[PE087] 教師の要因によってソーシャルスキル・トレーニングの効果に違いが出るのか?(2)
SST後の教師の関わりが生徒のソーシャルスキルの変容に与える影響
Keywords:ソーシャルスキル教育, 教師
はじめに
集団でのソーシャルスキル・トレーニング(SST)は、主に担任教師が授業を進めることが多い。そのため、プログラムの内容だけでなく、SSTを行う担任教師の要因がSSTの効果に反映される可能性がある。SSTでは、学んだスキルを日常生活で活用できるような維持般化に関する手続きが非常に重要である。そこで、本研究では、教師による維持般化を促す関わりが、SSTの効果にどの程度影響するかを検証した。
方法
(1)対象者
①生徒:S県内の公立中学校1年生6学級(男子92名、女子95名)、2年生5学級(男子82名、女子82名)、3年生5学級(男子83名、女子81名)であった。
②教師:S県内の公立中学校で1年から3年生の担任教師をしている16名を対象とした(男性11名、女性5名)。
(2)プログラムの内容:渡辺・小林(2009)の指導案に基づき、第1回では「自己紹介」、第2回「話し方」、第3回「話の聴き方」、第4回「感情のコントロールⅠ」、第5回は「感情のコントロールⅡ」の内容で構成し、授業時間は50分であった。また、授業は担任教師のみ、もしくは担任教師とTA(学生アシスタント)で行った。またこのプログラムでは「チャレンジ・シート」を用いて、日常生活でもスキルを活用するよう促した。
(3)評価方法
①生徒:(A)中学生用ソーシャルスキル尺度:菊池(1988)のkiss-18を基に尺度を作成し、因子分析を行ったところ、5因子が抽出された。 (B)中学生用レジリエンス尺度:石毛・無藤(2005)(C)中学生用スクール・モラール尺度:河村(1999)
②教師:(A)チャレンジシートの活用に関する4項目、さらに(B)SSTで学んだことを日常生活の指導の中で活かす関わりをしているかどうかについて尋ねた3項目について、「とてもあてはまるか」ら「全くあてはまらない」の5段階評定で回答を求めた。
結果および考察
(1)教師の維持般化に関する得点ごとの群分け
担任教師12名(4名欠損)のチャレンジシートの活用に関する4項目、さらにSSTで学んだことを日常生活の指導の中で活かす関わりをしているかどうかについて尋ねた3項目の得点を用いて、Ward法によるクラスタ分析を行ったところ、3つのクラスタを得た。第一クラスタには4名、第二クラスタには2名、第三クラスタには6名が含まれていた。
次に、得られた3つのクラスタを独立変数、チャレンジシートの活用に関する4項目と日常の関わりに関する3項目の計7項目を従属変数として分散分析を行った。その結果、7項目中5項目において、有意な群間差が見られた。TukeyのHSD法による多重比較を行ったところ、第一クラスタはチャレンジシートの活用および日常の関わり共に低かったことから「介入消極的群」、第二クラスタはチャレンジシートを活用しているが日常の関わりは低いことから「シート活用群」、第三クラスタはチャレンジシートおよび関わり共に高かったことから「介入積極的群」とした。
(2)維持般化群と生徒の下位尺度得点との関連
教師の維持般化の関わり方のスタイルによって、生徒の各尺度得点が異なるかどうかを検討するため、教師の維持般化に関するスタイル3群(「介入消極的群」「シート活用群」「介入積極的群」)を独立変数とし、生徒の各下位尺度得点を事後テストから事前テストを引いた差を従属変数とし、一要因の分散分析を行った。分散分析の結果、社会的スキル尺度においては、「関係維持スキル」において有意な差が認められた(F(2,183)=3.14,p<.05)。TukeyのHSD法による多重比較を行ったところ、介入積極的群と介入消極的群との間に有意な得点差が見られ、介入積極群のクラスの方が事後テストでより上昇したことがわかった。しかし、生徒のスクールモラールおよびレジリエンス尺度の下位尺度では有意な差は認められなかった。すなわち、チャレンジシートおよび日常的なかかわりが積極的であることがSSTの効果に大きく影響していることが示された。
