[PA58] 保育者に対する食物アレルギー児への支援プログラムの開発
座席位置の設定を中心に
キーワード:食物アレルギー, 保育者, 座席位置
はじめに
最近では,どの園でも食物アレルギーの対策が十分に行われており,誤食事故が起こることは少ない。しかし食事の際に,食物アレルギー児の座る場所を他の子どもとかなり離したり,別室で食べさせたりしている園がある。
それによって,食物アレルギー児は他の子どもたちとコミュニケーションをとることなく食事をする状況になっている。食べるということはとても楽しいことであり,保育者がいろいろなことを子どもたちに伝えながら,そして子ども同士が様々なことを話しながら時間を過ごすことが重要であり,食育の柱でもある。その経験から,子どもたちはいろいろな知識や認識を身につけ,心が育っていくのである。本稿では,食物アレルギー児の座席位置を決めることに焦点を当てた内容の研修プログラムを試作・実施し,評価した結果を報告する。
方 法
1.研修参加者
子ども支援研究所の会員園に所属している保育者54名が研修に参加した。4名組(11班)と5名組(2班)に分かれて着席した。1歳児の配置を考える班が5つ,3歳児4つ,5歳児4つとした。
2.使用したプログラムと研修担当者
保護者(徳田・水野, 2018)及び保育者(水野・徳田, 2018)に対する食物アレルギー児への支援に関する質問紙調査の結果をもとに,エピペンなどの実習を交えて事故防止と事故時の対応について学習する前半部(45分),座席配置を含めた心理的支援の内容を扱った後半部(45分)からなる保育者対象研修プログラムを試作し(第一版と呼ぶ),使用した。ここでは後半部の座席位置の設定についての研修内容について記す。
後半部の研修テーマは「食物アレルギー児に対する心理的な支援と周囲の子どもへの理解教育」であった。事前に,各班に保育室に見立てたホワイトボード,机に見立てる緑色のマグネットシート,子どもや保育者に見立てるカラーマグネットを配布した。まず,食物アレルギー児の保護者の「わが子が食事時に孤立しているのではないか」という悩みを取り上げ,座席の設定をどう考えるかという課題を出し,各班で話し合ってホワイトボードに配置を示してもらった。その後,参加者は事故を防ぎながらも十分なコミュニケーションをとれる座席の配置例についての講義を受け,その後,再度,班ごとに話し合ってホワイトボードに座席を配置した。また,講義前後の配置をカメラで撮影しておき、研修終了後にそれらの写真をもとに講義前後の配置比べて学習の成果を確認した。さらに,食物アレルギー児のことを周囲の子どもたちにどう伝えていくかという理解教育の具体的な方法とその際に使うことができる絵本・紙芝居に関する講義を受けた。研修会終了後に,プログラム評価のために無記名,自記式の質問紙調査を参加者に実施した。
前半部は食物アレルギーに詳しい小児保健学研究者,後半部は同様の教育心理学研究者が講義を担当した。研修は2018年1月20日に実施した。
評価結果
研修の効果を測るためにプログラム評価のための質問紙への回答を参加者に求めた。その結果,100点満点で評価した研修全体の満足度は平均86.6(SD11.6)であった。また,この研修内容と同じ研修を園内研修として行う必要性を尋ねたところ,5段階評価での評価点が4.5であり,必要性が高く認識された。時間や班分けについては「時間が適切であった」が91%,「短かった」が9%であり,さらに全員が,グループ人数(4~5名)が適切であったと評価した。保育者向けの研修会のグループワークでは人数が7~10名が通常であり,個々の発言の機会がとても少ないのが現状である。今回のプログラムでは少人数での作業を通して意見交換できたことが評価されている。
後半部の研修を受けて「新しい発見や気づきがあった」ことに対する評価点は5段階評価(数値の大きい方がポジティブ)として4.6,「アレルギー児が周囲の子どもの輪から外れずに食事ができる環境を作る自信が持てた」が4.3,「周囲の子どもへの理解教育に自信が持てた」が4.1であった。
また,後半部のグループワークの評価できる点として「他の園の工夫を知ることができた」85%,「子どもの席の配置を具体的にイメージできた」78%,「自分の考えを整理できた」50%が挙がった。
さらに詳しく知りたいこととして「事故防止のための具体的な方法」65%,「子どもと保育者の座席位置の関係」61%が挙がった。今後はそれらを盛り込んだ第二版のプログラムを作成したい。
