[PC64] 緘黙児童に対する小学校教員の教育援助について(2)
緘黙類型と小学校教員の援助の課題
キーワード:場面緘黙児童, 小学校, 支援
問題と目的
場面緘黙児(以下緘黙児)への指導・援助の方法はまだ確立されておらず,教員達は様々な対応をしている(成瀬2015)。緘黙症状の改善のためには発話だけでなく感情や行動などに長期的にかかわっていくことが必要であり(河井2004,成瀬,2007),本研究では緘黙児のタイプ別に問題を分析し,小学校教員の指導援助の課題を検討する。
方 法
①調査時期と手続き:201X年7月~12月,A市公立小学校24校の教員(教諭, 講師)に対して質問紙配布による依頼, 後日回収, 有効回収率61.7%
②調査協力者:337名(女性232名,男性105名)平均年齢40.1歳(SD=13.10,内訳:20代97名,30代95名,40代25名,50代以上119名)
③調査内容:緘黙についての知識4項目,緘黙児の担当経験項目16項目,基本的特性:性別・年齢。
結 果
①緘黙児童の在籍状況 担任教諭239クラスの児童総数は6806名で,緘黙児の在籍は34名,女子21(4)名,男子13(2)名であった(()内は支援学級在籍数)。緘黙児の比率は0.5%,性別は女子61.8%男子38.2%であった。緘黙児担任経験教員より回答された緘黙児165ケースでの性別数は女子104名(63.0%),男子61名(37.0%)だった(表1・2)。
②緘黙児の認知 担任が緘黙児を認知するきっかけは,1年生は保護者と前の機関(保育所・幼稚園)からの連絡が多く,2年生以降は前担任からの引き継ぎが多かった。低学年では担任の気付きも多く,5・6年になってからも新たに認知されるケースも見られた (χ2(25)=56.344,p<.01) (表3)。
③緘黙児童への教育支援 緘黙類型 (ほとんど話さない緘黙タイプ,動かない緘動タイプ,話も行動も控えめな消極タイプ,少し話せて行動は出来る寡黙タイプの4類型,成瀬2015)毎に,担任が指導・支援した内容は,「保護者連携」,「クラス活動」,「友達作り」,「学習指導」の順に多かった。「友達作り」や「発話練習」,「イジメ対応」,「不登校対応」の指導・支援数は緘黙類型によって有意差が見られた(表4)。
④緘黙児の変化 緘黙タイプや緘動タイプは改善なしが消極タイプや寡黙タイプに比べて多く,有意差が見られた(χ2(6)=13.086,p<.05) (表5)。「友達作り」「クラス活動」別の改善・少し改善は,消極タイプ・寡黙タイプが他のタイプより多く,有意差が見られた(χ2(6)=15.252,p<.05)。教員の「緘黙児指導の自信」の分散分析では,寡黙タイプよりも緘黙タイプ・緘動タイプが有意に低かった(p<.05)。
考 察
緘黙症状は児童により大きな違いがあり,また,高学年になって緘黙の進むケースもあると考えられる。緘黙児童への早期の気付きとともに,個別の緘黙児のタイプに合った適切で具体的な教育援助の方法を検討していくことが今後の課題である。
場面緘黙児(以下緘黙児)への指導・援助の方法はまだ確立されておらず,教員達は様々な対応をしている(成瀬2015)。緘黙症状の改善のためには発話だけでなく感情や行動などに長期的にかかわっていくことが必要であり(河井2004,成瀬,2007),本研究では緘黙児のタイプ別に問題を分析し,小学校教員の指導援助の課題を検討する。
方 法
①調査時期と手続き:201X年7月~12月,A市公立小学校24校の教員(教諭, 講師)に対して質問紙配布による依頼, 後日回収, 有効回収率61.7%
②調査協力者:337名(女性232名,男性105名)平均年齢40.1歳(SD=13.10,内訳:20代97名,30代95名,40代25名,50代以上119名)
③調査内容:緘黙についての知識4項目,緘黙児の担当経験項目16項目,基本的特性:性別・年齢。
結 果
①緘黙児童の在籍状況 担任教諭239クラスの児童総数は6806名で,緘黙児の在籍は34名,女子21(4)名,男子13(2)名であった(()内は支援学級在籍数)。緘黙児の比率は0.5%,性別は女子61.8%男子38.2%であった。緘黙児担任経験教員より回答された緘黙児165ケースでの性別数は女子104名(63.0%),男子61名(37.0%)だった(表1・2)。
②緘黙児の認知 担任が緘黙児を認知するきっかけは,1年生は保護者と前の機関(保育所・幼稚園)からの連絡が多く,2年生以降は前担任からの引き継ぎが多かった。低学年では担任の気付きも多く,5・6年になってからも新たに認知されるケースも見られた (χ2(25)=56.344,p<.01) (表3)。
③緘黙児童への教育支援 緘黙類型 (ほとんど話さない緘黙タイプ,動かない緘動タイプ,話も行動も控えめな消極タイプ,少し話せて行動は出来る寡黙タイプの4類型,成瀬2015)毎に,担任が指導・支援した内容は,「保護者連携」,「クラス活動」,「友達作り」,「学習指導」の順に多かった。「友達作り」や「発話練習」,「イジメ対応」,「不登校対応」の指導・支援数は緘黙類型によって有意差が見られた(表4)。
④緘黙児の変化 緘黙タイプや緘動タイプは改善なしが消極タイプや寡黙タイプに比べて多く,有意差が見られた(χ2(6)=13.086,p<.05) (表5)。「友達作り」「クラス活動」別の改善・少し改善は,消極タイプ・寡黙タイプが他のタイプより多く,有意差が見られた(χ2(6)=15.252,p<.05)。教員の「緘黙児指導の自信」の分散分析では,寡黙タイプよりも緘黙タイプ・緘動タイプが有意に低かった(p<.05)。
考 察
緘黙症状は児童により大きな違いがあり,また,高学年になって緘黙の進むケースもあると考えられる。緘黙児童への早期の気付きとともに,個別の緘黙児のタイプに合った適切で具体的な教育援助の方法を検討していくことが今後の課題である。