日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PE

2015年8月27日(木) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PE045] 大学生の怠学行動に関する研究(1)

自由記述の分析から

湯浅英幸1, 大久保智生2 (1.香川大学大学院, 2.香川大学)

キーワード:怠学行動, 大学生, 自由記述

問題と目的
居眠りや授業放棄などの怠学行動(湯浅・大久保,2014,2015)は,中高生だけでなく,大学生においても問題視されている。大学生の怠学行動の基礎的な研究として,まず大学生がどのような行動を怠学行動と捉えているのかを明らかにする必要がある。
これまでの研究では,「授業を欠席する」,「授業に遅刻する」,「宿題を期日までに終わらせない」,「試験勉強をするのを忘れる」,「授業中に寝る」といった行動が,大学生の怠学行動として扱われてきた(小林,2009,2012)。しかしながら,大学では,大人数での授業が多く,授業形態も様々であるため,大学生の怠学行動は多様であると考えられる。したがって,大学生にとってどのような行動が怠学行動と捉えられているのか,検討しなおす必要があるといえる。加えて,怠学行動と類似する他の行動と怠学行動を比較することで,怠学行動の特徴を明らかにする必要があるといえる。
そこで本研究では,大学生がどのような行動を怠けていると捉えているのか,教員から怒られると思う行動,してはいけないと思う行動,迷惑と思う行動との比較から検討することを目的とする。
方 法
調査対象者:大学生166名(男子57名,女子109名)。
質問紙:大学での学業(授業,課題,テスト等)について,①怠けていると思う学生の行動,②教員から怒られると思う学生の行動,③してはいけないと思う学生の行動,④迷惑と思う学生の行動について,自由記述で回答を求めた。
結果と考察
自由記述で得られた回答を,心理学専攻の大学生と大学院生,大学教員の4名でカテゴリーに分類し,その割合を算出した(Table 1)。カテゴリーは,「学習態度の欠如」,「授業からの離脱」,「学業に関する不正」,「他者に対する妨害」,「その他」の5つである。各行動の特徴について検討するために,カイ二乗検定を行った(χ²(12)=713.101,p<.001)。その結果,怠けていると思う行動では,「学習態度の欠如」,「授業からの離脱」の順で割合が高かった。教員から怒られると思う行動では,「授業からの離脱」の割合が高かった。してはいけないと思う学生の行動では,「学業に関する不正」の割合が高かった。迷惑と思う行動では,「他者に対する妨害」の割合が高かった。
以上の結果から,「学習態度の欠如」と「授業からの離脱」が,大学生の怠学行動の大きな特徴であるといえる。「授業からの離脱」は,教員から怒られると思う行動においても割合が高いことから,怠学行動だけでなく,教員から怒られる行動の特徴とも捉えられていると考えられる。また,「学習態度の欠如」は,他の行動において割合が高くないことから,怠学行動独自の特徴である。つまり,怠学行動がもつ学習に対する消極的な側面こそ,怠学行動と他の行動の大きな違いであるといえる。「学業に関する不正」と「他者に対する妨害」はそれぞれ,してはいけないと思う行動,迷惑と思う行動において割合が高いことから,怠学行動の特徴というよりも,してはいけない行動,迷惑と思う行動の特徴と捉えられていると考えられる。