The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PG053] 大学生の読書実態と読書教育の可能性

「特技としての読書」という観点から

平山祐一郎 (東京家政大学)

Keywords:読書離れ, 読書指導, 大学教育

【目的】
大学生の不読者が増加している。いずれ,本を読む大学生は少数派になる。しかし,少数派であることを逆手にとり,そこを出発点として,大学の読書教育を構想してはどうだろうか。少数しかしていないことは,「少数しかできないこと」=「特技」とみなすのである。すると,普通のこととして読書をしてきた大学生は,それが特技であると認識でき,矜持が持てる。読書の量や質の向上につながる。一方,読書しない大学生には,読書が憧憬となり,読書動機が高まる。その結果,大学生の読書人口は上昇するかもしれない。とはいえまずは,今,読書をしている大学生に,その行為が「特技」たりうるように,教育的働きかけをすべきだろう。その第一歩として,「特技としての読書」という観点から読書調査結果を分析する。
【方法】
期間:2012年6月。質問紙:表1の指標を問うもの。調査対象:全国11大学の大学生2169名。
【結果と考察】
1)欠損値などから1822名が分析対象となった。2)5月の読書冊数が0冊だった大学生は731人で40.1%,一日の読書時間が0分だったのは983名で54.0%,一週間の読書日数が0日だったのは1000名で54.9%であった。大部分が不読者であった。3)「自分にとって読書は特技のひとつと言える」の6段階評定値を読書特技度とした。「6:非常にあてはまる」は73名(4.0%)であり,「1:全くあてはまらない」は718名(39.4%)であった。前者は「5:わりと」「4:やや」を加えると362名で19.9%,後者は「3:あまり」「2:ほとんど」を加えると1460名で80.1%であった。4)表1に各指標と読書特技度の相関係数を示した。D指標を見ると,当然,生活習慣や趣味との相関がかなりある。B指標とも比較的強めである。F指標のように特定の書籍を問われた場合もかなりの相関がある。C指標では,娯楽休養の動機との相関が強めにある。他者からの影響や触発による読書はほとんどないが,一方で,H指標のように,他者への影響には相関が強めである。E指標は読書歴をみているが,読書を特技と自覚するかは,高校時代の読書とかなり関係がある。A指標の1,2,3は読書量を問うているが,特技度との相関は強くはない。そこで,読書特技度に6をつけた大学生の回答をみると,5月の読書冊数は0~35冊,1日の読書時間は0~180分,一週間の読書日数は0~7日と値に幅があった。特技度6でも,0冊,0分,0日と回答する場合があるのである。1つの質問項目だけで読書特技度を捉えた場合,やや矛盾した結果を得てしまいやすい。今後は,質問紙だけでなく,インタビューなどを通じて,読書を特技とする大学生の特徴を探る必要がある。また,何をもって,大学生にとっての読書が特技たりうるのかについても,明確にしていくべきだろう。もちろん,読書が特技であるか否かについて,自己評価と他者評価では,大きなずれが生じる可能性がある。その点にも,注意を払う必要がある。
【文献】
平山祐一郎 2008 大学生の読書状況に関する教育心理学的考察 野間教育研究所