[PF040] 母親のペアレント・トレーニングの振り返りに見る子どもの見方の変容についての一考察
キーワード:ペアレント・トレーニング, 振り返り, 子どもの見方の変容
【問題と目的】
一般的に,特別な教育的支援を必要とする子どもは,様々な場面で不適応な行動を起こしてしまいがちであり,親子関係の悪循環が生じやすくなることが知られている。こうした悪循環を断ち切り,より良い親子関係を築くために,保護者の養育態度の変容を促す支援の方法の1つに,ペアレント・トレーニングがあり,親が子育ての自信,自己肯定観,自尊心を取り戻すのに有効なプログラムとして実践されている。
本研究では,子育てに大きな不安をもつ母親を対象にペアレント・トレーニングを実施し,各セッションの母親の語りをもとに,母親の子どもの見方の変容を明らかにする。
【研 究 1】
1 目的
【研究2】で使用する,母親の子どもの見方の変容に関わる要因を仮説検証的に選定する。なお,変容の要因として,「母親の個人に対する見方・関わり方」「母親の姉弟に対する見方・関わり方」「母親の自己の成長」「母親の不安」の4つを仮定した。
2 方法
(1)調査時期:ペアレント・トレーニング終了後の2014年12月~1月であった。
(2)調査対象:【研究2】でペアレント・トレーニングを実施した,母親の各セッションの語りであった。
(3)手続き:母親の各セッションの語りからキーワードを抽出し,各キーワードを仮定した4つの要因に,KJ法により分類した。
3 結果及び考察
KJ法により,キーワードを分類した結果,母親の子どもの見方の変容に関わる要因は,およそ「1 目的」に示す4つの要因に分類され,仮説を支持する分類結果が確認された。
【研 究 2】
1 目的
【研究1】で分類した4つの要因をもとに,ペアレント・トレーニングを行った母親の各セッションの語りの内容から,子どもの見方の変容について統合的に明らかにする。
2 方法
(1)対象者の決定:対象者は小学校5年生の女の子(姉)と小学校2年生の男の子(弟)をもつ母親であった。子育てに対して不安を抱え悩み,特に弟への接し方について困っているとの相談を受けたことから,ペアレント・トレーニングを実施した。
(2)実施期間:2014年9月~12月であった。
(3)トレーニング内容:ペアレント・トレーニングは隔週で1回,計7回,1セッション約2時間実施した。プログラムは,上林ら(2009)の『こうすればうまくいく 発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル』を参考に,短縮版を作成した。
(4)調査方法:ICレコーダーで録音した母親との毎回のやりとりは,プロトコル転記。また,研究1で作成した4つの要因ごとに,特徴的出来事とトレーニング成果へタイトルを作成した。ペアレント・トレーニングを行った期間は3つに分け,それぞれ「把握・整理期」「分析・解釈・混沌期」「合理化・改善・向上期」と命名した。
3 結果及び考察
「母親の個人に対する見方・関わり方」については,母親の姉の見方は,5年生なのに自立ができないという見方から姉の現状を肯定し,母親への甘えを受容することで,これから思春期を迎える姉が母親との対等な関係を築き,自立に向かっていくという見方に変わった。また,母親の弟の見方は,弟に将来への期待を持ちながらも現在の様子から母親としての接し方に迷いを抱いていたが,甘えさせることへのためらいが解消したことで,弟のよい行動の変化に気づき,甘えさせることが充実するなどと良好な親子関係を築けるようになってきたという見方に変わった。
「母親の姉弟に対する見方・関わり方」については,母親の姉弟への見方は,姉弟を個々に見るという見方から,姉弟としてのやりとりを見守る必要性があるという見方へ変わった。
「母親の自己の成長」については,母親は過去の子育てを十分に振り返ることができたことから,過去の振り返りにもとづいて,現在,未来と幅広く子育てを見られるようになった。
「母親の不安」については,母親は社会から見た弟の評価を気にして,子育てに自信が持てずに迷っていたが,ありのままの子どもの姿を受け止め,子育てを一人で抱え込まずに,周りと支えあいながら共有していこうとする姿勢に変わった。
4 母親の子どもの見方の変容についてのまとめ
本研究の結果から,「過去の子育てと向き合い,現在の子ども達の姿を受容し,肯定すること」ができることで,「母親の子育てに対する不安が解消され,親子として良好な関係を築き,親子が成長すること」につながっていく様相が,個別事例的に明らかとなった。
