3:30 PM - 5:30 PM
[PC42] 閲覧時の教示方法が後の検索行動に与える影響(1)
閲覧時間,閲覧ページ再認,サイト属性予測
Keywords:情報検索, 情報教育, 教育方法
問 題
検索エンジンに慣れていると考えられる現在の大学生だが,検索結果の上位数件のサイトを閲覧するだけの粗略な検索しか行えない学生が少なくない。本研究の目的は,情報検索に未習熟な学生を対象にした,検索過程の認知的な情報処理負担を軽減しながら行う情報検索教育方法の策定である。情報検索は,キーワード入力等により検索結果を得る迄と,検索結果を閲覧する二過程に分けられる。後半の閲覧過程において,一般的な検索エンジンでは,検索結果として約2,000文字前後の情報(約10件のサイト名,ページ内容の抜出説明等)が提示される。人間が一度に処理できる情報は限られ,特に検索結果の閲覧に習熟していない検索者は,表示された内容を理解するだけでも負荷が大きいと考えられる。
本研究の教育対象は情報検索の全過程であるが,本実験では閲覧過程のみに注目し,学習目的の模擬閲覧課題を行った。学習目的の検索では,閲覧しているサイトの属性(運営者,情報提供者等)を考え,情報の取捨選択を行うことが重要である。課題を通じ,閲覧作業の流れの中で自然にサイト属性に注目させる学習方法の有効性を検証した。仮説は,閲覧作業時に段階的に教示を与える逐次提示の方が,検索前に一括して注意点を教示するより学習が定着しやすいというものであった。
方 法
参加者:大学生51名(男性36:女性15,平均年齢19.59, SD1.3)
要因:教示提示方法(遂次提示群25名,一括提示群26名)
材料:ノートPC,実験用アプリケーション,課題4用質問紙等
手続きと課題
実験者が実験手順を説明し,練習課題を行った後,参加者は画面のインストラクションを読みながら4つの模擬閲覧課題を一人で行った。検索目的は全て「授業で課題として出されたレポート作成のための調べもの」であった。各課題の検索結果として,実在するサイトを8つ提示した。課題1,3,4は全ての参加者が同一の条件で行い,指定された数のサイトを開いて内容を読んだ。課題2のみ,サイト閲覧前後に行った教示提示方法が群により異なった。遂次提示群に対しては,学習のために一般検索エンジンで情報収集を行う際の注意点を,一部質問形式を用いながら閲覧時に段階的に提示した。特に,サイト属性と掲載内容の予測については,参加者がサイトをクリックして該当ページが開く前と後に質問形式で予測させた。対して一括提示群には,同一の教示を検索結果一覧が表示される前にまとめて読ませた。
課題1・2…緑茶orコーヒーの健康への影響(3サイト閲覧可)
課題3…グルコサミンの健康への影響(3サイト閲覧可)
課題4…建物に太陽光発電設備を設ける是非(必ず3サイト閲覧)
全課題終了後,参加者は課題4に関する質問紙(閲覧サイト再認,サイトを開く前に予測したサイト属性等)に答えた。
結果と考察
課題1,3,4のページ閲覧時間(ページが開かれていた総時間),検索結果閲覧時間(サイト名,ページ内容の抜出説明等を読んでいた時間)について二要因分散分析(要因1教示提示方法,要因2課題)を行った。どちらの閲覧時間についても課題の主効果のみ確認された(ページ閲覧: F(2,98)= 19.21, p<.01,検索結果閲覧: F(2,98)= 26.39,p<.01)。多重比較の結果,どちらの閲覧時間についても課題1と課題3,4の閲覧時間平均に差があり,課題1のみが他と比べて長かった(Table 1)。模擬閲覧後に行った課題4についての質問紙から,各群の閲覧ページの再認率,属性予測正答率を比較した。再認率,正答率を角変換し,各群の平均値についてt検定を行った結果,サイト再認率には差がなかったが,サイト属性予測については遂次提示群の正答率が一括提示群より有意に高かった(t=-2.17, p<.05)(Figure 1)。
結果は,概ね仮説を支持していると言える。両群とも課題3以降,参加者のページ閲覧時間,検索結果閲覧時間が短くなる傾向があった。これは,課題に対する慣れと疲労の影響だと考えられる。課題4について,各閲覧時間は両群とも同じであったが,質問紙の結果から,閲覧時に行ったサイト属性予測に違いがあったと考えられる。課題2で教示を遂次提示した方が,一括提示と比べて後の課題の閲覧時にサイト属性判断が正確になると確認できた。実際にページを開いて見る前後に,遂次的に注目するべきことを提示して考えさせた方が,一括して提示するより学習が定着しやすいと考えられる。
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本研究は科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究16K13475)による助成を受けて行った。
