1:30 PM - 3:30 PM
[PE31] 幼児とのふれあい体験による中学生の対児感情の変容に関する検討
Keywords:ふれあい体験, 家庭科, 中学生
目 的
少子化や地域社会の希薄化が進行している現在,中学生が乳幼児と触れ合う機会が減少している。それに伴い,将来子どもを育てる立場の中学生が子育てに対して漠然とした不安や自信のなさを感じていることが報告されている(佐藤, 2004)。こうした社会状況の変化を受け,学校教育における保育学習や幼児とふれあう機会の充実が求められるようになった。中学校学習指導要領の技術・家庭の家庭分野では,幼児と触れ合うなどの活動を通して幼児への関心を高め,かかわり方を工夫する学習が必修となり,幼児とのふれあい体験を重視することが明記されている。
ふれあい体験に関する先行研究は多くみられる (岡野・伊藤・倉持・金田, 2011 ; 叶内・倉持, 2015) が,生徒のどのような心の変化が対児感情の変化や幼児理解につながったのかを明らかにした研究は見当たらない。
そこで本研究では,一年間継続して一人の幼児とふれあった中学生を対象に調査を行い,中学生が幼児とのふれあい体験を通してどのように対児感情を変化させ,幼児理解を深めていったのかを明らかにする。
方 法
(1)対象者:継続的に家庭科の時間にふれあい体験を行っているH県M中学校2年生78名(男子39名,女子39名)である。
(2)調査方法:SD法を用いた生徒の幼児に対するイメージ調査では,相反する形容詞11項目(例:好きな―嫌いな)を7段階に分け,肯定的なイメージにつながる形容詞(例:好きな,楽しい)に最も近い段階を7,否定的なイメージにつながる形容詞(例:嫌いな,つまらない)に最も近い段階を1として得点化した。さらに,気になった幼児の行動,その行動に対する自分の対応,その時の自分の気持ちについて自由記述による調査(心の声の記述式調査)を行った。
(3)調査日時:SD法による幼児のイメージ調査は,5月(2回),11月,12月,3月に計5回,心の声の記述式調査は,5月(2回),6月,11月に計4回行った。
(4)分析方法:SD法による調査結果を用いて平均値の比較や因子分析およびクラスター分析を行い,分類されたグループ別に自由記述による調査内容と照らして生徒の対児感情の変容背景を検討した。
結 果
本研究から,以下の二点が示された。
(1)ふれあい体験による対児感情の変化
SD法によるイメージ調査結果の平均値の時間的経過を比較したところ,全体的傾向としてふれあい直後は幼児に対するイメージは肯定的に変化するが,その後しばらくふれあう機会がないとふれあい前と同程度まで低下した。このことから,ふれあい直後のイメージの変化は一時的なものである場合が多く,継続して直接ふれあう機会を複数回にわたって設ける必要があると考えられる。また,ふれあい体験によって,生徒は幼児を「かわいらしい」など肯定的にとらえるようになるが,決して幼児とのふれあいを簡単だと思うようには変容しないことが示された。本ふれあい体験において,生徒と幼児が運動会などの行事に共に参加し,練習の中で生徒が幼児に「教える」活動を取り入れたことは幼児理解を深める上で有効であった。一方で,幼児と触れ合う中で教える困難さに躓き,幼児を世話する立場,幼児を育てる立場からの対応の難しさを感じ,幼児に対して否定的感情を有するようになった生徒も見られたことから,幼児とのふれあい体験を取り入れる時期や内容を工夫する必要があると考えられる。
(2)幼児への印象によるふれあい体験の効果
SD法によるイメージ調査において因子分析を行った結果,2つの主要な因子が検出され,第1因子を情意の因子,第2因子を認識の因子とした。この因子分析結果を用いてクラスター分析を行った結果, 8グループに分類された。それぞれのグループの因子別平均値の推移を自由記述による調査結果と比較した結果,幼児に対するイメージの変化は生徒のこれまでの経験や既有の幼児イメージ,ペア幼児の性格や特徴,関わりやすさ等に影響を受けていることが示された。これらの結果から,生徒と幼児がペアを組んで行う場合,ペアの組み方に配慮することが重要であると示唆された。
以上のことから,幼児と関わる機会の有無や幼児に対する関心の有無が生徒の対児感情や幼児理解に影響を与えることが示唆された。また,日常的に幼児と関わる機会が多く,幼児への関心が高いと,幼児に対して肯定的なイメージをもつことにつながりやすいことが明らかとなった。さらに,単にふれあった回数だけではなく,ふれあい体験の内容も生徒の幼児に対する印象に強く影響を与えていた。
