The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD030] 教員志望学生の授業イメージ

志望校種による差異の検討

近藤和也1, 竹内利光2 (1.福島学院大学大学院, 2.福島学院大学大学院)

Keywords:授業イメージ

問題と目的
教員は初年度から授業を担当するのが一般的であり,経験年数によらず一定水準のクオリティを要求される。教員として現場の経験を積む以前の状態では,各自がそれまでに受けてきた教育によって培われてきた教育や授業についてのイメージ・信念が,個々の授業に大きく影響するであろうことは,想像に難くない。
それでは,教員志望の大学生はどんな授業イメージを持っているのだろうか。これまでにも秋田(1996)をはじめとして,教師や教員志望の学生を対象に授業イメージを調査した研究は行われているが,学生自身の将来像としての授業イメージを,校種別に検討した例は,管見の限り見当たらない。
そこで本研究は,現在教員を志望している学生を対象として,志望する校種の違いによって授業イメージがどのようなものであるかを検討した。
方 法
調査対象:東北地区の国立大学法人X大学とY大学に所属する,教職を志望している学生。
質問項目:授業はどうあるべきかということについての考え方を,教員として授業することを想像して,「授業は…」に続く形で思いつく限り記述してもらった。
調査手続き:本調査は学術目的で行われ,個人特定されることはないこと,回答は自由であることを伝えた上で,調査用紙を集団配布し,集団回収した。その結果,57名から回答を得た。
結果と考察
本研究では「教師としての授業イメージ」を分析対象とするため,質問の意図を理解していないと思われるもの(例「生徒にとって嫌なもの」「教師との信頼関係を作るもの」)や,意味不明なものは除外した。その結果,小学校志望者37件,中学・高校志望者149件の回答を得たので,校種別にKJ法による分析を試みた(Figure 1, 2)。分析に当たっては,大学院で心理学を専攻する学生の協力を得て,分析の妥当性を高めた。
両者を比較すると,際だって異なるのが「こども(生徒)主体」と「授業を工夫すべき」の部分である。小学校志望者に比べ,中学・高校志望者は後者の割合がかなり高くなっている。例えば,「他の教科との関連を提示すべきだ」「系統立ててやるべきだ」などの回答が見られる。また,「子ども(生徒)主体」の下位カテゴリー同士を比べても,中・高校志望者は「生徒主体の授業をすべき」の割合が高い。例えば,「生徒の目線に立ってつくるべき」などの回答が見られる。中学・高校においては学習内容が複雑・高度になるためであろうか,中学・高校志望者の方が「授業のしかた」に重きを置くという傾向,いわば教師主導の傾向が強いことを示唆しているのではないだろうか。
初等中等教育にも「アクティブラーニング」の導入が検討されるなど,教育の在り方が大きく変わりつつあるいま,学生たちは自らが受けてきたものとは異なる授業の在り方を模索しなければならなくなる。
今後の教員養成の在り方を探る上で,学生がどのような授業イメージを持っているかを踏まえて,どのような授業イメージを,いかにして育てるべきかということを考えていきたい。
参考文献
秋田喜代美 1996 教える経験に伴う授業イメージの変容-比喩生成課題による検討- 教育心理学研究,44,176-186.