[PA009] 教職課程履修生における教師・教育観と志望動機
キーワード:教職, 志望動機, 教師・教育観
【問題と目的】
現在教育現場では教員の世代交代が進んでいる中,一定の教師力の維持と資質向上は急務の課題となっている。そんな中筆者も教職課程科目担当者の一人として,将来「教職」を選択する可能性のある学生に「教師役割とは何か」「資質向上のために何が必要であるか」等をどう伝えるかは大きな課題となっている。本研究ではその指針を得る目的でアンケート調査を実施し,結果を分析した。
【方 法】
調査対象:教職課程履修生225名【文系S大102名,理系D大123名】
調査期間:2014年4月,9月,10月
調査手続き:教職課程科目の授業第一講時にアンケート用紙を配布し,回収する形で実施した。アンケート内容は,1〉資格取得の動機,2〉教育界が直面している問題への認識,3〉問題解決のために求められる教師力,4〉職業選択における教職の位置,5〉免許更新制の是非,についての項目で構成された。2〉については「3つまで複数回答可」とし3〉については「優先順位の高いものから3つまで回答可」とした。
【結 果】
1〉資格取得の動機
履修生全体の「資格取得動機」としては1)子供が好きで子供に関わる職業に就きたいと思ったから(27.6%),2)教員免許を持っていると将来役に立つことがあると思うから(25.8%),3)魅力ある職業だと思うから(13.3%),4)親に勧められたから(7.1%),5)自分に向いていると思うから(5.3%)が上位項目に挙げられた。この結果を文系,理系別に分析した所,文系では1)項目が58.8%で,理系では2)項目が43.9%でそれぞれ第一位であり,「資格取得の動機」に明らかな差が見られた。
2〉教育界が直面している問題への認識
履修生が深刻化していると認識している問題を回答数の多いものから順に挙げると1)いじめ問題の多発(124),2)保護者の学校に対するクレームの増加(119),3)教師の指導力の低下(58),4)学校・保護者・地域の協力体制の低下(46),5)子供の学力低下(44)という結果であった。これらの結果のうち文系,理系別分析で顕著な差が見られたのは「教師の指導力の低下」項目であった。(文系:10,理系:48)
3〉問題解決のために求められる教師力
今後現場が抱える問題を解決していくにあたって「求められる教師力で重要だと考えられるものは何か」についての回答を優先順位の高いものから3つ選択させ,集計(回答数)した結果は以下の通りであった。1)生徒の相談や訴えに親身に対応できる力(172《78》),2)教科指導以外の生活指導・生徒指導力(145《59》),3)学習指導における専門的知識・経験(110《48》),4)学校組織内で発揮される連携力(78《21》),5)保護者の相談や訴えに親身に対応できる力(73《5》)の順に重要だと認識していることが明らかになった。更に最重要(《 》内数字)だと認識され,第一位に挙げられた項目を文系,理系別に分析した結果,顕著な差は認められなかった。
4〉職業選択における教職の位置
「教職」が履修生にとって,将来の職業選択の中でどのような位置を占めているのかを尋ねた項目であるが結果は以下の通りであった。文系履修生は「第一志望」が43.1%,「選択肢の一つ」が36.3%と大多数を占め,理系履修生では「第一志望」が11.4%,「選択肢の一つ」が33.3%,「第二・第三志望以下」が17.9%,「職業として目指していない」が36.6%を占め,理系履修生においては「教職」を将来の就業職として必ずしも捉えていないことが窺えた。
5〉免許更新制の是非
免許更新制の是非について尋ねた所,「必要」が136,「必要ない」が23,「わからない」が62の回答数を得た。履修生の多くは,教師力を維持し,時代の変化に対応していくために,更新制は必要であると判断していることが明らかになった。
【考察と今後の課題】
本研究の結果は,履修生にとって「教職」が職業決定の際の第一候補に結びつきにくいことをうかがわせる。その背景にまで踏み込むことができなかったが,今後は「教職の社会的地位」「経済的安定性」「やりがい」等をどのように捉えているのかに焦点を当てた項目を設けて調査する必要があろう。