集団でのソーシャルスキル・トレーニング(SST)は、主に担任教師が授業を進めることが多い。そのため、プログラムの内容だけでなく、SSTを行う担任教師の要因がSSTの効果に反映される可能性がある。SSTでは、学んだスキルを日常生活で活用できるような維持般化に関する手続きが非常に重要である。そこで、本研究では、教師による維持般化を促す関わりが、SSTの効果にどの程度影響するかを検証した。
方法
(1)対象者
①生徒:S県内の公立中学校1年生6学級(男子92名、女子95名)、2年生5学級(男子82名、女子82名)、3年生5学級(男子83名、女子81名)であった。
②教師:S県内の公立中学校で1年から3年生の担任教師をしている16名を対象とした(男性11名、女性5名)。
(2)プログラムの内容:渡辺・小林(2009)の指導案に基づき、第1回では「自己紹介」、第2回「話し方」、第3回「話の聴き方」、第4回「感情のコントロールⅠ」、第5回は「感情のコントロールⅡ」の内容で構成し、授業時間は50分であった。また、授業は担任教師のみ、もしくは担任教師とTA(学生アシスタント)で行った。またこのプログラムでは「チャレンジ・シート」を用いて、日常生活でもスキルを活用するよう促した。
(3)評価方法
①生徒:(A)中学生用ソーシャルスキル尺度:菊池(1988)のkiss-18を基に尺度を作成し、因子分析を行ったところ、5因子が抽出された。 (B)中学生用レジリエンス尺度:石毛・無藤(2005)(C)中学生用スクール・モラール尺度:河村(1999)
②教師:(A)チャレンジシートの活用に関する4項目、さらに(B)SSTで学んだことを日常生活の指導の中で活かす関わりをしているかどうかについて尋ねた3項目について、「とてもあてはまるか」ら「全くあてはまらない」の5段階評定で回答を求めた。
結果および考察
(1)教師の維持般化に関する得点ごとの群分け
担任教師12名(4名欠損)のチャレンジシートの活用に関する4項目、さらにSSTで学んだことを日常生活の指導の中で活かす関わりをしているかどうかについて尋ねた3項目の得点を用いて、Ward法によるクラスタ分析を行ったところ、3つのクラスタを得た。第一クラスタには4名、第二クラスタには2名、第三クラスタには6名が含まれていた。
次に、得られた3つのクラスタを独立変数、チャレンジシートの活用に関する4項目と日常の関わりに関する3項目の計7項目を従属変数として分散分析を行った。その結果、7項目中5項目において、有意な群間差が見られた。TukeyのHSD法による多重比較を行ったところ、第一クラスタはチャレンジシートの活用および日常の関わり共に低かったことから「介入消極的群」、第二クラスタはチャレンジシートを活用しているが日常の関わりは低いことから「シート活用群」、第三クラスタはチャレンジシートおよび関わり共に高かったことから「介入積極的群」とした。
(2)維持般化群と生徒の下位尺度得点との関連
教師の維持般化の関わり方のスタイルによって、生徒の各尺度得点が異なるかどうかを検討するため、教師の維持般化に関するスタイル3群(「介入消極的群」「シート活用群」「介入積極的群」)を独立変数とし、生徒の各下位尺度得点を事後テストから事前テストを引いた差を従属変数とし、一要因の分散分析を行った。分散分析の結果、社会的スキル尺度においては、「関係維持スキル」において有意な差が認められた(F(2,183)=3.14,p<.05)。TukeyのHSD法による多重比較を行ったところ、介入積極的群と介入消極的群との間に有意な得点差が見られ、介入積極群のクラスの方が事後テストでより上昇したことがわかった。しかし、生徒のスクールモラールおよびレジリエンス尺度の下位尺度では有意な差は認められなかった。すなわち、チャレンジシートおよび日常的なかかわりが積極的であることがSSTの効果に大きく影響していることが示された。