日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC072] 大学生の食

5日間の食卓写真の分析

外山紀子 (早稲田大学)

キーワード:青年, 食, 写真法

デジタルカメラやスマートフォンで撮影された食卓写真をデータとして利用する調査法を写真法という。現在では写真を利用した栄養指導も一般的になっているが,食卓写真から得られる情報は多岐にわたる。器や食具,その並べ方,盛り付け,いろどり,テーブルなど,多くのものが写真に写り込む。その全てが,食べ手について多くのことを教えてくれる。本研究では,大学生を対象として,連続する5日間,食べたものをすべて写真に撮ってもらった。その写真を手がかりとして,大学生の食について考える。

方 法
〈対象者〉 都内私立大学2校(A・B大学)に在籍する学部大学生(18~22歳),49名。男性23名(自宅生12名・自宅外生11名),女性26名(自宅生11名・自宅外生15名),A大学32名,B大学16名。
〈写真〉 食事量がわかるよう15㎝定規を手前に置いた状態で,真上と斜め45度から2枚の写真を撮影してもらった。
〈食事記録〉 位置づけ(朝食・昼食などの区別),時刻,場所,作り手,共食者,メニュー,体調や気分(おいしさ,楽しさ,満足度)を4段階評定を求めた。

結 果
〈食事回数〉
朝食については,男性自宅外生11名中4名がゼロ回,5名が1回だった。朝食の欠食が習慣化しているようだ。朝昼連続して食べなかった(夕食のみ)が4名だった。女性については,自宅外生でも70%以上(11/15)が5日間毎日ないし1日を除いて朝食の記録があった。しかし,夕食回数は男性より少なかった。自宅生でも自宅外生でも,5日間毎日夕食の記録があった者は27名中14名だった(男性は21/23名)。
〈共食とひとりの食事〉
誰かと一緒に食べた食事(共食)とひとりで食べた食事の回数を数えた。朝食については,自宅外生だけでなく自宅生もひとりで食べた回数が多かった。その場合,朝食時刻は非常に早いか(4時台あるいは5時台),非常に遅いか(10時台あるいは11時台)のどちらかであった。以前なら下宿していた学生が自宅通学するようになったことが背景にあると考えられる。昼食・夕食については,男性自宅外生を除けば共食回数が多かった。
〈摂取カロリー〉
写真と食事記録に基づき栄養評価を行った。日本人の食事摂取基準(2010年版)では,18~29歳の摂取カロリー基準量は男性2,650kcal,女性1,950kcalである。基準カロリーを上回った者は男性ゼロ,女性1名(自宅生,1990kcalで102%)だけだった。男性については自宅生と自宅外生の差が大きかった。自宅外生は約半数(5/11)が25~50%にとどまったが,自宅生については全員が50%を超えた。女性については自宅生と自宅外生の差はあまりなかったが,自宅外生15名のうち2名は25%未満だった。
〈食品数〉
食事内容のバリエーションの豊かさをみるために,食品数をチェックした。品目数が20以上だった者は,男性自宅生については12名中3名,女性自宅生については12名中5名だった。一方,品目数が10未満だった者は,男性自宅外生については11名中5名,女性自宅外生については15名中3名だった。栄養という点からみると,自宅生と自宅外生の違いは女性よりも男性について大きかった。