せるだけでは効果が見られないこと,映像教材作成に関わった生徒において意識の上昇傾向が見られたことが示された。よって本研究では映像教材作成の取組にできるだけ生徒の関与性を持たせるために,生徒会活動と関連させた取組を行い,その効果の検証をすることを目的とする。
方法
出演生徒を募集し,映像教材を制作,文化祭で提示し,その前後の生徒の道徳的規範尺度の変容を調査した。具体的には以下の取組を行った。
○映像教材のテーマを学校の課題とマッチングさせ,生徒の関与性を高めさせるために,生徒会によるアンケートを実施した。学校をよりよくするために取組まなければならない課題を生徒会長が全校生徒に問題提起をするという形で生徒会アンケートを行った。アンケートでは,「あいさつ」,「服装」,「掃除」が課題として出され,これらを映像教材のテーマとして決定するとともに,生徒会活動の取組課題としても設定した。
○映像教材の台本の制作を生徒たちの話し合いの中で作成した。
○映像教材提示後,生徒会が中心になって朝のあいさつ運動,清掃ボランティア活動等のテーマに関わる取組を行った。その生徒会の取組と連動させる形で文化祭で作成した映像教材を繰り返し上映した。
①調査対象と調査時期
福岡県内のA中学校生徒X年次の1,2学年213名とX+1年次の2,3学年202名。調査時期はX年とX+1年のそれぞれ取組前と映像教材提示後の2回行い,回答に不備があるものは除外した。
②調査内容
玉田・松田・遠藤(2004)が作成した道徳的規範尺度「思慮」,「節度」,「思いやり・礼儀」,「正義・規範」を測定する4因子34項目に,A中学校の職員とともに作成したいじめに関する3項目を追加した計37項目について,4件法の質問紙による調査を行った。
結果と考察
生徒(1年次の1,2学年・2年次の2,3学年)×時期(取組前・提示後)の2要因分散分析を行った。玉田の道徳的規範尺度の4因子では,「正義・規範」と「節度」の2因子において生徒×時期の交互作用での有意な上昇がみられた。また,「思慮」においても有意な傾向を示した。(表1)
1年次では,取組後に平均値が下がる項目もあったが,2年次では全ての項目が上昇していることから,2年次の生徒会と連携し,生徒の関与性を高めた取組が有効であったと考えられる。
また,いじめの項目だけが文化祭提示後から有意に下がっている(表2)要因として,このテーマが生徒アンケートより決定されたものではなく,当時の世態による要請で急遽決定したものであったため,結果として映像教材提示後に生徒会による取組が行われなかったためであると考えられる。他のテーマにおいては「いじめ」ほど有意な下降等が見られないため,このことからも本取組の有効性が示されたと考えられる。