日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

2017年10月7日(土) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PB75] 専門的ヘルパーはどのような学習支援を行っているのか

教育現場における中学・高校生への支援の内容

児玉裕巳1, 外山美樹2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:中学・高校生, 専門的ヘルパー, 学習支援

問題と目的
 中学・高校生の学習の悩みは他の悩みより大きく多岐に渡り(内閣府,2016),また学習方略に着目した認知カウンセリング(市川,1998)や,知能検査の結果を用いて生徒の認知特性に合わせた支援,学校心理学(石隈,1999)の枠組からの支援など,様々な理論と方法が提案されてきた。一方で学習の悩みは心理的問題であるにも関わらず,スクールカウンセラー(SC)や相談員など専門的ヘルパーが十分に対応できておらず,また学習支援のために必要な理論や方法を系統だって学んでいない現状があると考えられる。そこで本研究では,学校や教育センターなどの教育現場で専門的ヘルパーが実際にどのような学習支援を行っているかを調べることを目的とした。
方   法
 SCや相談員9名(女性8名,男性1名。平均経験年数9.2年)に個別の半構造化面接を行った(平均約58分)。質問内容は「学習の悩みにはどのようなものがありましたか」「どのような対応をしましたか」「うまく行ったケースはどのようなものでしたか」などであった。面接内容は全て逐語録にまとめ,「サポートの種類」「アセスメントの内容」「専門的ヘルパーが着目する態度(認知・情緒・行動の3側面)」などについて分析した。
結果と考察
 専門的ヘルパーは,不登校・別室登校・特別支援などへの対応の中で学習または進路の相談を受け支援を行っていることがわかった。
サポートの種類 情緒的・情報的・評価的・道具的サポートに分類した(Table 1)。評価的サポートが他の3つに比べ極端に少なく,専門的ヘルパーは学習の問題や困難を評価する視点が少ないことが示唆された。また見出された評価的サポートは学習以外の相談にも当てはまると考えられた。
アセスメントの内容 専門的ヘルパーのアセスメントの内容は「本人の多様な特性(知能・認知特性・発達・身体・心理)」「困難の内容と程度」「wantsとneeds」「行動の実現可能性」「健康面」「進路先や職業との適性」などであった。生徒の学習について,教師が主にパフォーマンスの部分(目に見える成績・学習行動・態度など)に注目すると考えられることに比べて,専門的ヘルパーは多様な観点からアセスメントしていることが示唆された。またこの多様性は,学習の相談に限らずあらゆる相談(友達関係・家族関係・自己性格など)の際にも見られると考えられた。
その他 専門的ヘルパーは生徒の学習への「態度」について,「情緒面」に比べて「認知面」「行動面」への着目が少ないことがわかった。