日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH15] 年齢の異なる学生間における対人的迷惑行為実行について

行為者と行為の受け手の年齢差と心理的余裕尺度の観点からの検討

高野裕乃 (北海道大学教育学院)

キーワード:対人的迷惑行為, 心理的余裕

問題と目的
 迷惑行為は主に社会的迷惑行為と対人的迷惑行為の二つに分類されており(斎藤,1999; 吉田ら,1999),吉田ら(1999)では,社会的迷惑行為を「ルール・マナー違反」行為と「周りにいる人との調和を乱す」行為に大きく分類している。後に小池・吉田(2005)は後者の迷惑行為に着目し,それらの行為を対人的迷惑行為と定義した。
 本研究では,年齢の異なる対人的迷惑行為の実行について迷惑行為をする者と行為の受け手の年齢差と心理的余裕の観点から,迷惑行為実行の度合いに有意な差が生じるか検討した。
方   法
調査協力者と調査時期
 札幌市に在住する大学1年生~大学院生202名(男性92名,女性110名)の学生を対象とした質問紙調査を行った。調査時期は2015年11月中旬~11月下旬であった。
調査内容
 ①デモグラフィック項目:性別と学年
 ②対人的迷惑行為尺度 予備調査でリストアップされた項目を用い,独自に作成した。「自分より年上の相手」または「自分より年下の相手」に対してどれくらいの頻度で迷惑行為を行うかについて4件法で回答を求めた。
 ③心理的余裕尺度 高島・五十嵐・平尾・清水・中村(2004)から1因子を各3項目づつの計3因子9項目(遊楽性・計画性に基づく心理的余裕,時間的環境的余裕,有能性に基づく心理的余裕)を用いた。回答形式も7件法から5件法へと変更した。
結果と考察
 尺度構成にあたり,年上の相手への対人的迷惑行為尺度12項目について因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った結果,3因子解が得られた(Table 1)。第1因子は,「自己中心的行動」因子と命名した。第2因子は,「過度な悪ふざけ」因子と命名した。第3因子は,「連絡上のトラブル」因子と命名した。年下の相手への対人的迷惑行為尺度についても同様の結果が得られたため,因子名も同様のものを用いた。各因子の信頼性係数を算出したところ,一定の内的整合性が確認された(α=.55~.81)。
 また,自己中心的行動,過度な悪ふざけ,連絡上のトラブル3つの因子ごとに自分より年上の相手の場合と年下の相手の場合でそれぞれ算術平均を算出し対応のある平均値差の検定を行った結果,「過度な悪ふざけ」で有意な差(t(199)=2.05,p<.05)が見られた。
 学年の違いによる心理的余裕尺度と対人的迷惑行為の相関(Table 2)では,年上相手への迷惑行為について,上級生の回答の過度な悪ふざけと有能性に基づく心理的余裕の間に負の有意な相関が見られた(r=-.214,p<.05)。また,年下相手への迷惑行為について,上級生の回答の過度な悪ふざけと有能性に基づく心理的余裕の間に負の有意な相関が見られた(r=-.312,p<.001)。
 調査で得られた結果から迷惑行為の実行に関して,相手が自分より年上か年下かによって生じる対応の違いや,下級生と上級生の私生活の違いによる心理的な余裕の差が関係していることが推測される。また,対人的迷惑行為のうち過度な悪ふざけ因子でのみ負の相関が見られた点について,残り二つの因子と比較した際の迷惑行為としての性質の違いが結果に影響を与えている可能性が考えられる。