[PE02] 大学生の正課外活動と成長(2)
正課外活動外との関連付け,他者との交流と汎用的技能との関連
Keywords:正課外活動, 大学生, 正課の学習
問題・目的
正課外活動への参加は学生の学びや発達に寄与することが指摘されており(Kuh,1995;山田・森,2010),近年では,多くの大学が学生の正正課外活動支援に取り組んでいる。しかしそれらに関する実証的知見はまだ少ない現状にあり,その蓄積が求められている。本研究では,正課外活動の指標として,正課外活動の内容と正課の学習や日常生活,自己との関連付けの程度,正課外活動における他者との交流を,学びや発達の指標として汎用的技能を取り上げ,各々の関連を学年別に検討することを目的とする。
方 法
1.調査協力者および時期:近畿地方の12大学,中国地方の2大学,中部地方の1大学の大学生1,177名。ただし,25歳以上の者,大学院生,不適切な回答をしている者を省いた1,136名を分析対象(男性490名,女性645名,不明1名,18~24歳,平均年齢19.80歳,SD=1.11)とした。調査時期は,2015年12月~2016年1月であった。2.測定変数:(1)正課外活動と正課の学習および自己や日常生活との関連付けを問う項目(a)正課の学習との関連付け3項目―正課外活動の内容と正課の学習がどの程度関連していると感じるかについて尋ねた。(b)日常生活との関連付け2項目―正課外活動の内容と日常生活がどの程度関連していると感じるかについて尋ねた。(c)自己との関連付け3項目―正課外活動の経験によって自己を振り返ることがあるかどうかについて尋ねた。[5件法](2)正課外活動における他者との関わりの程度を問う項目7項目―正課外活動においてどの程度他者との交流があるかについて対象別に尋ねた。自分が所属する大学の大学生・大学院生,自分が所属する大学の教職員,自分が所属する大学以外の大学生・大学院生,社会人,高齢者,中学生・高校生,幼児・小学生についてそれぞれ尋ねた。[4件法](3)大学生の汎用的技能に関する項目群(山田・森,2010)―全8下位尺度のうち,「社会的関係形成力(関係)」6項目,「持続的学習・社会参画力(持続)」6項目,「知識の体系的理解力(体系)」5項目,「自己主張力(主張)」4項目の4下位尺度を用いた。なお,原典では授業全体,授業以外での活動のそれぞれで身についたと感じる程度を尋ねているが,表現を修正した上で,現在それらの技能をもつかどうかについて尋ねる形式とした。[4件法]
結果・考察
正課の学習との関連付け,日常生活との関連付け,自己との関連付け,正課外活動における他者との関わりの程度と汎用的技能に関する項目群との相関係数を学年別に算出した。なお,他者との関わりの程度については,学内の他者,学外の他者それぞれとの交流を分けた上で分析を行った。その結果,3年生における日常と「持続」,自己と「持続」,4年生における学外他者との関わりと「持続」との間に中程度の正の関連がみられた。その他,広い学年にわたって関連付けと「持続」との間に弱い正の関連がみられた。複数の場面における経験や学習を結び付けることが大学生の成長に寄与することはこれまでにも示されているが(河井,2012),学生のさまざまな能力に一様に寄与するわけではないことが示された。他者との関わりについては,一部の学年における一部の領域の成長とは関連していたものの,ほとんど関連がみられなかった。他者との交流が,他者との関係を形成する力を含む「関係」と関連しなかったことについては,注目に値する。今後は,正課外活動の内容や関連付けの中身,交流の様相について詳細に検討することが必要であると考えられる。
正課外活動への参加は学生の学びや発達に寄与することが指摘されており(Kuh,1995;山田・森,2010),近年では,多くの大学が学生の正正課外活動支援に取り組んでいる。しかしそれらに関する実証的知見はまだ少ない現状にあり,その蓄積が求められている。本研究では,正課外活動の指標として,正課外活動の内容と正課の学習や日常生活,自己との関連付けの程度,正課外活動における他者との交流を,学びや発達の指標として汎用的技能を取り上げ,各々の関連を学年別に検討することを目的とする。
方 法
1.調査協力者および時期:近畿地方の12大学,中国地方の2大学,中部地方の1大学の大学生1,177名。ただし,25歳以上の者,大学院生,不適切な回答をしている者を省いた1,136名を分析対象(男性490名,女性645名,不明1名,18~24歳,平均年齢19.80歳,SD=1.11)とした。調査時期は,2015年12月~2016年1月であった。2.測定変数:(1)正課外活動と正課の学習および自己や日常生活との関連付けを問う項目(a)正課の学習との関連付け3項目―正課外活動の内容と正課の学習がどの程度関連していると感じるかについて尋ねた。(b)日常生活との関連付け2項目―正課外活動の内容と日常生活がどの程度関連していると感じるかについて尋ねた。(c)自己との関連付け3項目―正課外活動の経験によって自己を振り返ることがあるかどうかについて尋ねた。[5件法](2)正課外活動における他者との関わりの程度を問う項目7項目―正課外活動においてどの程度他者との交流があるかについて対象別に尋ねた。自分が所属する大学の大学生・大学院生,自分が所属する大学の教職員,自分が所属する大学以外の大学生・大学院生,社会人,高齢者,中学生・高校生,幼児・小学生についてそれぞれ尋ねた。[4件法](3)大学生の汎用的技能に関する項目群(山田・森,2010)―全8下位尺度のうち,「社会的関係形成力(関係)」6項目,「持続的学習・社会参画力(持続)」6項目,「知識の体系的理解力(体系)」5項目,「自己主張力(主張)」4項目の4下位尺度を用いた。なお,原典では授業全体,授業以外での活動のそれぞれで身についたと感じる程度を尋ねているが,表現を修正した上で,現在それらの技能をもつかどうかについて尋ねる形式とした。[4件法]
結果・考察
正課の学習との関連付け,日常生活との関連付け,自己との関連付け,正課外活動における他者との関わりの程度と汎用的技能に関する項目群との相関係数を学年別に算出した。なお,他者との関わりの程度については,学内の他者,学外の他者それぞれとの交流を分けた上で分析を行った。その結果,3年生における日常と「持続」,自己と「持続」,4年生における学外他者との関わりと「持続」との間に中程度の正の関連がみられた。その他,広い学年にわたって関連付けと「持続」との間に弱い正の関連がみられた。複数の場面における経験や学習を結び付けることが大学生の成長に寄与することはこれまでにも示されているが(河井,2012),学生のさまざまな能力に一様に寄与するわけではないことが示された。他者との関わりについては,一部の学年における一部の領域の成長とは関連していたものの,ほとんど関連がみられなかった。他者との交流が,他者との関係を形成する力を含む「関係」と関連しなかったことについては,注目に値する。今後は,正課外活動の内容や関連付けの中身,交流の様相について詳細に検討することが必要であると考えられる。