日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH55] SNSの利用目的とインターネット上での居場所感に関する研究

藤野千種1, 齊藤誠一2 (1.神戸大学大学院, 2.神戸大学)

キーワード:SNS, 居場所

問題と目的
 近年スマートフォンの急速な普及によって,SNS等を介した人間関係はより身近になったが,インターネット上独自の人間関係に着目した研究は少ない。本研究では,居場所という観点から,SNSを介したインターネット上の人間関係とSNSの利用目的との関連について検討し,その特徴を明らかにすることを目的とする。
方   法
調査参加者 130名の回答のうち有効回答103名(男性23名,女性80名,M=21,86,SD=3.32)。
調査内容 以下の尺度からなる質問フォームをweb調査にて回収した。
①基礎項目 年齢,性別,職業
②居場所感尺度(石本,2006) 「自己有用感」,「本来感」の2因子13項目からなり,現実場面とネット上それぞれについて5件法で尋ねた。
③SNSの利用状況 利用しているSNSの種類(自由回答),交流の相手(3項目),利用目的(9項目)について尋ねた。
結   果
 居場所感尺度のうち,現実場面を想定した得点を現実居場所感得点,現実自己有用感得点,現実本来感得点とした。またネット場面を想定した得点をネット居場所感得点,ネット自己有用感得点,ネット本来感得点とした。SNSの利用状況について,「現実の知り合いと連絡をとるために利用する」などを連絡手段型,「面識のない人と何らかのコミュニケーションをとるために利用する」などを発信型,「情報収集などのために利用する」などを受信型とした。現実居場所感およびネット居場所感と利用目的の関連では,ネット自己有用感と発信型,現実自己有用感と連絡手段型の間に正の有意な相関が見られた(Table 1)。また有意ではないが,ネット自己有用感,ネット本来感と連絡手段型,受信型に弱い負の相関傾向,現実自己有用感と発信型に弱い負の相関傾向,現実自己有用感と受信型に弱い正の相関傾向が見られた。さらに利用目的が居場所感に与える影響の因果関係について検討するため重回帰分析を行った(Table 2)。その結果,発信型がネット自己有用感に対して有意な標準偏回帰係数を示した。このことから,発信型の利用目的はネットにおける自己有用感を高めることがわかった。また,発信型の利用目的は現実の自己有用感を低める傾向があり,連絡手段型,受信型の利用目的はネット自己有用感,ネット本来感を低めるが,現実の自己有用感を高める傾向があることが示唆された。
考   察
 本研究では,インターネット上での居場所とSNSの利用目的との関連について検討した。その結果,発信型,連絡手段型・受信型の利用目的が,現実とネットの居場所感に影響を及ぼすことが示唆された。このことから,現実とネットでは心理的な居場所を高める方法が異なり,その機能も異なることが考えられる。また,本研究では居場所感に影響する要因として利用目的をとりあげたが,今後,利用目的以外の要因を検討するとともに,居場所感以外の観点からもインターネット上の人間関係について検討していくことが必要であると考えられる。