日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PE

2015年8月27日(木) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PE018] イマージョンプログラムを受けている中学生のメモリスパンに関する研究

日英二言語の数字の記憶の差

今井信一1, 井上智義2 (1.(学)太田国際学園ぐんま国際アカデミー中高等部, 2.同志社大学)

キーワード:英語教育, イマージョンプログラム, メモリスパン

【目 的】
今井(2010)はイマージョンプログラムで学習する中学生と従来の英語教育を受けた高校生・大学生の英語能力を比較する研究において,日本語と英語のメモリスパンの差をみるテストでは高成績者・低成績者の分布には有意な差があるものの,分散分析においては有意な差がないという結果を得た。本研究の目的は,イマ-ジョンプログラム学習開始時期に着目し,早期イマ-ジョン学習者への追加調査を行うことで,イマ-ジョンプログラムとその開始時期が学習者の日英二言語のメモリスパンへ与える影響を明らかにすることである。
【方 法】
調査対象者と調査実施日
I1群:ぐんま国際アカデミーで小学校1年生からの早期イマージョンプログラムを受けている中学2年生56名。2014年12月12日実施。
I2群:ぐんま国際アカデミーで小学校4年生からの中期イマージョンプログラムを受けている中学2年生36名。2009年10月21日実施。
H群:地方の公立高校2年生64名。2009年9月25日実施。
U群:同志社大学社会学部開校科目『バイリンガリズムと教育』受講生55名。2009年10月27日実施。
調査材料
4群に以下の2種のテストを用いた。
1.日本語数字メモリスパン課題
2.英語数字メモリスパン課題
毎秒2桁の速さで続けて読み上げられる3桁から10桁の数字を記憶し,読み上げが終わった時点で解答用紙に記入する。
【結果と考察】
日本語数字メモリスパン課題の正解桁数の平均をTable 1に,英語数字メモリスパン課題の正解桁数の平均をTable 2に示す。
分散分析の結果,日本語のメモリスパンは4群間に有意な差は見られなかった(F(3/207)=1.868, P>0.05)が,英語のメモリスパンは4群間に有意な差が見られた(F(3/207)=9.540, P<0.01)。また,英語のメモリスパンに関して,Tukey-Kramer法による多重比較検定の結果,I1群とH群(P<0.01),I1群とU群(P<0.05),I2群とH群(P<0.01),I2群とU群(P<0.01)の間に有意な差が見られた。このことから,イマージョンプログラムを受けている中学生は従来の英語教育を受けた高校生・大学生に比べ英語のメモリスパンが大きいといえる。しかし,早期イマージョン(I1)群と中期イマージョン(I2)群では有意な差は見られなかった。
さらに,メモリスパンの個人差を考慮し,調査対象者各々の日本語と英語のメモリスパンの差をとり分析した。日本語の正解桁数から英語の正解桁数を引いた差の平均値はTable 3の通りである。
分散分析の結果,4群間に有意な差が見られた(F(3/207)=5.455, P<0.01)。また,多重比較検定の結果,I1群とH群(P<0.01),I1群とU群(P<0.01)の間に有意な差が見られた。このことから,早期イマージョンプログラムを受けている中学生(I1)は高校生(H)・大学生(U)に比べ日本語と英語のメモリスパンの差が小さくなるという結果が得られた。また,早期イマージョン(I1)群と中期イマージョン(I2)群では有意な差は見られないが,早期イマ-ジョン群と高校生(H)群・大学生(U)群との間で有意な差がみられることから,早期イマージョンプログラムは中期イマージョンプログラムより英語のメモリスパンを延ばすという点で有効であることがわかった。
【結 論】
イマ-ジョンプログラムを受ける中学生は,従来の英語教育を受けた高校生・大学生と比較すると,英語のメモリスパンが大きく日本語のメモリスパンの大きさに近いということが言える。
参考資料
今井信一(2010).日本教育心理学会総会発表論文集(52).日本教育心理学会