The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(65-87)

ポスター発表 PB(65-87)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PB85] モチベーションに着目した導入教育(カリキュラム計画)の分析

新入生のモチベーションの向上を目指すために

土肥紳一1, 宮川治2, 今野紀子3 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学, 3.東京電機大学)

Keywords:モチベーション, SIEM, 導入教育

目   的
 本学情報環境学部は,2001年4月に開設した。学部の教育理念の一つに自主自立を掲げ,これに取り組んできた。必修科目を廃止し事前履修条件を設けたこと,学年制を廃止し単位制にしたこと,通年科目を廃止しセメスター制にしたこと,学費単位従量制を導入したこと,PBL教育に取り組んできたことなどが教育の特色として挙げられる。このような制度に基づき,新入生を対象とした導入教育を実施してきた。導入教育はカリキュラム計画とワークショップを開講した。カリキュラム計画は,卒業までの時間割を作成することを目的とした授業である。本論文では,カリキュラム計画の授業で新入生のモチベーションがどのように推移してきたのかを分析し,その結果を述べる。
方   法
 卒業までの時間割の作成には無数に存在し,手作業で完成することは難しい。これを支援する目的でダイナミックシラバスを開発した。ダイナミックシラバスは,シラバスの閲覧のみならず,シミュレーションを行いながら卒業までの時間割を作成できる機能がある。卒業に必要な科目を一括して選んだ後,事前履修条件に矛盾が無いことを確認しながら,セメスター毎に時間割を確定する。
 カリキュラム計画の授業の最後には,アンケート調査を実施している。アンケート項目の中には,2003年から受講者のモチベーションを測定できる項目を含めており,カリキュラム計画受講前後の変化を分析した。具体的な設問項目は,「卒業までの時間割作成について学習することは重要だと思いますか」,「卒業までの時間割作成についての知識・技術は身についていると思いますか」,「もっと卒業までの時間割作成について知識や技術を高めたいと思いますか」の3つである。この順に「重要度」,「現状認知度」,「期待度」と名付けている。なお,アンケートは1度だけ実施するため,カリキュラム計画の受講前については,「カリキュラム計画開始前,」の文言を各設問項目の前に追加し調査した。回答は「まったくそう思わない」「あまりそう思わない」「どちらともいえない」「ややそう思う」「強くそう思う」の5つを設け1から5の評価値とし,「重要度」と「期待度」の積をモチベーションと定義している。したがって,モチベーションは1から25の値に定量化される[1]。
結   果
 2003年から2016年までのモチベーションの推移をFigure 1に示す。「前」はカリキュラム計画受講前を,「後」は受講後を示している。「後」は「前」よりも全ての年度で高い値となった。過去14年間のアンケート回収件数は3036件あり,モチベーションの平均値は「前」が12.4,「後」が14.6,「後」の方が「前」よりも2.2向上していた。「前」と「後」の相関係数は0.896の強い正の相関があることも分かった。
考   察
 モチベーションの推移を分析した結果,すべての年度でカリキュラム計画受講後のモチベーションが向上しており,平均して2.2向上していた。このことは,カリキュラム計画の授業によって,自分の時間割を作成することの重要性が認識され,自主自立に寄与しているためと考えている。2006年は「前」「後」共に最も高い値となった。この年は2学科を1学科に統合し,3コース制にした年である。2008年は「前」「後」共に最も低い値となった。この年は定員を180名から240名に増やし,4コース制にした年である。これらの影響がモチベーションに影響した可能性が示唆される。
 カリキュラム計画は2016年4月が最後となった。本学は2017年4月に改組を行い,情報環境学部は発展的にシステムデザイン工学部に生まれ変わる。情報環境学部で培われた様々な教育の特色が,新学部でも継承されることを期待したいものである。
参考文献
[1] 導入教育におけるモチベーション分布の分析,土肥紳一,宮川 治,今野紀子,情報科学技術フォーラム,一般講演論文集第4分冊,pp.489-490,2009