日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PE

2015年8月27日(木) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PC061] 小中学校における気になる子への対応に関する実態調査(3)

特別支援教育の負担感と連携状況との関連

吉橋由香1, 谷伊織2, 田倉さやか3 (1.岐阜聖徳学園大学, 2.東海学園大学)

キーワード:特別支援教育, 負担感, 連携

問題と目的
近年,学校現場では特別支援教育の広まりとともに,従来の特殊教育の対象とされた障害だけでなくADHDや高機能自閉症などの発達障害も支援の対象として,通常学級に在籍する個別の支援のあり方が検討されている。それぞれの児童に応じたニーズに対応できる教育的支援を行うための取り組みは現在,教育現場で広がりを見せている。そのため,教員を対象とした各種研修会,あるいは各学校での校内委員会やケース検討会など,教師が知識を深める場や,さらに意見や知識を交換して連携する機会が増えてきている。一方で,日々の支援の方法について教師が苦慮する姿に遭遇することは依然として多く,支援についての負担感は大きいと考えられる。
秋山(2004)は,学級担任を対象とした意識調査を行い,特別支援教育を推進する上で教師が抱える課題やニーズについて検討している。その結果,学級担任は特別支援教育の導入の必要性を認識しつつも,通常学級の中で個別のニーズに対応することについて,負担や不安などを感じていることを指摘している。したがって,教師の意識と支援方略の向上とともに,校内や家庭との支援体制の充実や環境整備の必要性が提言されている。そこで,本研究では校内と家庭と教師の連携状況が,教師の負担感にどのように影響を与えているかについて検討する。調査にあたって校内連携の状況については先行研究より項目収集を行った。
方 法
発達障害に関する研修会に参加し,研究の趣旨に同意した教師を対象とした質問紙調査を行った。
調査対象者 幼稚園,小中学校および特別支援学校の教師48名(小学校31名,中学校17名)を対象とした。
質問項目 質問紙の構成は.①回答者の属性(性別,年齢,学校種,教育歴,担任の有無) ②校内連携状況尺度,26項目,5件法 ③保護者との連携の状況尺度6項目, 5件法(吉橋ら, 2012)④特別教育負担感尺度(高田, 2009)5件法,であった。
結 果
まず,校内連携状況尺度について,因子分析を行ったところ,一次元性が推測されたので,ここでは一因子構造の尺度として扱うこととした。校内連携状況尺度と保護者との連携状況尺度,特別教育負担感尺度の2つの下位尺度のそれぞれについて項目得点を加算し,尺度得点を求めた。校内連携状況尺度についてはα係数が.87,保護者との連携尺度についてはα係数が.73,特別教育負担感尺度下位尺度である「不安および負担」のα係数が.83,「やりがいのなさ」のα係数が.72であり,十分な信頼性が認められた。
次に,各尺度間の相関係数を算出したところ,校内連携状況尺度と保護者との連携尺度の間には有意な正の相関が認められた(r=.35, p<.05)。また,校内連携状況とやりがいのなさの間には有意な負の相関が認められた(r=-.36, p<.05)。保護者との連携とやりがいのなさの間には有意な負の相関がみられた(r=-.36, p<.05)。
考 察
特別支援教育における支援の際の負担感と校内および保護者との連携の間には負の相関がみられ,連携が円滑に行われるほど負担感が小さくなる傾向が見られた。すなわち,連携がうまく機能していない場合は負担が大きくなり,同時にやりがいも小さくなっている傾向が明らかとなった。
引用文献
秋山邦久 (2004). 特別支援教育に対する小中学校教員の意識に関する調査研究. 人間科学研究, 26, 55-66.