[PA003] 教師の指導文化継承を促進するメカニズムの検討
キーワード:教師, 指導文化, 学校組織
問題と目的
大阪府の教員の年齢構成は20代,50代が多く35歳から45歳までが極端に少ないワイングラス型をしており(大阪府教育委員会,2009),今後熟練者が減少し新規採用が増加することが予想される。また堀(2012)・吉田(2012)は従来職員室での会話を通じて若手教員に伝えられていた教師の指導文化が,協働性の低下により継承不全を起こしている可能性を指摘している。協働性の低下については,「公よりも私を重視する」プライバタイゼーションの浸透(油布,1999)と,教員の多忙化と新たな教育改革案の提起が急速であること(今津,2000)から,以前に比べ成員相互の交流がなくなってきており「協働性」の機能が十分機能していないことが示唆されている。そこで,教師の指導文化の継承を促進する組織の現状・在り方について検討するため,教師の指導文化尺度(井原・牧,2014)を用いて,尺度の総合得点の平均点高群の学校へのインタビュー調査を実施する。収集したインタビューデータは演繹的コーディング(佐藤,2008)を用いて分析し,教師の指導文化継承を促進するメカニズムの検討を行う。
方 法
【被調査者】大阪府内3市小学校10校(131名)・中学校9校(133名)に調査を実施し回答を得た。その中から教師の指導文化尺度総合得点の平均点高群の小学校1校・中学校1校を抽出し,インタビュー調査を実施した。調査に際しては,小学校校長1名・教師2名(主幹教諭1名,生活指導担当教諭1名),中学校校長1名・教師2名(主幹教諭1名,生徒指導主事担当教諭1名)にインタビュー調査を実施し回答を得た。
【手続き】被調査者にインフォームドコンセントを実施した上で,日常的な問題意識に基づく学校組織に焦点化した回答を得るため,被調査者に自由に語ってもらう形式をとりながら,同時にこちらの設定した諸項目について聞き取る半構造化面接を実施した。校長には単独でインタビュー調査を実施し,教師2名は2人1組でインタビュー調査を実施した。質問項目は,分散モデル(露口,2012)と「場」の概念(野中・紺野,1999)に関する項目と,教師の指導文化の継承と関連性が検証された協働性に関する項目(井原・牧,2014)を併せて設定した。
【質問項目】管理職には,①分散型リーダーシップの存在についてどのようにとらえ実践しているのか,②教師の指導文化の継承がどの場面で起きていると認識しているのか,③理想的な組織を実現させるために,具体的にどのような方策をとり実践しているのか,④職員間の協働をどのようにとらえて,促進するよう努めているのか,⑤学校組織で何を優先しているのか,に関する質問項目を設定し,述べるよう求めた。一方教員には,①職員の中で「場」として機能しているのはどこか(物理的・仮想的・心的),②「場」でのミドルリーダーの存在があるか。あるとしたら,そのリーダーは固定されているのか,教員の指導文化の継承につながっているか,③人材育成システムとしての当該校の現状とポイント,に関する質問項目を設定し,述べるよう求めた。
結 果
先行研究の知見に基づき分析的コードを作成し,このコードを用いて小学校校長・中学校校長・小学校教員・中学校教員の逐語録に演繹的コーディングを行い分析した。さらに分析的コード内において文書セグメントのコーディングを行い記述的コードを得た。その結果,分析的コードを親ツリー,記述的コードを子ツリーとするツリー構造が構築され,これらを表にまとめ,コード付きセグメント及びコード付きセグメントの整理を行った(Table1)。
考 察
本研究の結果から指導文化高群校では,校長の明確なリーダーシップのもと,校長自らの個々の教職員への働きかけと,トップマネジメントチームの活用により,職員一人一人に「(学校組織にかかわっている)当事者意識を持たせる」ことで,教職員の自覚や自律性を引き出し,教職員間の日常の交流が活性化されていることが示された。そしてその結果,『教職員全体での役割をこえた協働』における【相補性】【情報冗長性】に富んだ【教師集団の相互循環の促進】がより促進されていると考えられる。つまり指導文化高群校では,ナレッジマネジメント(野中・紺野,1999)における場の促進と,協働性を高める雰囲気の醸成双方が有機的に作用していることが示された。
