日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH064] 中学生の登校回避感情に関する検討

中国公立中学校を対象として

王厳崧1, 庄司一子2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:中国の中学生, 登校回避感情

【問題と目的】
日本の教育現場では,不登校,特に中学生の不登校は依然として大きな課題である(文部科学省,2014)。一方,中国では,親からの過剰な期待によって益々増えるストレスを感じながら子どもたちは学校を休まず登校している(ベネッセ教育開発センター, 2008)。森田(1991)は欠席願望を持ちつつ登校する児童生徒を「グレイゾーン」と名付け「グレイゾーン」の生徒は比較的容易に不登校に陥る可能性があるとした。中国ではこの「グレイゾーン」についてほとんど検討されていない(刘・沃,2005;邹・屈・叶,2007)。翟(2006)は中国都市部の中学生の学校忌避感に関する調査を行ったがすでに10年以上を経ている。特に中国の地方の児童生徒の登校の現状が明らかにされていない。そのため地方の児童生徒の状況を含め中国の中学生の不登校の実態を調査する必要がある。
以上より本研究は中国の都市部と地方の公立中学校の生徒を対象に,現在の中国の中学生の登校回避感情の現状及び都市部と地方の差異を明らかにすることを目的とする。
【方 法】
「中学生にとって登校に関する質問紙」を作成し,中国の都市部と地方の公立中学校の中学1年生~3年生488名(有効回答は442名)を対象に2013年9月に実施した。
調査内容:(1)自由記述:2012年9月~現在の約1年間で病気や家庭の事情以外の理由別に①学校を休んだ日数,②学校に行きたくないと思ったことの有無。(2)尺度:①中学生用登校・欠席促進理由尺度(本間,2000)41項目4件法。②中学生用学校適応感尺度(大久保,2005)24項目5件法。③中学生用登校回避感情尺度(渡辺・小石, 2000)20項目5件法。④中学生用学校ストレッサー尺度(岡安他, 1992)14項目4件法。⑤中学生用疲労感尺度(庄司, 1998)21項目4件法。⑥中学生用生徒の教師信頼感尺度(中井・庄司, 2008)15項目4件法。⑦小中学生用学校生活享受感尺度(古市, 2004)6項目4件法。
【結果と考察】
①登校回避感情の結果:1年間で学校を休んだ日数が「30日以上」の生徒は0名,登校回避感情を持っている生徒はA校(都市部)33%,B校(地方)65%であった。
②両校各尺度間の比較検討:項目分析を行い,各尺度の因子分析(プロマックス回転)を行い,下位尺度ごと学校間のt検定を行った。「習慣」,「被信頼・受容感」,「居心地の良さ」,「成績のストレッサー」,「体の不調」,「安心感」はA校がB校より有意に高く,「身体的疲労」,「学校への反発感傾向」,「劣等感の無さ」はB校がA校より有意に高かった(Figure 1)。以上より都市部A校の方が地方B校より登校回避感情を持つ生徒は少なく,学校への適応感,教師に対する信頼感は高く,B校は欠席促進理由と登校回避感情がA校より高いことが明らかになった。