日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB004] 教職員とスクールカウンセラーの効果的な協働の検証(2)

1人のスクールカウンセラーによる公立小中学校11校での実践

川越勝 (宇都宮市スクールカウンセラー)

キーワード:スクールカウンセラー, 学校心理学, チーム援助

【問題と目的】
スクールカウンセラー(以下SC)の職務の有効性は,比較検討しにくい側面がある。そこで,川越(2013)は,検証⑴で筆者(SC)と筆者以外のSCの相違点について,小・中学校の教職員に質問紙調査を行い, SCが教職員と協働しやすくなるポイントを示した。本研究では,この結果を基にした継続的な検証を行う。
【方 法】
対象者:筆者が同一年度に勤務した関東圏の小・中学校11校(小学校9校,中学校2校)の教職員
実施期間:2014年3月
内容と手続き:以下の2種類の質問紙を作成して,SCの年度勤務最終日前後に学校単位で実施した。
1.選択式質問[⑴今年度の筆者(SC)への相談の有無,⑵相談内容,⑶相談の有効性]
2.自由記述式質問[教職員が今までに関わったSCと筆者(SC)の特徴の相違点]
【結 果】
1.選択式質問の集計結果
⑴ SCへの相談(雑談を含む)
有効回答212名のうち,教職員170名(80.1%)が筆者(SC)に相談した。〔小学校166名中126名(75.9%),中学校46名中44名(95.7%)〕
⑵ 相談内容(6項目から選択,複数回答あり)
⑶ 相談の有効性(4件法)
2.自由記述式質問[教職員が今までに関わったSCと筆者(SC)の特徴の相違点]を,KJ法で前回の調査結果と同じ10項目に分類した。
今回の調査対象校11校のうち小学校7校は筆者(SC)が初めて勤務する学校であり,学校によって年間5~12回勤務をした。選択式質問の集計結果では,小・中学校教職員の170名(80.1%)が筆者(SC)に相談(雑談を含む)をした。そして,相談した人の100%が「役に立った(86.5%)」または「少し役に立った(13.5%)」と回答した。(前回の調査結果は97.7%)
自由記述式質問の結果では,筆者(SC)と他のSCの同じ点(似ている点)と違う点(似ていない点)を小・中学校の合計数で比較すると,「人柄」「傾聴」「専門知識」「その他」の項目の数値は,同じ点のほうが高かった。そして,「助言」「観察力」「声掛け」「情報共有・提供」「学校理解」の項目の数値は,違う点のほうが高かった。「行動力」の項目の数値は,同じ点と違う点が同数だった。
【考 察】
教職員とSCの協働は,初年度の勤務校でも効果があったと考えられる。また,SCの勤務回数の多さや同一校での勤務年数の長さは,重要ではないことが明らかになった。そこで,今回の検証結果から,SCが教職員と協働する上で留意すべきこととして次の5点を挙げ,今後の研究課題とする。
・SCから教職員への声掛け(雑談を含む)
・教職員からの話(相談)の傾聴
・専門知識による具体的な助言
・児童生徒の特徴把握とその情報提供や共有
(行動観察や掲示物等による見立て)
・学校や学級事情を配慮した上での助言