日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB022] 新生児から超高齢期までの生涯発達過程に関する認知の発達的変化

奥田裕紀 (金城大学)

キーワード:認知, 生涯発達, 新生児

Ⅰ.はじめに
奥田(2014)は、多軸同心円スケールを用いて、青年群(18歳~22歳)、40代群、高齢者群(65歳~79歳)に対して、生涯発達過程における各年齢の自分自身の6つの特性に関する認知について評定を求めた。その結果、高齢者群と、青年群、40代群との間の評定平均値の変化パターンの差異は、青年群と40代群との間の差異よりも大きいことが示唆された。しかし、これまで40代群と高齢者群の間の年齢の人達について、この評定方法を用いた検討は行われておらず、利用可能なデータは得られていなかった。そこで本研究では50歳~59歳の人達に、奥田(2014)と同じ方法で同一の項目に関する評定を求め各群の結果を比較することとした。
Ⅱ.方法
① 研究参加者:研究参加者は、150名でこのうち50人は40代群(40~49歳)、50人は50代群(50~59歳)、50人は高齢者群(65歳~79歳)とした。本研究の目的、評定は無記名で行われ、データは目的以外に使用しないこと、プライバシーの保護に配慮することなどを説明し研究参加同意を得た。
②多軸同心円スケール:本研究で用いた多軸同心円スケールは、6つの同心円が描かれ、各同心円に内側から1、0.8、0.6、0.4、0.2、0と表示されたものであった。同心円スケール上には、0度の位置から12の軸が均等に配置されており、各軸の外側には、0度の軸から0歳、5歳、10歳、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳、70歳、80歳、90歳、100歳の年齢が、時計回りに順に表示されていた。
③評定項目:多軸同心円スケールを用いて各評定対象年齢の自分が、“現在の自分に近い自分”“生活に満足している自分”、“幸福な自分”、“健康に自信を持っている自分”、“希望をもっている自分”、“意欲的な自分”に、あてはまる・近いと思う程度について評定を求めた。以下各評定を、現在近さ評定、満足評定、幸福評定、健康評定、希望評定、意欲評定とする。なお、ここでは満足評定の結果を中心に示すこととする。
Ⅲ.結果および考察
図1に、40代群、50代群、高齢者群の各評定対象年齢における幸福評定の評定平均値を示した。3元配置分散分析の結果、満足評定における年齢群×年齢の単純交互作用は有意であり、満足評定に関しては、40代群、50代群、高齢群間で、評定対象年齢による評定平均値の変化のパターンが、有意に異なることが示された(p<0.01)。
満足評定について、40代群では、評定平均値の最高値は0歳で示され、2番目に高かったのは20歳であった。50代群では、満足評定の評定平均値は、評定対象年齢30歳で最高値となったが、20歳から50歳まで評定平均値の差異は、さほど大きくはなく、50歳でも0.6を超えており、3群の評定平均値の中で最も高かった。高齢者群では、70歳で最高値が示され、その前後の年齢では評定平均値は低下した。
本研究の結果から、評定対象年齢による生涯発達過程に関する認知)は、年齢とともに一定の方向に変化する人が多く、50代では、現在の満足度を高く認知する人が増加することが示唆された。