一般的に,特別な教育的支援を必要とする子どもは,様々な場面で不適応な行動を起こしてしまいがちであり,親子関係の悪循環が生じやすくなることが知られている。こうした悪循環を断ち切り,より良い親子関係を築くために,保護者の養育態度の変容を促す支援の方法の1つに,ペアレント・トレーニングがあり,親が子育ての自信,自己肯定観,自尊心を取り戻すのに有効なプログラムとして実践されている。
本研究では,子育てに大きな不安をもつ母親を対象にペアレント・トレーニングを実施し,各セッションの母親の語りをもとに,母親の子どもの見方の変容を明らかにする。
【研 究 1】
1 目的
【研究2】で使用する,母親の子どもの見方の変容に関わる要因を仮説検証的に選定する。なお,変容の要因として,「母親の個人に対する見方・関わり方」「母親の姉弟に対する見方・関わり方」「母親の自己の成長」「母親の不安」の4つを仮定した。
2 方法
(1)調査時期:ペアレント・トレーニング終了後の2014年12月~1月であった。
(2)調査対象:【研究2】でペアレント・トレーニングを実施した,母親の各セッションの語りであった。
(3)手続き:母親の各セッションの語りからキーワードを抽出し,各キーワードを仮定した4つの要因に,KJ法により分類した。
3 結果及び考察
KJ法により,キーワードを分類した結果,母親の子どもの見方の変容に関わる要因は,およそ「1 目的」に示す4つの要因に分類され,仮説を支持する分類結果が確認された。
【研 究 2】
1 目的
【研究1】で分類した4つの要因をもとに,ペアレント・トレーニングを行った母親の各セッションの語りの内容から,子どもの見方の変容について統合的に明らかにする。
2 方法
(1)対象者の決定:対象者は小学校5年生の女の子(姉)と小学校2年生の男の子(弟)をもつ母親であった。子育てに対して不安を抱え悩み,特に弟への接し方について困っているとの相談を受けたことから,ペアレント・トレーニングを実施した。
(2)実施期間:2014年9月~12月であった。
(3)トレーニング内容:ペアレント・トレーニングは隔週で1回,計7回,1セッション約2時間実施した。プログラムは,上林ら(2009)の『こうすればうまくいく 発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル』を参考に,短縮版を作成した。
(4)調査方法:ICレコーダーで録音した母親との毎回のやりとりは,プロトコル転記。また,研究1で作成した4つの要因ごとに,特徴的出来事とトレーニング成果へタイトルを作成した。ペアレント・トレーニングを行った期間は3つに分け,それぞれ「把握・整理期」「分析・解釈・混沌期」「合理化・改善・向上期」と命名した。
3 結果及び考察
「母親の個人に対する見方・関わり方」については,母親の姉の見方は,5年生なのに自立ができないという見方から姉の現状を肯定し,母親への甘えを受容することで,これから思春期を迎える姉が母親との対等な関係を築き,自立に向かっていくという見方に変わった。また,母親の弟の見方は,弟に将来への期待を持ちながらも現在の様子から母親としての接し方に迷いを抱いていたが,甘えさせることへのためらいが解消したことで,弟のよい行動の変化に気づき,甘えさせることが充実するなどと良好な親子関係を築けるようになってきたという見方に変わった。
「母親の姉弟に対する見方・関わり方」については,母親の姉弟への見方は,姉弟を個々に見るという見方から,姉弟としてのやりとりを見守る必要性があるという見方へ変わった。
「母親の自己の成長」については,母親は過去の子育てを十分に振り返ることができたことから,過去の振り返りにもとづいて,現在,未来と幅広く子育てを見られるようになった。
「母親の不安」については,母親は社会から見た弟の評価を気にして,子育てに自信が持てずに迷っていたが,ありのままの子どもの姿を受け止め,子育てを一人で抱え込まずに,周りと支えあいながら共有していこうとする姿勢に変わった。
4 母親の子どもの見方の変容についてのまとめ
本研究の結果から,「過去の子育てと向き合い,現在の子ども達の姿を受容し,肯定すること」ができることで,「母親の子育てに対する不安が解消され,親子として良好な関係を築き,親子が成長すること」につながっていく様相が,個別事例的に明らかとなった。