現在教育現場では教員の世代交代が進んでいる中,一定の教師力の維持と資質向上は急務の課題となっている。そんな中筆者も教職課程科目担当者の一人として,将来「教職」を選択する可能性のある学生に「教師役割とは何か」「資質向上のために何が必要であるか」等をどう伝えるかは大きな課題となっている。本研究ではその指針を得る目的でアンケート調査を実施し,結果を分析した。
【方 法】
調査対象:教職課程履修生225名【文系S大102名,理系D大123名】
調査期間:2014年4月,9月,10月
調査手続き:教職課程科目の授業第一講時にアンケート用紙を配布し,回収する形で実施した。アンケート内容は,1〉資格取得の動機,2〉教育界が直面している問題への認識,3〉問題解決のために求められる教師力,4〉職業選択における教職の位置,5〉免許更新制の是非,についての項目で構成された。2〉については「3つまで複数回答可」とし3〉については「優先順位の高いものから3つまで回答可」とした。
【結 果】
1〉資格取得の動機
履修生全体の「資格取得動機」としては1)子供が好きで子供に関わる職業に就きたいと思ったから(27.6%),2)教員免許を持っていると将来役に立つことがあると思うから(25.8%),3)魅力ある職業だと思うから(13.3%),4)親に勧められたから(7.1%),5)自分に向いていると思うから(5.3%)が上位項目に挙げられた。この結果を文系,理系別に分析した所,文系では1)項目が58.8%で,理系では2)項目が43.9%でそれぞれ第一位であり,「資格取得の動機」に明らかな差が見られた。
2〉教育界が直面している問題への認識
履修生が深刻化していると認識している問題を回答数の多いものから順に挙げると1)いじめ問題の多発(124),2)保護者の学校に対するクレームの増加(119),3)教師の指導力の低下(58),4)学校・保護者・地域の協力体制の低下(46),5)子供の学力低下(44)という結果であった。これらの結果のうち文系,理系別分析で顕著な差が見られたのは「教師の指導力の低下」項目であった。(文系:10,理系:48)
3〉問題解決のために求められる教師力
今後現場が抱える問題を解決していくにあたって「求められる教師力で重要だと考えられるものは何か」についての回答を優先順位の高いものから3つ選択させ,集計(回答数)した結果は以下の通りであった。1)生徒の相談や訴えに親身に対応できる力(172《78》),2)教科指導以外の生活指導・生徒指導力(145《59》),3)学習指導における専門的知識・経験(110《48》),4)学校組織内で発揮される連携力(78《21》),5)保護者の相談や訴えに親身に対応できる力(73《5》)の順に重要だと認識していることが明らかになった。更に最重要(《 》内数字)だと認識され,第一位に挙げられた項目を文系,理系別に分析した結果,顕著な差は認められなかった。
4〉職業選択における教職の位置
「教職」が履修生にとって,将来の職業選択の中でどのような位置を占めているのかを尋ねた項目であるが結果は以下の通りであった。文系履修生は「第一志望」が43.1%,「選択肢の一つ」が36.3%と大多数を占め,理系履修生では「第一志望」が11.4%,「選択肢の一つ」が33.3%,「第二・第三志望以下」が17.9%,「職業として目指していない」が36.6%を占め,理系履修生においては「教職」を将来の就業職として必ずしも捉えていないことが窺えた。
5〉免許更新制の是非
免許更新制の是非について尋ねた所,「必要」が136,「必要ない」が23,「わからない」が62の回答数を得た。履修生の多くは,教師力を維持し,時代の変化に対応していくために,更新制は必要であると判断していることが明らかになった。
【考察と今後の課題】
本研究の結果は,履修生にとって「教職」が職業決定の際の第一候補に結びつきにくいことをうかがわせる。その背景にまで踏み込むことができなかったが,今後は「教職の社会的地位」「経済的安定性」「やりがい」等をどのように捉えているのかに焦点を当てた項目を設けて調査する必要があろう。