少子化や地域社会の希薄化が進行している現在,中学生が乳幼児と触れ合う機会が減少している。それに伴い,将来子どもを育てる立場の中学生が子育てに対して漠然とした不安や自信のなさを感じていることが報告されている(佐藤, 2004)。こうした社会状況の変化を受け,学校教育における保育学習や幼児とふれあう機会の充実が求められるようになった。中学校学習指導要領の技術・家庭の家庭分野では,幼児と触れ合うなどの活動を通して幼児への関心を高め,かかわり方を工夫する学習が必修となり,幼児とのふれあい体験を重視することが明記されている。
ふれあい体験に関する先行研究は多くみられる (岡野・伊藤・倉持・金田, 2011 ; 叶内・倉持, 2015) が,生徒のどのような心の変化が対児感情の変化や幼児理解につながったのかを明らかにした研究は見当たらない。
そこで本研究では,一年間継続して一人の幼児とふれあった中学生を対象に調査を行い,中学生が幼児とのふれあい体験を通してどのように対児感情を変化させ,幼児理解を深めていったのかを明らかにする。
方 法
(1)対象者:継続的に家庭科の時間にふれあい体験を行っているH県M中学校2年生78名(男子39名,女子39名)である。
(2)調査方法:SD法を用いた生徒の幼児に対するイメージ調査では,相反する形容詞11項目(例:好きな―嫌いな)を7段階に分け,肯定的なイメージにつながる形容詞(例:好きな,楽しい)に最も近い段階を7,否定的なイメージにつながる形容詞(例:嫌いな,つまらない)に最も近い段階を1として得点化した。さらに,気になった幼児の行動,その行動に対する自分の対応,その時の自分の気持ちについて自由記述による調査(心の声の記述式調査)を行った。
(3)調査日時:SD法による幼児のイメージ調査は,5月(2回),11月,12月,3月に計5回,心の声の記述式調査は,5月(2回),6月,11月に計4回行った。
(4)分析方法:SD法による調査結果を用いて平均値の比較や因子分析およびクラスター分析を行い,分類されたグループ別に自由記述による調査内容と照らして生徒の対児感情の変容背景を検討した。
結 果
本研究から,以下の二点が示された。
(1)ふれあい体験による対児感情の変化
SD法によるイメージ調査結果の平均値の時間的経過を比較したところ,全体的傾向としてふれあい直後は幼児に対するイメージは肯定的に変化するが,その後しばらくふれあう機会がないとふれあい前と同程度まで低下した。このことから,ふれあい直後のイメージの変化は一時的なものである場合が多く,継続して直接ふれあう機会を複数回にわたって設ける必要があると考えられる。また,ふれあい体験によって,生徒は幼児を「かわいらしい」など肯定的にとらえるようになるが,決して幼児とのふれあいを簡単だと思うようには変容しないことが示された。本ふれあい体験において,生徒と幼児が運動会などの行事に共に参加し,練習の中で生徒が幼児に「教える」活動を取り入れたことは幼児理解を深める上で有効であった。一方で,幼児と触れ合う中で教える困難さに躓き,幼児を世話する立場,幼児を育てる立場からの対応の難しさを感じ,幼児に対して否定的感情を有するようになった生徒も見られたことから,幼児とのふれあい体験を取り入れる時期や内容を工夫する必要があると考えられる。
(2)幼児への印象によるふれあい体験の効果
SD法によるイメージ調査において因子分析を行った結果,2つの主要な因子が検出され,第1因子を情意の因子,第2因子を認識の因子とした。この因子分析結果を用いてクラスター分析を行った結果, 8グループに分類された。それぞれのグループの因子別平均値の推移を自由記述による調査結果と比較した結果,幼児に対するイメージの変化は生徒のこれまでの経験や既有の幼児イメージ,ペア幼児の性格や特徴,関わりやすさ等に影響を受けていることが示された。これらの結果から,生徒と幼児がペアを組んで行う場合,ペアの組み方に配慮することが重要であると示唆された。
以上のことから,幼児と関わる機会の有無や幼児に対する関心の有無が生徒の対児感情や幼児理解に影響を与えることが示唆された。また,日常的に幼児と関わる機会が多く,幼児への関心が高いと,幼児に対して肯定的なイメージをもつことにつながりやすいことが明らかとなった。さらに,単にふれあった回数だけではなく,ふれあい体験の内容も生徒の幼児に対する印象に強く影響を与えていた。