日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC058] 社会性の発達に困難を抱える子どもの早期徴候と支援(2)

4か月健診,7か月教室からの予測

宮本正一1, 別府悦子2, 別府哲3, 新村津代子#4, 山田典子#5, 北川小有里#6 (1.中部学院大学, 2.中部学院大学, 3.岐阜大学, 4.本巣市健康増進課, 5.本巣市健康増進課, 6.本巣市健康増進課)

キーワード:自閉症スペクトラム, 早期発見, M-CHAT

Ⅰ.問 題
社会性の発達に困難を抱える子どもへの支援にとってその早期発見は重要である。本研究は1歳未満児の発達的特徴から社会性の困難への支援予測を検討する。具体的には,まず保健センターによる1歳6か月児健診時に得られた特徴から「社会性の困難への支援得点」を得る。次に,「4か月児健診」時と「7か月児教室」時の母親アンケートの回答とこの支援得点との関連を検討する。
Ⅱ.方 法
被験者 岐阜県本巣市で平成22年10月から平成24年3月までに出生した435名の乳幼児とその母親である。
母親アンケート 4か月児健診時に参加した母親に「笑いかけたり話しかけたりすると微笑み返しますか」「平らな床面にうつ伏せに寝かせたときにお子さんは下の図のように頭を45度持ち上げることができますか」などの,社会性と運動発達に関する14項目に「はい」「いいえ」で回答を求めた。また7か月児教室時に参加した時も同じ母親に「イナイイナイバーをすると喜んだりしますか」「腹ばいから仰向けに,仰向けから腹ばいに2回以上寝返りをしますか」などの,社会性と運動発達に関する24項目に「はい」「いいえ」で回答を求めた。
1歳6か月児健診時にはM-CHATを活用した「ままごと遊び」を実施し,行動観察した。
Ⅲ.結 果
1歳6か月児健診時の「ままごと遊び」を「要求の指さし」「社会的参照」等,10の観点から行動観察し,不通過(苦手)=2,芽生え=1,通過(得意)=0で得点化した。そしてその総点を「社会性の困難への支援得点」とした。回答が得られた被験者の支援得点を表1,表2に示した。4か月児健診で69%,7か月児教室時で67%の子どもはすべての項目を通過した。
母親アンケートの各項目の「はい」「いいえ」回答を独立変数,「支援得点」を従属変数としてWilcoxonの順位和検定を行った。その結果,表1に示すように4か月児健診時の「平らな床面にうつ伏せに寝かせたときにお子さんは下の図のように頭を45度持ち上げることができますか」の項目で「いいえ」群(n=60)は「はい」群(n=277)よりも支援得点が有意に高いことが示された[Z=3.317, p=0.0009097]。
7か月児教室時の「腹ばいから仰向けに,仰向けから腹ばいに2回以上寝返りをしますか」(表2)[Z= 3.274, p=0.00106],「ひとりで食べ物を持ち,口へ持っていって食べますか」[Z=2.0289, p=0.0424],「人見知りをしますか」[Z=2.638, p=0.0083],の3項目で「いいえ」群は「はい」群よりも支援得点が有意に高いことが示された。
生後1年未満の時点で「人見知りをしますか」等の社会性の発達項目の他に,粗大運動発達の様態が「社会性の発達困難」と関連が深いとの示唆が実証されたことになる。
※本研究は,2013年~2015年度科学研究費補助金(代表:別府悦子,基盤C:25381327)の助成を受けた。