The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(65-88)

ポスター発表 PE(65-88)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PE79] 発達障害における医療と教育に関する小学校教師の意識

角南なおみ (鳥取大学)

Keywords:発達障害, 医療, 教育

問   題
 発達障害傾向を有する子どもへの対応は学校現場で喫緊の課題となっている。通常学級に在籍し特別な教育的支援を必要とする子どもの割合は,小学生のみで7.7%を示した(文部科学省,2012)。それにともない教師は医療の必要性を感じ(堀ら,2004),受診後には学校と医療機関との連携が求められる現状がある(文部科学省,2003)。だが,これまで医療と教育に関する研究は少ない。そこで,本研究は,小学校教師に対して質問紙調査を実施し,発達障害における医療と教育に対する教師の意識傾向を子どもの対応に関する困難感も含めた関連から明らかにすることを目的とする。
方   法
 公立小学校教師509名に対して,各学校に郵送で質問紙を送付し,実施後筆者に返送を依頼した。質問紙の構成は以下の3つである。「発達障害における医療と教育に関する意識」:筆者の研究結果に基づいて作成した(7.医療からの診断にもとづいて指導をした方がよい等)28項目(4件法)。「発達障害の対応に関する意識」:渡部・武田(2008)を参考にした28項目(11.学校全体で支援していく雰囲気がある等)(4件法)。「対応の困難感」:発達障害傾向のある子どもへの対応の困難感に関する1項目(4件法)。
結   果
 質問紙回収率94%(483名),平均年齢43.9歳(SD=1.01),平均勤続年数20.4年(SD=11.12)であった。欠損したデータを除いた366名を分析対象にした。各尺度に対し斜交回転による因子分析を行った結果,固有値の衰減状況および因子の解釈可能性から各尺度とも4因子が妥当と考えられた。「発達障害における教育と医療に関する意識」の各因子は「医療機関および保護者との連携の困難感」,「基本的知識の保持」,「医療的知識の不足」,「医療受診の必要性」と命名した。次に,「発達障害の対応に関する意識」は,各因子「発達障害理解に基づいた対応」「肯定的な支援の模索」「集団における支援の不安」「学校体制での支援」と命名した。その後,8因子と1項目の合計9変数に対しピアソンの積率相関係数を算出した。更に各変数の影響を除去した関係性を確認するため偏相関係数を算出した(Table 1)。
考   察
 発達障害における医療と教育に関する教師の意識について,2尺度8因子と子どもの対応の困難感を尋ねた1項目の変数の相関/偏相関分析を行った。比較的強い相関があったのが,1-3(.59**),1-7(.55**)等であった。医療機関や保護者との連携に困難感を抱えているほど,医療的知識の不足と集団における支援への不安が増加する傾向がみられた。これにより,医療機関と保護者との連携は教師の医療に関する知識獲得の意欲や機会を増加させ,教師が子どもへの支援の不安を間接的に軽減する手がかりになることが示唆された。次に,9「対応の困難感」は,1,3,4,7において1%水準で正の相関があったが,偏相関係数では,1,3で有意確率と相関がみられなかった。この結果から,子どもの対応に困難感を抱えている教師は医療や保護者との連携にも困難感を抱えているように見えるが,実際にはその困難感は教室内での子ども対応に限られている場合や連携の困難感との間に別の変数が介在している可能性も考えられる。今後,このような媒介変数も含めた検討を行っていく必要があるだろう。