日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF022] 質問方略の使用を促す授業実践の効果

自発的に問いを立て学ぶ学習者の育成

小山義徳 (千葉大学)

キーワード:学習方略, 質問, 批判的思考

1. 要約
自発的に学ぶ学習者を育成するためには,学習者の問いを立てるスキルを伸ばす指導が必要である.問いを立てることができれば,探求学習が行われ,その過程で新たな問いが産まれる.そして,再び探求が行われるという学習サイクルが機能する.
本研究では,研究1において質問生成に影響を与える要因が,「質問生成のコスト感」,「質問の言語化の容易さ」と「質問方法が未知であること」を明らかにした.
研究2では,「質問マトリックス」を用いて,「質問生成のコスト感」を下げ,「質問の言語化の容易さ」を促進することで,長期的な質問生成が促されるか検討を行った.

研究1

2.方法
2.1 参加者 96名の大学生
2.2 課題 質問生成の対象として,2つの文章を用いた.参加者はいずれかの文章を1つ読み,思いついた問いを書き出すように指示された.
2.3 要因 質問生成に影響を与える要因として,質問観尺度,メタ認知,テキストの理解度を含めた.理解度確認は課題文に関連する設問を4つ設けて採点し行った.
2.4 質問の分類 道田(2011)に基づき,質問を「事実を問う質問」(例:~とは何か)と,「思考を刺激する質問」(例:AとBの違いは何か)の2つに分類し,分析を行った.
2.5.結果 総質問数と弱い相関があったのは,質問観尺度の「質問生成のコスト感」と「質問方法の未知」の2つであった.また,「質問の言語化の容易さ」は「事実を問う質問」と,「質問生成のコスト感」は「思考を刺激する質問」と弱い相関があった.

研究2
3. 方法
3.1 参加者
大学で開講された講義を受講した92名の学生.
3.2 期間
1カ月ごとにベース期,訓練期,自発期に分け,3か月の間,質問の数と質を比較した.

図1.研究2における3つの期間

3.3 訓練ワークシート
講義に用いる出席表に,「質問マトリックス」を印刷し,訓練期における質問生成を促した.

図2.質問マトリックス

4 結果

図3.フェーズごとの質問数

5.考察
訓練期に増加した質問数が,自発期には維持されなかった.この原因として,学習者が質問の効力感をあまり感じていなかった可能性が考えられる.「質問が自分の理解を深める」と実感できる課題を設けることで,自発的に問いを生成する割合が増えるのではないだろうか.