[PD88] ASD傾向学生のための就業力尺度の作成(2)
尺度の再検査信頼性と妥当性の検証
キーワード:就業力尺度, 信頼性, 妥当性
目 的
大学生の中には発達障害などの診断の有無にかかわらず,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)傾向を持つ者がおり,その特徴ゆえに就職活動およびその後の就業継続において困難を示す学生がいる。一連研究(1)において,これらの学生をスクリーニングし支援する目的で就業力尺度の作成を試み検証を行ってきた。
本研究では,一連研究(1)で明らかになった「就業力」およびその下位尺度である「長所や適性を把握する力」,「就労をイメージする力」,「前に踏み出す力」の再検査信頼性を検証することを目的とした。また,「就業力尺度」の基準関連妥当性を検証することを目的とした。
方 法
調査時期と対象:1回目の調査は2014年12月に大学1~4年生157名(男子88名,女子69名)を対象とし実施した。2回目の調査は2015年6月に大学1~4年生318名(男子153名,女子164名,性別不明者1名)を対象とし実施した。
調査内容:再検査信頼性の検証には,一連研究(1)結果をもとに抽出された就業力尺度21項目(下位尺度「長所や適正を把握する力」7項目,「就労をイメージする力」7項目,「前に踏み出す力」7項目)を用いた。また,基準関連妥当性を検証するために,就業力尺度21項目と同時に職業レディネス尺度(若林ら 1983)21項目を用いた。回答は「あてはまる」から「あてはまらない」までの4件法で求めた。
結 果
1.就業力尺度の再検査信頼性
就業力尺度全体および下位尺度について検査・再検査間の相関係数を算出した(Table 1)。その結果,相関係数は就業力尺度全体としては.44,長所や適性を把握する力は.21,就労をイメージする力は.41,前に踏み出す力は.51であった。就業力全体において1回目調査・2回目調査間に有意な正の相関がみられた。また,下位尺度の長所や適性を把握する力,就労をイメージする力においても同様に有意な正の相関が見られた。
2.就業力尺度の妥当性
基準関連妥当性を検討するため,1回目の調査対象者における就業力尺度全体および下位尺度と職業レディネス尺度との相関係数を算出した(Tabl 2)。その結果,就業力尺度全体および下位尺度と職業レディネス間に概ね有意な正の相関がみられた。
考 察
本結果より,就業力尺度全体においては再検査信頼性における十分な相関係数が得られた。また,就業力尺度と職業レディネス尺度においても十分な相関係数が得られた。すなわち,この就業力尺度は再検査信頼性および基準関連妥当性のある尺度であるということが明らかになった。今後は,この就業力尺度を見通し力尺度(肥田・堀・鈴木,2015)と併用することにより,ASD傾向をもつ学生をスクリーニングし,彼らのニーズを把握するとともに高等教育機関におけるこのような大学生に対する就労および就労継続に向けた効果的な支援プログラムの開発と実施を検討していく必要がある。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C, 25381147)の助成を受けたものです。
大学生の中には発達障害などの診断の有無にかかわらず,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)傾向を持つ者がおり,その特徴ゆえに就職活動およびその後の就業継続において困難を示す学生がいる。一連研究(1)において,これらの学生をスクリーニングし支援する目的で就業力尺度の作成を試み検証を行ってきた。
本研究では,一連研究(1)で明らかになった「就業力」およびその下位尺度である「長所や適性を把握する力」,「就労をイメージする力」,「前に踏み出す力」の再検査信頼性を検証することを目的とした。また,「就業力尺度」の基準関連妥当性を検証することを目的とした。
方 法
調査時期と対象:1回目の調査は2014年12月に大学1~4年生157名(男子88名,女子69名)を対象とし実施した。2回目の調査は2015年6月に大学1~4年生318名(男子153名,女子164名,性別不明者1名)を対象とし実施した。
調査内容:再検査信頼性の検証には,一連研究(1)結果をもとに抽出された就業力尺度21項目(下位尺度「長所や適正を把握する力」7項目,「就労をイメージする力」7項目,「前に踏み出す力」7項目)を用いた。また,基準関連妥当性を検証するために,就業力尺度21項目と同時に職業レディネス尺度(若林ら 1983)21項目を用いた。回答は「あてはまる」から「あてはまらない」までの4件法で求めた。
結 果
1.就業力尺度の再検査信頼性
就業力尺度全体および下位尺度について検査・再検査間の相関係数を算出した(Table 1)。その結果,相関係数は就業力尺度全体としては.44,長所や適性を把握する力は.21,就労をイメージする力は.41,前に踏み出す力は.51であった。就業力全体において1回目調査・2回目調査間に有意な正の相関がみられた。また,下位尺度の長所や適性を把握する力,就労をイメージする力においても同様に有意な正の相関が見られた。
2.就業力尺度の妥当性
基準関連妥当性を検討するため,1回目の調査対象者における就業力尺度全体および下位尺度と職業レディネス尺度との相関係数を算出した(Tabl 2)。その結果,就業力尺度全体および下位尺度と職業レディネス間に概ね有意な正の相関がみられた。
考 察
本結果より,就業力尺度全体においては再検査信頼性における十分な相関係数が得られた。また,就業力尺度と職業レディネス尺度においても十分な相関係数が得られた。すなわち,この就業力尺度は再検査信頼性および基準関連妥当性のある尺度であるということが明らかになった。今後は,この就業力尺度を見通し力尺度(肥田・堀・鈴木,2015)と併用することにより,ASD傾向をもつ学生をスクリーニングし,彼らのニーズを把握するとともに高等教育機関におけるこのような大学生に対する就労および就労継続に向けた効果的な支援プログラムの開発と実施を検討していく必要がある。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C, 25381147)の助成を受けたものです。