日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH32] 「名護市学習支援教室ぴゅあ」の心理的効果

ソーシャルサポートと心理的居場所感と自己調整学習方略の関係性

城戸海輝 (愛媛大学大学院)

キーワード:名護市学習支援教室ぴゅあ, 心理的居場所感, ソーシャルサポート

目   的
 本研究では,生活困窮世帯の中学生を対象とした学習支援の場である「名護市学習支援教室ぴゅあ」において,その対象となる中学生に視点を当て,横断的な心理的効果を明らかにし,今後の適切な支援方法について言及することを目的とした。
仮   説
 本研究では以下の仮説を立てた。
 仮説1 教室参加前(1回目)に比べ参加後(2回目)方が,参加者のソーシャルサポート,心理的居場所感,自己調整学習方略においての得点が高くなるだろう。
 仮説2 参加者がソーシャルサポートを受け取るほど,心理的居場所感が高まり,心理的居場所感が高まるほど,自己調整学習方略が身につくであろう。
研究方法
 研究対象 「名護市学習支援教室ぴゅあ」に通う中学生3学年合わせて60名のうち,教室開始前(2015年10月)と開始後(2015年12月)の2回の調査とも回答した者39名を分析対象とした。
 調査方法 以下の尺度や質問項目を用いて調査を行った。①学習支援教室におけるソーシャルサポート尺度(久田・千田・箕口(1989)「学生用ソーシャルサポート尺度」を修正,14項目,3段階評定),②中学生用自己調整学習方略尺度(藤田・岩田(2002)「自己調整学習方略尺度」を修正,10項目,4段階評定),③名護市学習支援教室ぴゅあにおける心理的居場所感尺度(則定(2006)「青年版心理的居場所感尺度」を修正,11項目,4段階評定)
結   果
 仮説1の検討 教室参加前(1回目)及び参加後(2回目)の測定時期を独立変数として,ソーシャルサポート(情緒的,手段的,情報的,評価的サポートの4因子)及び心理的居場所感(安心化,被受容感,本来感,役割感の4因子),自己調整学習方略(1因子)をそれぞれ従属変数とした対応のあるt検定を行った結果,手段的サポートにおいては1回目  (M =2.68)と2回目(M =2.90)の得点の間に有意な差が見られたが(t(29)=2.36,p <.05),その他では有意な差は見られなかった。教室参加前に比べて参加後の方が,手段的サポートが大であったため,仮説1は部分的に支持されたといえる。
 仮説2の検討 心理的居場所感の変化得点に対するソーシャルサポートの変化得点の影響を検討するために重回帰分析を行った。その結果,心理的居場所感は本来感,被受容感,安心感の3つの変化得点において情緒的サポートはそれぞれと有意な正の標準偏回帰係数を示した(それぞれΒ=.762,p <.05,Β=.720,p <.05,Β=.812,p <.01)。つまり,情緒的サポートを多く認識するほど,本来感,被受容感,安心感が高まることが明らかになった。次に,自己調整学習方略の変化得点に対する心理的居場所感及びソーシャルサポートの変化得点の影響を検討するために重回帰分析を行った。その結果,被受容感(β=.477,p <.01),手段的サポート(β=.625,p <.01)の各変化得点で有意な標準偏回帰係数が得られた。つまり,被受容感や手段的サポートが高まるほど,自己調整学習方略が身につくことが明らかになった。以上の結果から,仮説2は部分的に支持されたといえる。
考   察
 結果より「名護市学習支援教室ぴゅあ」の心理的効果について,ソーシャルサポートの一部のみ効果が見られた。また,同学習支援教室での適切な支援方法については,自己調整学習方略の使用頻度を高めることに注目すると,ソーシャルサポートにおいて手段的サポートを充実させる方法,またはソーシャルポートにおいて情緒的サポートを充実させ,心理的居場所感の被受容感を高めることによる方法が有効に働くことが明らかになった。