日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH055] 愛着スタイルがインターネットトラブルに及ぼす影響

宮本邦雄 (東海学院大学)

キーワード:愛着スタイル, インターネットトラブル, ネットいじめ

問題と目的
インターネット利用の拡大に伴うトラブル(以下ネットトラブル)を体験する青少年が増加しており,子どもたちの社会性の発達や適応に及ぼす対人的トラブルの影響も懸念されている(原,2011他)。ネットトラブルに関わる個人要因を検討することは,トラブルに遭遇した青少年の支援にとって重要な情報を与えてくれる。多様な個人特性の中でも愛着スタイルの個人差は,親密な対人関係においても敵対的な対人関係においても,その相互作用や関係性の持ち方に大きな役割を果たすことが見出されてきた(Dodge, 1993他)。
宮本(2014)は,愛着スタイルの関係回避は友人との相互作用とともにインターネットを介した交流も不活性化すること,関係不安は友人から傷つけられることを回避する傾向を強め,交流,娯楽,情報といったインターネットの利用を動機づけるが,実際の利用には影響しないことを報告した。さらに宮本(2015a)は,関係不安は,友人関係の不安定な状態を恐れ,それにとらわれる心性によって,インターネット上での対人的なトラブルやインターネットの過剰な利用・耽溺,経済的なトラブルを促進することを報告した。
本研究の目的は,宮本(2015a)の資料を詳細に分析することによって,具体的なネットトラブルと愛着スタイルとの関連を検討することである。
方 法
調査対象:東海地方の私立大学生と短期大学生246名(男性68名,女性193名),平均年齢19.5歳(SD=1.30)が調査対象となった。
質問紙の構成
1)フェイス・シート,年齢,性別,学年,大学・短期大学,居住(自宅か独居か)を尋ねた。
2)愛着スタイル尺度(ECR・GO,中尾・加藤,2004),関係回避12項目,関係不安尺度12項目の計24項目の短縮版を用い,7段階評定で回答を求めた。
3)ネットトラブル尺度(宮本,2014),高校生時代に体験したインターネット上でのトラブル21項目について,4段階評定で回答を求めた。
4)ネットトラブル対処尺度(宮本, 2014),当時のネットトラブルにどのように対処したかについての5項目および非対処1項目に,5段階評定で回答を求めた。
調査の実施:2014年10月に講義終了後に実施した。質問紙に個人情報の保護,調査の参加・不参加は自由意志によることを示し,口頭でも説明した。
結果と考察
愛着スタイルとネットトラブルの関連を検討するために,「関係回避」高低群と「関係不安」高低群の組み合わせにより,安定型(69名),とらわれ型(99名),回避型(5名),恐れ型(72名)を構成した。ネットトラブル項目に対する回答を,「1,2度あった」,「何度かあった」,「よくあった」を有とし,また,ネットトラブル対処項目については,「ややあてはまる」,「あてはまる」を有として,回答を有無の2件法に変換した。その上で,愛着スタイル(3)と回答(有無)のχ2検定を行なった。なお,回避型は少なかったため除外した。
その結果,ネットトラブル尺度項目については,「いじめ被害」の「2.ラインやツイッターでのやりとりで対人関係が悪化した」に有意な偏りが見られ(χ2=13.474,p<.001,以下df=3),安定型で有が少なく,恐れ型が多かった。「13.ラインの既読システムで友だちとの関係が悪化した」(χ2=11.481,p=.003)においても有は安定型が少なく,恐れ型が多かった。「いじめ加害」については,「8.他人についてのうわさやうそを,ブログや掲示板などに書き込んだ」(χ2=10.271,p=.006)で恐れ型が多かった。「対人トラブル」の「14.悪口やいやがらせのメールを送ったり,書き込みをした」(χ2=10.542,p=.005)で恐れ型が多いこと,「11.個人的なメールやチャットなどの文章を,勝手に転送された」(χ2=5.356,p=.069)で安定型が少ない傾向が認められた。「ネット依存」では「4.インターネット・ゲームが止められなくなった」(χ2=5.495,p=.064),「21.インターネットにのめり込んで勉強に集中できなかったり,睡眠不足になった」(χ2=6.010,p=.050)で安定型が少ない傾向がみられた。「架空請求」では「3.通販サイトから架空請求がきた」(χ2=5.815,p=.055)で恐れ型が多い傾向が認められた。
ネットトラブル対処尺度項目については,「4.ネット上で相談した」(χ2=6.003,p=.050)のみが有意であり,恐れ型が多かった。
以上の結果より,他者に対する信頼感の低さ,自尊心の低さを特徴とする「恐れ型」がとりわけ,ネットトラブルに対する脆弱性を有することが示唆された。