[PG020] 教師の自律性支援の有効性認知
教職志望学生との比較および教師効力感との関連
キーワード:自律性支援, 動機づけ, 自己決定理論
問題と目的
これまで,児童・生徒の動機づけに関わる教師の指導について多くの研究がなされてきた。そのなかで,教師による自律性支援が動機づけや学業達成を促すことが示されている(Deci & Ryan, 1987; Reeve, 2006)。
自律性支援の有効性は,教育心理学の研究者側の視点から行われてきたといえる。一方で,教育心理学の研究知見を教育実践に活かすためには,現場の教師が自律性支援的な教授行動をどのように捉えているかについても検討することが必要である。動機づけ概念の中には,現職教員が有効と捉えないものもあることが示唆されている(鎌原他, 2013)。
本研究では,教師が自律性支援的な教授行動が児童・生徒の動機づけにとってどの程度有効と認知しているか(自律性支援の有効性認知)について,教職志望学生との比較から検討する。また,教師効力感との関連から,その特徴を検討する。
方法
対象者
現職教員30名(男性11名,女性18名,未記入1名;平均年齢44.93歳)。教職経験年数の平均は18.17年(SD=11.09)であった。また,比較のために教育学部学生93名(男性31名,女性47名,未記入15名;平均年齢19.75歳)にも回答を求めた。
質問紙
(1)自律性支援の有効性認知 自律性支援と統制の定義(e.g., Reeve, 2006)をもとに,自律性支援と統制の有効性に関する項目を作成し,児童・生徒のやる気を高めるうえでそれぞれどの程度効果的だと思うかを尋ねた(5件法)。「もっとも指導を得意としている教科」(教員)もしくは「志望している教科」(学生)を想定して回答を求めた。
(2)教師効力感 Woolfolk & Hoy(1990)の教師効力感尺度の日本語版(前原, 1994)を用いた(5件法)。教師のみが回答した。
結果
尺度構成
自律性支援の有効性認知17項目に対して因子分析を行い,2因子を抽出した。それぞれ「自律性支援の有効性」(α=.75),「統制の有効性」(α=.66)とした。因子負荷量の高い項目をもとに下位尺度を構成した。
現職教員と教職志望学生との比較
自律性支援の有効性認知について,現職教員と学生との比較を行った(Table 1)。自律性支援の有効性は,現職教員と学生との間で有意な差はなかった(d=.03, t(121)=0.16, n.s.)。統制の有効性は,学生よりも現職教員の方が有意に高かった(d=..83, t(121)=3.93, p<.001)。
教師効力感との関連
教師効力感について,原尺度と同様に「教師の力量(α=.69),個人的効力感(α=.81)の下位尺度得点を算出した。自律性支援の有効性認知との順位相関係数を求めたところ,自律性支援の有効性と教師の力量との相関は-.08(n.s.),個人的効力感との相関は.12(n.s.),統制の有効性と教師の力量との相関は-.30(n.s.),個人的効力感との相関は.06(n.s.)であり,いずれも有意ではなかった。
考察
自律性支援的な教授行動は,児童・生徒の動機づけを高めるうえで,現職教員と教職志望学生は同程度に有効性を認知していた。一方,現職教員は,統制的な教授行動についても動機づけに対する有効性を認めていた。それぞれの教授行動の有効性認知に関連する要因をさらに検討する必要がある。
これまで,児童・生徒の動機づけに関わる教師の指導について多くの研究がなされてきた。そのなかで,教師による自律性支援が動機づけや学業達成を促すことが示されている(Deci & Ryan, 1987; Reeve, 2006)。
自律性支援の有効性は,教育心理学の研究者側の視点から行われてきたといえる。一方で,教育心理学の研究知見を教育実践に活かすためには,現場の教師が自律性支援的な教授行動をどのように捉えているかについても検討することが必要である。動機づけ概念の中には,現職教員が有効と捉えないものもあることが示唆されている(鎌原他, 2013)。
本研究では,教師が自律性支援的な教授行動が児童・生徒の動機づけにとってどの程度有効と認知しているか(自律性支援の有効性認知)について,教職志望学生との比較から検討する。また,教師効力感との関連から,その特徴を検討する。
方法
対象者
現職教員30名(男性11名,女性18名,未記入1名;平均年齢44.93歳)。教職経験年数の平均は18.17年(SD=11.09)であった。また,比較のために教育学部学生93名(男性31名,女性47名,未記入15名;平均年齢19.75歳)にも回答を求めた。
質問紙
(1)自律性支援の有効性認知 自律性支援と統制の定義(e.g., Reeve, 2006)をもとに,自律性支援と統制の有効性に関する項目を作成し,児童・生徒のやる気を高めるうえでそれぞれどの程度効果的だと思うかを尋ねた(5件法)。「もっとも指導を得意としている教科」(教員)もしくは「志望している教科」(学生)を想定して回答を求めた。
(2)教師効力感 Woolfolk & Hoy(1990)の教師効力感尺度の日本語版(前原, 1994)を用いた(5件法)。教師のみが回答した。
結果
尺度構成
自律性支援の有効性認知17項目に対して因子分析を行い,2因子を抽出した。それぞれ「自律性支援の有効性」(α=.75),「統制の有効性」(α=.66)とした。因子負荷量の高い項目をもとに下位尺度を構成した。
現職教員と教職志望学生との比較
自律性支援の有効性認知について,現職教員と学生との比較を行った(Table 1)。自律性支援の有効性は,現職教員と学生との間で有意な差はなかった(d=.03, t(121)=0.16, n.s.)。統制の有効性は,学生よりも現職教員の方が有意に高かった(d=..83, t(121)=3.93, p<.001)。
教師効力感との関連
教師効力感について,原尺度と同様に「教師の力量(α=.69),個人的効力感(α=.81)の下位尺度得点を算出した。自律性支援の有効性認知との順位相関係数を求めたところ,自律性支援の有効性と教師の力量との相関は-.08(n.s.),個人的効力感との相関は.12(n.s.),統制の有効性と教師の力量との相関は-.30(n.s.),個人的効力感との相関は.06(n.s.)であり,いずれも有意ではなかった。
考察
自律性支援的な教授行動は,児童・生徒の動機づけを高めるうえで,現職教員と教職志望学生は同程度に有効性を認知していた。一方,現職教員は,統制的な教授行動についても動機づけに対する有効性を認めていた。それぞれの教授行動の有効性認知に関連する要因をさらに検討する必要がある。