[PB37] 説明中の身体の動きと無意味つづりの再認成績との関連
キーワード:説明, 協同学習, 身体動作
問題と目的
近年,授業研究において身体の動きが注目されている。例えば山森ら(2018)は,授業中の様々な行動と身体の揺れとの対応を検討している。認知的処理と身体の動きとの関連性については,身振りを制限することによって,語彙の検索が抑制されることや,文章を直後再生する場合と比べて遅延再生する場合において自己接触行動が多く行われることなども示されている(藤井,1997)。そこで本研究では,他者への説明中の身体動作に注目し,説明内容の処理との関連を探索的に検討する。
方 法
実験参加者 大学生76名(男性24名,女性52名,平均年齢20.1歳)を対象に実験を実施した。実験参加者は2名1組の同性のペアで実験に参加した。分析可能なデータが取得された26ペア(男性18名,女性34)のデータを分析対象とした。
実験手続き 実験参加者は2m程度の間隔をとって正対して座った。ペアの一方には,「こふうり」などのひらがな四文字の無意味つづりからなる架空単語の意味を自由に想像して説明することを求めた。もう一方の参加者には説明をしっかり聞くことを求め,うなずきは構わないが,質問などの発言は禁止した。課題は10試行実施した。説明時間は1単語につき1分間とした。単語の提示順序は参加者間でカウンターバランスした。単語を説明する課題が終了した直後に,参加者は3の倍数を書き続けるという妨害課題を30秒間行なった。その後,60個の架空の単語から自分が説明した単語を10個選択してもらう再認課題を実施した。
身体動作の測定 架空単語を説明している際の身体の動きを測定するために,Microsoft社のXbox One Kinectセンサーを用いて,腰より上の17箇所の関節座標を30フレーム/秒で取得し,フレーム間での移動距離(mm)を計算した。
結 果
身体の動きと説明内容の処理との関連の様相は個人によって異なると想定し,今回は個人内での変動に注目して分析を行った。各単語を変動因として,4箇所の関節(頭,肩の中心,左手,右手)の移動距離と再認の成否とのポリシリアル相関係数を参加者ごとに算出した。全ての単語について正再認した参加者などを除いた22名の相関係数の分布をFigure1に示した。5%水準で有意な相関が見られたのは,頭は3名,肩は2名,右手は4名,左手は3名であった。ρ=0を帰無仮説とする1標本t検定の結果,左手(t=2.15, p=0.44)において5%水準で有意であった。
考 察
身体の動きと説明内容の処理との関連のあり方は,個人によって異なる可能性が示唆された。このような違いの規定因や,状況の違い(例えば,流暢に説明している時と,沈黙や言いよどみが生じている時など)との関連などを検討することが今後の課題である。
付 記
JSPS科学研究費16K04304の援助を受けた。
近年,授業研究において身体の動きが注目されている。例えば山森ら(2018)は,授業中の様々な行動と身体の揺れとの対応を検討している。認知的処理と身体の動きとの関連性については,身振りを制限することによって,語彙の検索が抑制されることや,文章を直後再生する場合と比べて遅延再生する場合において自己接触行動が多く行われることなども示されている(藤井,1997)。そこで本研究では,他者への説明中の身体動作に注目し,説明内容の処理との関連を探索的に検討する。
方 法
実験参加者 大学生76名(男性24名,女性52名,平均年齢20.1歳)を対象に実験を実施した。実験参加者は2名1組の同性のペアで実験に参加した。分析可能なデータが取得された26ペア(男性18名,女性34)のデータを分析対象とした。
実験手続き 実験参加者は2m程度の間隔をとって正対して座った。ペアの一方には,「こふうり」などのひらがな四文字の無意味つづりからなる架空単語の意味を自由に想像して説明することを求めた。もう一方の参加者には説明をしっかり聞くことを求め,うなずきは構わないが,質問などの発言は禁止した。課題は10試行実施した。説明時間は1単語につき1分間とした。単語の提示順序は参加者間でカウンターバランスした。単語を説明する課題が終了した直後に,参加者は3の倍数を書き続けるという妨害課題を30秒間行なった。その後,60個の架空の単語から自分が説明した単語を10個選択してもらう再認課題を実施した。
身体動作の測定 架空単語を説明している際の身体の動きを測定するために,Microsoft社のXbox One Kinectセンサーを用いて,腰より上の17箇所の関節座標を30フレーム/秒で取得し,フレーム間での移動距離(mm)を計算した。
結 果
身体の動きと説明内容の処理との関連の様相は個人によって異なると想定し,今回は個人内での変動に注目して分析を行った。各単語を変動因として,4箇所の関節(頭,肩の中心,左手,右手)の移動距離と再認の成否とのポリシリアル相関係数を参加者ごとに算出した。全ての単語について正再認した参加者などを除いた22名の相関係数の分布をFigure1に示した。5%水準で有意な相関が見られたのは,頭は3名,肩は2名,右手は4名,左手は3名であった。ρ=0を帰無仮説とする1標本t検定の結果,左手(t=2.15, p=0.44)において5%水準で有意であった。
考 察
身体の動きと説明内容の処理との関連のあり方は,個人によって異なる可能性が示唆された。このような違いの規定因や,状況の違い(例えば,流暢に説明している時と,沈黙や言いよどみが生じている時など)との関連などを検討することが今後の課題である。
付 記
JSPS科学研究費16K04304の援助を受けた。