日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH063] 大規模災害後の学校における子どものメンタルヘルスサポートについてのワークショップの効果(3)

ワークショップへの評価を通して

石本雄真1, 原田新2, 松本有貴3, 青山郁子4, 小泉令三5 (1.鳥取大学, 2.徳島大学大学院, 3.千葉大学, 4.静岡大学, 5.福岡教育大学)

キーワード:大規模災害, PTSD

問題・目的
日本では日々さまざまな自然災害が発生するため,児童・生徒が被害にあうことも多く,心身の不調につながることも少なくない。そのような際に,日々学校で児童・生徒と接する学校関係者の役割は大きい。発表者らは,大規模災害後の児童・生徒の心身の不調に対して学校関係者ができることについて,日本各地でワークショップを開催した。ワークショップの内容は,オーストラリアで開発されたものであり,オーストラリアでの実績を持つ研究者が講師を務めた。本発表はそれらのワークショップ(全国5会場)が日本の学校関係者にどのように受け止められたのかについて報告するものである。
方 法
参加者に対し,ワークショップの実施後に,ワークショップ評価に関する質問項目への回答を依頼した。項目は全7問で(Table1),「1.全くそう思わない」~「5.とてもそう思う」の5段階評定であった。回答者は,東京19名,千葉29名,京都12名,広島56名,福岡46名の計162名であった。ただし,欠損値の関係から,各設問への回答者数は異なった。
結 果
全7問の平均値と標準偏差(SD)をTable1に示す。これらの質問項目は5段階評定で尋ねているため中間値は3.00となる。1~3の項目では,平均値が4.00を超す値を示した。また,いずれも標準偏差は1.00未満であった。4~7の項目では,平均値が3.50を超す値を示した。また,標準偏差は1.00前後の値となった。1~3の項目が高い平均値を示し,回答者によるばらつきも少なかったのに対して,4~7の項目では相対的にやや低い値となり,回答者によるばらつきも相対的に多いという結果が示された。
考 察
1~3の項目において,平均値が高い値を示し,標準偏差が1.00未満であったことから,多くの参加者にとって本ワークショップが,子どものトラウマ反応に関する知識獲得や,その知識を使用する意識促進に有益なものであったと示されたといえる。一方,4~7の項目では平均値が相対的に低い値を示し,標準偏差についても相対的に大きい値となった。このことから,参加者によっては満足している者もいるものの,一部の参加者にとっては知りたい内容が不足していると感じられたり,十分に地域に応じた内容が提供されていないと感じられたりしていることが考えられる。これらの要因として,本ワークショップはオーストラリアで作成されたものである為,その内容が参加者にとって日本の学校現場で用いるには幾分不十分であると感じるものであったことが考えられる。このことから,日本の学校現場で十分に役立つものとするためには,今後本ワークショップの内容を,より日本文化に沿ったものに修正していく必要があるといえる。しかしながら,4~7の項目についても平均値は3.50を超す値であり,本ワークショップは,今回得た知識を学校現場で用いようと思う参加者の意識の醸成に,一定程度役立つものであったといえよう。
※本ワークショップは,日本学術振興会の二国間交流事業(セミナー)による助成を受けて実施された。