The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH061] コミュニケーション能力の自己評価と主観的幸福感との関連についての考察

百瀬知輝1, 河村茂雄2 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学)

Keywords:コミュニケーション能力, 主観的幸福感

【問題と目的】
コミュニケーション能力という言葉が大学生の間で,そして世間一般にまで広く使われるようになって久しい(小川,2010)。これは,現代社会においてコミュニケーションというものに強い関心が向けられ,その重要性が高まっていることを示している。
そうした中で,コミュニケーション能力と幸福感の関連を指摘する先行研究は少なくない。貴戸(2011)は,「コミュニケーション能力不足」という評価によってもたらされる「生きづらさ」を指摘している。一方でコミュニケーションが成功することによる幸福感も示唆されている(Sandra,1997;辻,2011)。特に大学生は,学校社会から実社会への過渡期を迎えており,就職活動等で自らのコミュニケーション能力と直面化する機会が多い(大和,2010)ため,影響は特に大きいのではないかと考えられる。
そこで本研究でははじめにコミュニケーション能力を倉元・大坊(2007)の先行研究のモデルに従い,表出系スキル,管理系スキル,反応系スキルの3要素に定義づけた。そしてその上で,それぞれのスキルの自己評価が,主観的幸福感にどのように関連しているかを検討することを目的とした。

【方法】
1.調査時期と手続き
2013年7月,東京都内の大学生224名(男性:118名,女性:106名)を対象として質問紙による調査を行った。平均年齢は20.02歳(SD=1.37),有効回答率は92.2%であった。
2.使用尺度
・コミュニケーション能力:「コミュニケーション・スキル尺度 ENDCOREs」(藤本・大坊,2007)24項目7件法。
・主観的幸福感:「主観的幸福感尺度」(伊藤・相良・池田・川浦,2003)12項目,4件法。

【結果と考察】
はじめにコミュニケーション能力のそれぞれの変数について男女差のt検定を行ったところ,すべての能力について性差は認められなかった。したがって,この後の分析は男女を混合して行うこととした。
次にコミュニケーション能力の自己評価得点が主観的幸福感得点(充足感,将来展望)に及ぼす影響を検討するため,前者を説明変数,後者を基準変数とした重回帰分析を行った(Figure1)。結果,コミュニケーション能力の3変数は現在の生活への充足感との関連が少なく,将来展望との関連が大きいことが明らかとなった。さらにコミュニケーション能力の中でも、表出系スキルが強く関連していることが明らかとなった。
以上の結果から,表出系スキルを高めることで大学生の,将来展望的な幸福感が上がりうることが示唆された。大学生は友人関係,就職活動などで,自らを表現することは不可避であり,常にその能力を求められる(内藤,2010他)。そのため,日々の学生生活はもとより,就職活動や人的交流場面においても,表出スキル的能力を高めることは有用ではないかと考えられる。
これからの研究では,さらにコミュニケーション能力の定義づけを明確化しての調査が求められるだろう。