[PA014] 日本人学習者の英文理解に心像性と親密性が与える影響
キーワード:英語, 親密度, 文理解
目的
言語を用いた研究では,言語刺激の特性に配慮すべきである。外国語習得では,理解や記憶(Ellis & Beaton,1993),使用する語彙(横川, 2006a)に,親密度などの単語特性が影響し,日本人英語学習者を対象とした英単語親密度調査もある(横川, 2006b; 2009)。また文においても,母語では親密度や具体性が理解や記憶に影響するため (Sadosiki, Goetz, and Fritz, 1993),外国語でもこれらの特性が影響する可能性がある。しかし,日本人学習者を対象に,英語文の特性の影響を調査したものは無い。本研究では,日本人英語学習者(大学生)を対象に英語単文の特性を測定し,理解に与える影響を検討する。
研究1
身体的あるいは心的行為を意味する英語文233文について,親密度と理解容易性を各文12-20名の大学生に評価させた。また,同意味の日本語文233文について,別の大学生に親密度,心像性(具体性),行為経験を評価させた。英語文の単語数と文字数,日本語文の文字数とモーラ数を著者が数えた(粟津・鈴木, 2015a参照)。
表1に指標間の相関係数を示す。英文容易性は英文親密度と高い正の相関を示した。他の指標とも有意な相関はあるものの,値は低かった。そこで英文容易性を目的変数,他の指標を説明変数とした強制投入法の重回帰分析を行った。英語文容易性以外の8項目を投入した重回帰モデルの説明率はR2=0.84と高く,モデルの有意性は確認された[F (8,232)=147.2, p<01]。ただし,5%水準で有意な項目は心像性と英語文親密度のみだった。
英語文の容易性に有意な影響を与える要因は,今回測定した中では,英語文の親密度と心像性と考えられる。つまり「見覚えがあり」「具体的なイメージがしやすい内容」の英文が,理解しやすいということになる。
研究2
233英語文のうち,横川(2006b)と比較可能な71文について,英単語文字親密度,出現頻度の影響を検討した。この71文は,主語“I”以外の全ての単語の親密度,出現頻度が測定されている。
文中に現れる全単語の平均親密度と平均出現頻度,及び文中の単語の中で最低親密度,最低出現頻度を指標とした。英語文容易性との相関を,表2に示す。
平均値,最低値のいずれにおいても,親密度は中程度の有意な相関を示すが,出現数は低く有意でない相関しか示さない。
結論
日本人英語学習者を対象に,文の諸特性を測定し,特に理解容易性に影響する要因を探索した。英語文の理解容易性に,「文の意味内容のイメージしやすさ」が影響することを示した。また,客観的な単語出現頻度よりも,日本人英語学習者にとっての主観的な単語親密度が,理解容易性に重要であることを示した。
言語を用いた研究では,言語刺激の特性に配慮すべきである。外国語習得では,理解や記憶(Ellis & Beaton,1993),使用する語彙(横川, 2006a)に,親密度などの単語特性が影響し,日本人英語学習者を対象とした英単語親密度調査もある(横川, 2006b; 2009)。また文においても,母語では親密度や具体性が理解や記憶に影響するため (Sadosiki, Goetz, and Fritz, 1993),外国語でもこれらの特性が影響する可能性がある。しかし,日本人学習者を対象に,英語文の特性の影響を調査したものは無い。本研究では,日本人英語学習者(大学生)を対象に英語単文の特性を測定し,理解に与える影響を検討する。
研究1
身体的あるいは心的行為を意味する英語文233文について,親密度と理解容易性を各文12-20名の大学生に評価させた。また,同意味の日本語文233文について,別の大学生に親密度,心像性(具体性),行為経験を評価させた。英語文の単語数と文字数,日本語文の文字数とモーラ数を著者が数えた(粟津・鈴木, 2015a参照)。
表1に指標間の相関係数を示す。英文容易性は英文親密度と高い正の相関を示した。他の指標とも有意な相関はあるものの,値は低かった。そこで英文容易性を目的変数,他の指標を説明変数とした強制投入法の重回帰分析を行った。英語文容易性以外の8項目を投入した重回帰モデルの説明率はR2=0.84と高く,モデルの有意性は確認された[F (8,232)=147.2, p<01]。ただし,5%水準で有意な項目は心像性と英語文親密度のみだった。
英語文の容易性に有意な影響を与える要因は,今回測定した中では,英語文の親密度と心像性と考えられる。つまり「見覚えがあり」「具体的なイメージがしやすい内容」の英文が,理解しやすいということになる。
研究2
233英語文のうち,横川(2006b)と比較可能な71文について,英単語文字親密度,出現頻度の影響を検討した。この71文は,主語“I”以外の全ての単語の親密度,出現頻度が測定されている。
文中に現れる全単語の平均親密度と平均出現頻度,及び文中の単語の中で最低親密度,最低出現頻度を指標とした。英語文容易性との相関を,表2に示す。
平均値,最低値のいずれにおいても,親密度は中程度の有意な相関を示すが,出現数は低く有意でない相関しか示さない。
結論
日本人英語学習者を対象に,文の諸特性を測定し,特に理解容易性に影響する要因を探索した。英語文の理解容易性に,「文の意味内容のイメージしやすさ」が影響することを示した。また,客観的な単語出現頻度よりも,日本人英語学習者にとっての主観的な単語親密度が,理解容易性に重要であることを示した。