最近では,どの園でも食物アレルギーの対策が十分に行われており,誤食事故が起こることは少ない。しかし食事の際に,食物アレルギー児の座る場所を他の子どもとかなり離したり,別室で食べさせたりしている園がある。
それによって,食物アレルギー児は他の子どもたちとコミュニケーションをとることなく食事をする状況になっている。食べるということはとても楽しいことであり,保育者がいろいろなことを子どもたちに伝えながら,そして子ども同士が様々なことを話しながら時間を過ごすことが重要であり,食育の柱でもある。その経験から,子どもたちはいろいろな知識や認識を身につけ,心が育っていくのである。本稿では,食物アレルギー児の座席位置を決めることに焦点を当てた内容の研修プログラムを試作・実施し,評価した結果を報告する。
方 法
1.研修参加者
子ども支援研究所の会員園に所属している保育者54名が研修に参加した。4名組(11班)と5名組(2班)に分かれて着席した。1歳児の配置を考える班が5つ,3歳児4つ,5歳児4つとした。
2.使用したプログラムと研修担当者
保護者(徳田・水野, 2018)及び保育者(水野・徳田, 2018)に対する食物アレルギー児への支援に関する質問紙調査の結果をもとに,エピペンなどの実習を交えて事故防止と事故時の対応について学習する前半部(45分),座席配置を含めた心理的支援の内容を扱った後半部(45分)からなる保育者対象研修プログラムを試作し(第一版と呼ぶ),使用した。ここでは後半部の座席位置の設定についての研修内容について記す。
後半部の研修テーマは「食物アレルギー児に対する心理的な支援と周囲の子どもへの理解教育」であった。事前に,各班に保育室に見立てたホワイトボード,机に見立てる緑色のマグネットシート,子どもや保育者に見立てるカラーマグネットを配布した。まず,食物アレルギー児の保護者の「わが子が食事時に孤立しているのではないか」という悩みを取り上げ,座席の設定をどう考えるかという課題を出し,各班で話し合ってホワイトボードに配置を示してもらった。その後,参加者は事故を防ぎながらも十分なコミュニケーションをとれる座席の配置例についての講義を受け,その後,再度,班ごとに話し合ってホワイトボードに座席を配置した。また,講義前後の配置をカメラで撮影しておき、研修終了後にそれらの写真をもとに講義前後の配置比べて学習の成果を確認した。さらに,食物アレルギー児のことを周囲の子どもたちにどう伝えていくかという理解教育の具体的な方法とその際に使うことができる絵本・紙芝居に関する講義を受けた。研修会終了後に,プログラム評価のために無記名,自記式の質問紙調査を参加者に実施した。
前半部は食物アレルギーに詳しい小児保健学研究者,後半部は同様の教育心理学研究者が講義を担当した。研修は2018年1月20日に実施した。
評価結果
研修の効果を測るためにプログラム評価のための質問紙への回答を参加者に求めた。その結果,100点満点で評価した研修全体の満足度は平均86.6(SD11.6)であった。また,この研修内容と同じ研修を園内研修として行う必要性を尋ねたところ,5段階評価での評価点が4.5であり,必要性が高く認識された。時間や班分けについては「時間が適切であった」が91%,「短かった」が9%であり,さらに全員が,グループ人数(4~5名)が適切であったと評価した。保育者向けの研修会のグループワークでは人数が7~10名が通常であり,個々の発言の機会がとても少ないのが現状である。今回のプログラムでは少人数での作業を通して意見交換できたことが評価されている。
後半部の研修を受けて「新しい発見や気づきがあった」ことに対する評価点は5段階評価(数値の大きい方がポジティブ)として4.6,「アレルギー児が周囲の子どもの輪から外れずに食事ができる環境を作る自信が持てた」が4.3,「周囲の子どもへの理解教育に自信が持てた」が4.1であった。
また,後半部のグループワークの評価できる点として「他の園の工夫を知ることができた」85%,「子どもの席の配置を具体的にイメージできた」78%,「自分の考えを整理できた」50%が挙がった。
さらに詳しく知りたいこととして「事故防止のための具体的な方法」65%,「子どもと保育者の座席位置の関係」61%が挙がった。今後はそれらを盛り込んだ第二版のプログラムを作成したい。