日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA023] かけ算九九の同数効果

被乗数ごとの検討

後藤聡 (北海学園大学)

キーワード:かけ算九九, 被乗数・乗数が同数

1 目的
かけ算九九において,同数(被乗数と乗数が同じ数)問題はそれ以外の問題と比較して反応時間(計算に要する時間)が小さくなる同数効果が存在するか,被乗数ごとに分けて学年差を含めて明らかにする。
2 方法
対象:小学校3年生26名,4年生26名
方法:パソコンを用いて被乗数,乗数が2~9のかけ算九九算問題の回答を求めて反応時間を測定した。
3 結果と考察
被乗数ごとに,学年・乗数別の反応時間の平均値(sec)を表に示した。
同数と同数以外の反応時間を比較するため,被乗数2~9を分けて2(学年:3年・4年)×8(乗数:2~9)の分散分析を行ったところ,全ての被乗数で学年と乗数の主効果が有意であった。学年比較では各被乗数とも4年生の反応時間が小さかった。乗数の主効果は被乗数2~9順に(F (7,350)=6.464, p<.01),(F (7,350)=10.137, p<.01),(F (7,350)=8.073, p<.01),(F (7,350)=7.343, p<.01),(F (7,350)=4.551, p<.01),(F (7,350)=3.632, p<.01),(F (7,350)=9.410, p<.01),(F (7,350)=3.790, p<.01)であった。
そこで乗数について多重比較を行った結果,被乗数2では乗数2と3・6~9が1%,4が5%水準有意で,乗数2の同数問題が乗数3・4・6~9の問題よりも反応時間は小さかった。被乗数3では乗数3と4・6~9が1%水準有意で,乗数3の同数問題が乗数4・6~9の問題よりも反応時間は小さかった。被乗数4では乗数4と6~8が1%,9が5%水準有意で,乗数4の同数問題が乗数6~9の問題よりも反応時間は小さかった。被乗数5では乗数5と7が1%水準有意で,乗数5の同数問題が反応時間は小さかった。被乗数6では乗数6と7が5%水準有意で,乗数6の同数問題が反応時間は小さかった。被乗数7では乗数7・と4・8が1%,6が5%水準有意で,乗数7の同数問題が乗数4・6・8の問題よりも反応時間は小さかった。被乗数8では乗数8と4が1%,7が5%水準有意で,乗数8の同数問題が乗数4・7の問題よりも反応時間は小さかった。被乗数9では乗数9と4が1%,3・7・8が5%水準有意で,乗数9の同数問題が乗数3・4・7・8の問題よりも反応時間は小さかった。
特に被乗数2~4の小さい問題と被乗数9の問題で同数効果が顕著であった。被乗数6~8の大きい問題では,同数とそれよりも小さい乗数との間に反応時間の差がない問題が多数であった。先行研究の報告によれば,小さい数の問題の方が反応時間も小さい傾向であったが,本研究では当てはまらなかった。これは,同数問題の反応時間が小さくなるという同数効果が存在するためであると考えられる。
被乗数5の問題は,乗数7を除き同数効果がみられなかった。たし算の研究などで指摘された5の特異性がかけ算九九にも存在するのかもしれない。