検索エンジンに慣れていると考えられる現在の大学生だが,検索結果の上位数件のサイトを閲覧するだけの粗略な検索しか行えない学生が少なくない。本研究の目的は,情報検索に未習熟な学生を対象にした,検索過程の認知的な情報処理負担を軽減しながら行う情報検索教育方法の策定である。情報検索は,キーワード入力等により検索結果を得る迄と,検索結果を閲覧する二過程に分けられる。後半の閲覧過程において,一般的な検索エンジンでは,検索結果として約2,000文字前後の情報(約10件のサイト名,ページ内容の抜出説明等)が提示される。人間が一度に処理できる情報は限られ,特に検索結果の閲覧に習熟していない検索者は,表示された内容を理解するだけでも負荷が大きいと考えられる。
本研究の教育対象は情報検索の全過程であるが,本実験では閲覧過程のみに注目し,学習目的の模擬閲覧課題を行った。学習目的の検索では,閲覧しているサイトの属性(運営者,情報提供者等)を考え,情報の取捨選択を行うことが重要である。課題を通じ,閲覧作業の流れの中で自然にサイト属性に注目させる学習方法の有効性を検証した。仮説は,閲覧作業時に段階的に教示を与える逐次提示の方が,検索前に一括して注意点を教示するより学習が定着しやすいというものであった。
方 法
参加者:大学生51名(男性36:女性15,平均年齢19.59, SD1.3)
要因:教示提示方法(遂次提示群25名,一括提示群26名)
材料:ノートPC,実験用アプリケーション,課題4用質問紙等
手続きと課題
実験者が実験手順を説明し,練習課題を行った後,参加者は画面のインストラクションを読みながら4つの模擬閲覧課題を一人で行った。検索目的は全て「授業で課題として出されたレポート作成のための調べもの」であった。各課題の検索結果として,実在するサイトを8つ提示した。課題1,3,4は全ての参加者が同一の条件で行い,指定された数のサイトを開いて内容を読んだ。課題2のみ,サイト閲覧前後に行った教示提示方法が群により異なった。遂次提示群に対しては,学習のために一般検索エンジンで情報収集を行う際の注意点を,一部質問形式を用いながら閲覧時に段階的に提示した。特に,サイト属性と掲載内容の予測については,参加者がサイトをクリックして該当ページが開く前と後に質問形式で予測させた。対して一括提示群には,同一の教示を検索結果一覧が表示される前にまとめて読ませた。
課題1・2…緑茶orコーヒーの健康への影響(3サイト閲覧可)
課題3…グルコサミンの健康への影響(3サイト閲覧可)
課題4…建物に太陽光発電設備を設ける是非(必ず3サイト閲覧)
全課題終了後,参加者は課題4に関する質問紙(閲覧サイト再認,サイトを開く前に予測したサイト属性等)に答えた。
結果と考察
課題1,3,4のページ閲覧時間(ページが開かれていた総時間),検索結果閲覧時間(サイト名,ページ内容の抜出説明等を読んでいた時間)について二要因分散分析(要因1教示提示方法,要因2課題)を行った。どちらの閲覧時間についても課題の主効果のみ確認された(ページ閲覧: F(2,98)= 19.21, p<.01,検索結果閲覧: F(2,98)= 26.39,p<.01)。多重比較の結果,どちらの閲覧時間についても課題1と課題3,4の閲覧時間平均に差があり,課題1のみが他と比べて長かった(Table 1)。模擬閲覧後に行った課題4についての質問紙から,各群の閲覧ページの再認率,属性予測正答率を比較した。再認率,正答率を角変換し,各群の平均値についてt検定を行った結果,サイト再認率には差がなかったが,サイト属性予測については遂次提示群の正答率が一括提示群より有意に高かった(t=-2.17, p<.05)(Figure 1)。
結果は,概ね仮説を支持していると言える。両群とも課題3以降,参加者のページ閲覧時間,検索結果閲覧時間が短くなる傾向があった。これは,課題に対する慣れと疲労の影響だと考えられる。課題4について,各閲覧時間は両群とも同じであったが,質問紙の結果から,閲覧時に行ったサイト属性予測に違いがあったと考えられる。課題2で教示を遂次提示した方が,一括提示と比べて後の課題の閲覧時にサイト属性判断が正確になると確認できた。実際にページを開いて見る前後に,遂次的に注目するべきことを提示して考えさせた方が,一括して提示するより学習が定着しやすいと考えられる。
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本研究は科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究16K13475)による助成を受けて行った。