[PA18] 現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および指導行動に関する研究(4)
教員養成系大学在籍学生の志望する校種の違いを踏まえた検討
キーワード:児童・生徒観, 学習指導行動, 志望する校種
問題と目的
研究(1)(﨑濱・藤田・林,2015)では,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および学習指導行動の様相を検討するための尺度作成を,研究(2)(藤田・林・﨑濱,2015)では,現職教員と教員志望学生間での児童・生徒観および学習指導行動の違いの検討を,研究(3)(林・﨑濱・藤田,2015)では,小学校教員―中学校教員間の児童・生徒観および学習指導行動について検討を加えた。その結果,学習指導観,学習指導行動ともに,教員志望学生よりも教員の方が,中学校教員よりも小学校教員の方が児童・生徒中心的であることが明らかになった。
しかしながら,一連の研究においては,このような違いが大学生のうちから生じているのか,それとも教職に就くことによって生じるのかについては明らかにされなかった。この点を踏まえ,本研究では,教員養成系大学在籍学生に焦点を当て,希望する校種により,児童・生徒観および学習指導行動の重視度合いに何らかの違いが見られるのかどうかを検討した。
方 法
調査参加者 近畿地方の教員養成系大学に在籍する大学生85名(男性42名,女性43名,平均年齢は,男性が21.67歳,女性が20.09歳)であった。このうち,小学校志望者が39名,中学校志望者が22名,高等学校志望者が24名であった。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きに同じであった。
結果と考察
参加者から得られたデータについて,SPSS Ver.23.0を用いて,以下の事項に関する一要因分散分析を行った。
1)児童・生徒観の比較検討
研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,希望校種による児童・生徒観の違いについて検討を加えた(結果はTABLE 1参照)。その結果,「自律性」因子でF値が有意であり(F(2,82)=5.13 p<.01),Tukey法による多重比較を行ったところ,中学校志望者の評定値が小学校志望者に比べて高かった。そこで,下位項目について検討を加えたところ,項目1「児童・生徒というものは,好奇心が強くて自発的に色々学んでいくものだ―児童・生徒というものは,外から色々刺激を与えないと,学んでいこうとはしないものだ」においてF値が有意であり(F(2,82)=8.15 p<.05),Tukey法による多重比較を行った結果,中学校志望者の評定値が小学校志望者および高等学校志望者に比べて高かった。また,項目2「児童・生徒は放っておかれると自分からすすんで活動するものだ―児童・生徒は,放っておかれると何もしないものだ」および項目7「児童・生徒は教師の目がなくても,やるべきことはきちんとやっていくものだ―児童・生徒は,教師がきちんと見ていないと,するべきこともしないものだ。」においてF値が有意傾向を示した。そのため,本研究における参加者の場合,中学校志望者の方が自律性についてより教師中心的な考え方であることが伺える。
2)学習指導行動の比較検討
希望校種によって重視する学習指導行動に違いが見られるかどうかを検討した。しかし,学習指導行動尺度および下位項目のいずれにおいてもF値は有意ではなかったことから,本研究における参加者のデータからは,希望校種によって重視する学習指導行動に違いは見出されなかった。
研究(1)(﨑濱・藤田・林,2015)では,現職教員と教員志望学生の児童・生徒観および学習指導行動の様相を検討するための尺度作成を,研究(2)(藤田・林・﨑濱,2015)では,現職教員と教員志望学生間での児童・生徒観および学習指導行動の違いの検討を,研究(3)(林・﨑濱・藤田,2015)では,小学校教員―中学校教員間の児童・生徒観および学習指導行動について検討を加えた。その結果,学習指導観,学習指導行動ともに,教員志望学生よりも教員の方が,中学校教員よりも小学校教員の方が児童・生徒中心的であることが明らかになった。
しかしながら,一連の研究においては,このような違いが大学生のうちから生じているのか,それとも教職に就くことによって生じるのかについては明らかにされなかった。この点を踏まえ,本研究では,教員養成系大学在籍学生に焦点を当て,希望する校種により,児童・生徒観および学習指導行動の重視度合いに何らかの違いが見られるのかどうかを検討した。
方 法
調査参加者 近畿地方の教員養成系大学に在籍する大学生85名(男性42名,女性43名,平均年齢は,男性が21.67歳,女性が20.09歳)であった。このうち,小学校志望者が39名,中学校志望者が22名,高等学校志望者が24名であった。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きに同じであった。
結果と考察
参加者から得られたデータについて,SPSS Ver.23.0を用いて,以下の事項に関する一要因分散分析を行った。
1)児童・生徒観の比較検討
研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,希望校種による児童・生徒観の違いについて検討を加えた(結果はTABLE 1参照)。その結果,「自律性」因子でF値が有意であり(F(2,82)=5.13 p<.01),Tukey法による多重比較を行ったところ,中学校志望者の評定値が小学校志望者に比べて高かった。そこで,下位項目について検討を加えたところ,項目1「児童・生徒というものは,好奇心が強くて自発的に色々学んでいくものだ―児童・生徒というものは,外から色々刺激を与えないと,学んでいこうとはしないものだ」においてF値が有意であり(F(2,82)=8.15 p<.05),Tukey法による多重比較を行った結果,中学校志望者の評定値が小学校志望者および高等学校志望者に比べて高かった。また,項目2「児童・生徒は放っておかれると自分からすすんで活動するものだ―児童・生徒は,放っておかれると何もしないものだ」および項目7「児童・生徒は教師の目がなくても,やるべきことはきちんとやっていくものだ―児童・生徒は,教師がきちんと見ていないと,するべきこともしないものだ。」においてF値が有意傾向を示した。そのため,本研究における参加者の場合,中学校志望者の方が自律性についてより教師中心的な考え方であることが伺える。
2)学習指導行動の比較検討
希望校種によって重視する学習指導行動に違いが見られるかどうかを検討した。しかし,学習指導行動尺度および下位項目のいずれにおいてもF値は有意ではなかったことから,本研究における参加者のデータからは,希望校種によって重視する学習指導行動に違いは見出されなかった。