大阪府の教員の年齢構成は20代,50代が多く35歳から45歳までが極端に少ないワイングラス型をしており(大阪府教育委員会,2009),今後熟練者が減少し新規採用が増加することが予想される。また堀(2012)・吉田(2012)は従来職員室での会話を通じて若手教員に伝えられていた教師の指導文化が,協働性の低下により継承不全を起こしている可能性を指摘している。協働性の低下については,「公よりも私を重視する」プライバタイゼーションの浸透(油布,1999)と,教員の多忙化と新たな教育改革案の提起が急速であること(今津,2000)から,以前に比べ成員相互の交流がなくなってきており「協働性」の機能が十分機能していないことが示唆されている。そこで,教師の指導文化の継承を促進する組織の現状・在り方について検討するため,教師の指導文化尺度(井原・牧,2014)を用いて,尺度の総合得点の平均点高群の学校へのインタビュー調査を実施する。収集したインタビューデータは演繹的コーディング(佐藤,2008)を用いて分析し,教師の指導文化継承を促進するメカニズムの検討を行う。
方 法
【被調査者】大阪府内3市小学校10校(131名)・中学校9校(133名)に調査を実施し回答を得た。その中から教師の指導文化尺度総合得点の平均点高群の小学校1校・中学校1校を抽出し,インタビュー調査を実施した。調査に際しては,小学校校長1名・教師2名(主幹教諭1名,生活指導担当教諭1名),中学校校長1名・教師2名(主幹教諭1名,生徒指導主事担当教諭1名)にインタビュー調査を実施し回答を得た。
【手続き】被調査者にインフォームドコンセントを実施した上で,日常的な問題意識に基づく学校組織に焦点化した回答を得るため,被調査者に自由に語ってもらう形式をとりながら,同時にこちらの設定した諸項目について聞き取る半構造化面接を実施した。校長には単独でインタビュー調査を実施し,教師2名は2人1組でインタビュー調査を実施した。質問項目は,分散モデル(露口,2012)と「場」の概念(野中・紺野,1999)に関する項目と,教師の指導文化の継承と関連性が検証された協働性に関する項目(井原・牧,2014)を併せて設定した。
【質問項目】管理職には,①分散型リーダーシップの存在についてどのようにとらえ実践しているのか,②教師の指導文化の継承がどの場面で起きていると認識しているのか,③理想的な組織を実現させるために,具体的にどのような方策をとり実践しているのか,④職員間の協働をどのようにとらえて,促進するよう努めているのか,⑤学校組織で何を優先しているのか,に関する質問項目を設定し,述べるよう求めた。一方教員には,①職員の中で「場」として機能しているのはどこか(物理的・仮想的・心的),②「場」でのミドルリーダーの存在があるか。あるとしたら,そのリーダーは固定されているのか,教員の指導文化の継承につながっているか,③人材育成システムとしての当該校の現状とポイント,に関する質問項目を設定し,述べるよう求めた。
結 果
先行研究の知見に基づき分析的コードを作成し,このコードを用いて小学校校長・中学校校長・小学校教員・中学校教員の逐語録に演繹的コーディングを行い分析した。さらに分析的コード内において文書セグメントのコーディングを行い記述的コードを得た。その結果,分析的コードを親ツリー,記述的コードを子ツリーとするツリー構造が構築され,これらを表にまとめ,コード付きセグメント及びコード付きセグメントの整理を行った(Table1)。
考 察
本研究の結果から指導文化高群校では,校長の明確なリーダーシップのもと,校長自らの個々の教職員への働きかけと,トップマネジメントチームの活用により,職員一人一人に「(学校組織にかかわっている)当事者意識を持たせる」ことで,教職員の自覚や自律性を引き出し,教職員間の日常の交流が活性化されていることが示された。そしてその結果,『教職員全体での役割をこえた協働』における【相補性】【情報冗長性】に富んだ【教師集団の相互循環の促進】がより促進されていると考えられる。つまり指導文化高群校では,ナレッジマネジメント(野中・紺野,1999)における場の促進と,協働性を高める雰囲気の醸成双方が有機的に作用していることが示された。