日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PD

2015年8月27日(木) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PD019] 物語文の読解過程と展開の予測を検討

登場人物の感情評価を指標にして

伊藤尚枝 (恵泉女学園大学)

キーワード:物語文, 感情, 展開の予測

目 的
同じ物語文を読解したのに,異なる展開を推測するとしたら,読解過程のどのような違いが反映されるのだろうか?登場人物Aの人物Bに対する感情評定を指標にして検討する。
方 法
1.実験参加者 女子大生164名(19-21歳)
2.刺激呈示文 「義妹のこと」(1200字程度)を使用した(女のレポート編集部編, 2010, pp.58-59)。あらすじをTable1に示す。
3.手続 呈示文を3パートに分けて,1つずつ呈示しながらアンケートに回答してもらった。まず,パート1を黙読してから,「主人公は義妹をどのくらい好きだと思うか(好感度と記す)」を評定してもらった(すこし好きだと思う1点~たいへん好きだと思う8点)。次に,パート2を読んでから好感度を評定してもらった。最後に,パート3を読んで好感度を評定してもらった後,さらに「このあと主人公と義妹の会話は弾んだと思うか(予測と記す)」を参加者自身で想像して答えてもらった(まったく会話が弾まない1点~とても会話が弾む8点)。
結 果
1.予測の得点 主人公と義妹との「会話が弾む」程度を評定した予測の得点を昇順に並べて,点数の低い84名(1~3点)を低群とした。他方で,点数の高い50名(6~8点)を高群とした。高群と低群とで平均値を算出して,対応のないt検定を行うと有意な差が認められた(Table 2)。高群のほうが低群よりも「2人の会話が弾む」と想像していて,パート1の内容と整合する展開を予測していると言えるだろう。
2.好感度の得点 高群と低群ごとに,好感度得点の評定平均値を算出してFigure 1にまとめた。各群ごとに一元配置の分散分析を実行したところ,どちらも1%水準で有意な差が認められた(高群F(2,98)=21.10;低群F(2,166)=43.95)。
考 察
同じ文章に対して,高群と低群とで異なる展開の予測が発生した。パート3の好感度に着目すると,高群ではパート2の好感度よりも有意に高くなったが,低群ではパート2の好感度と有意差がなかった。パート2とパート3との好感度の較差に応じて,予測の違いが発生したのだろう。
引用文献
女のレポート編集部編(2010). 大沢悠里のゆうゆうワイド 女のレポート心にしみる100の話 TBSサービス, pp.58-59.