[PH066] 幼児による複数の空間的手がかりに基づく対象定位の検討
Keywords:対象の定位, 空間的参照枠, 幼児
目 的
対象定位における空間的手がかりは自己,対象と自己を取り囲む周辺環境,対象だけを内包する箱などの小環境に分類できる。多田・杉村(2011)によれば,幼児期後期になると,成人には及ばないながら,自己や周辺環境だけでなく小環境に基づいた定位ができるようになるという。
これをふまえ,多田(2014)は,5-6歳児が上述の3つの手がかりにどのように基づいて,対象を位置づけるのかについて予備的な調査を行った。その結果,年長幼児は,ブロックに対する20回の方向判断の中で,ブロックの配置方向に一致しない手がかりがある状況ではブロックを斜めと判断しやすくなる可能性が窺われた。そこで本研究では,参加者内で対象の配置方向と一致する手がかりの数を段階的に操作し,年長幼児における対象定位時の手がかりへの基づき方を,より詳細に検討することとした。
方 法
参加者:幼稚園の年長児76名(男児38名,女児38名,77ヶ月)。装置:方向判断の対象は縦12.5cm×横12.5cm×高1.5cmのブロック。判断の際の手がかりとなる周辺環境として高さ100cmの衝立を組み合わせた180cm四方の実験空間。小環境として縦30cm×横30cm×高7cmの箱。実験空間の中央に箱を,その箱の中央にブロックを置いた。課題:実験空間の中央に置かれた箱の中のブロックに対して4回の方向判断を求めた。判断時に依拠する手がかりは,参加者の前頭面(自己),実験空間の四壁面(周辺環境),箱の四側面(小環境)であった。ブロックの配置方向に一致する手がかりが,第1試行では3つ,第2試行では2つ,第3試行では1つ,第4試行では0となるよう調整し,A-Fの6条件を作った(Table 1)。
結果と考察
A-Fの6条件における方向判断の結果をまとめた(Figure 1)。条件ごとに1-4試行間の判断の差を見るためCochranのQ検定を実施したところ,条件 A(χ2(3)=12.60, p<.01),B(χ2(3)=14.29, p<.01),C(χ2(3)=17.43, p<.01),D(χ2(3)=22.20, p<.01),E(χ2(3)=18.09, p<.01)で有意差が,F(χ2(3)=7.62, .05
対象定位における空間的手がかりは自己,対象と自己を取り囲む周辺環境,対象だけを内包する箱などの小環境に分類できる。多田・杉村(2011)によれば,幼児期後期になると,成人には及ばないながら,自己や周辺環境だけでなく小環境に基づいた定位ができるようになるという。
これをふまえ,多田(2014)は,5-6歳児が上述の3つの手がかりにどのように基づいて,対象を位置づけるのかについて予備的な調査を行った。その結果,年長幼児は,ブロックに対する20回の方向判断の中で,ブロックの配置方向に一致しない手がかりがある状況ではブロックを斜めと判断しやすくなる可能性が窺われた。そこで本研究では,参加者内で対象の配置方向と一致する手がかりの数を段階的に操作し,年長幼児における対象定位時の手がかりへの基づき方を,より詳細に検討することとした。
方 法
参加者:幼稚園の年長児76名(男児38名,女児38名,77ヶ月)。装置:方向判断の対象は縦12.5cm×横12.5cm×高1.5cmのブロック。判断の際の手がかりとなる周辺環境として高さ100cmの衝立を組み合わせた180cm四方の実験空間。小環境として縦30cm×横30cm×高7cmの箱。実験空間の中央に箱を,その箱の中央にブロックを置いた。課題:実験空間の中央に置かれた箱の中のブロックに対して4回の方向判断を求めた。判断時に依拠する手がかりは,参加者の前頭面(自己),実験空間の四壁面(周辺環境),箱の四側面(小環境)であった。ブロックの配置方向に一致する手がかりが,第1試行では3つ,第2試行では2つ,第3試行では1つ,第4試行では0となるよう調整し,A-Fの6条件を作った(Table 1)。
結果と考察
A-Fの6条件における方向判断の結果をまとめた(Figure 1)。条件ごとに1-4試行間の判断の差を見るためCochranのQ検定を実施したところ,条件 A(χ2(3)=12.60, p<.01),B(χ2(3)=14.29, p<.01),C(χ2(3)=17.43, p<.01),D(χ2(3)=22.20, p<.01),E(χ2(3)=18.09, p<.01)で有意差が,F(χ2(3)=7.62, .05
以上より,参加者内でブロックと配置方向が一致する手がかりを漸減させた際に,配置方向の異なる手がかりが1つでも生じると,年長児はブロックを斜めと判断しやすくなると考えられた。このことから,年長児は,ブロックの方向判断において自己,実験空間,箱の3つの空間的手がかりのどれか1つに依拠するわけではなく,3つの手がかりのいずれにも基づいて,総合的な視点から対象を定位すると考えられた。