[PB42] 校長によるエンパワーメントリーダーシップが教員による組織市民行動に及ぼす効果
制御焦点理論に基づく認知的プロセスの検討
キーワード:エンパワーメント, 制御焦点, 組織市民行動
本研究は,校長によるエンパワーメントリーダーシップが,教員の組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior; OCB)に及ぼす効果及び,制御焦点による調整効果を検討する。
『自由裁量的で,公式的な報酬体系では直接的ないしは明示的には認識されないものであるが,それが集積することで組織の有効性および効果性を促進する個人行動(Organ, 1983)』はOCBと呼ばれ,組織の生産性との関連が確認されてきた(Podsakoff et al., 2014)。学校組織において,教員は様々なOCBを行っており,それらが学校を安定化させ,トラブルを抑制し,組織開発を促していると示唆される(鎌田,2017)。
一方,組織マネジメントの視点からは,「任意」であるはずのOCBの総量や質,機能を組織レベルで確保する目的で「管理」することの困難さが指摘されてきた。Organ et al. (2006)は,OCBの生起を,機会,能力,動機付けの関数として捉えている。特に動機づけに関し,OCBを外因的に促すリスクは多くの研究者が提言しており(Bolino et al., 2013),内発性を促す文脈を構築することが重要である。この点について,組織成員に影響力を与え,価値観や規範に訴えるタイプのリーダーシップ行動である,エンパワーメントリーダーシップ(Arnold et al., 2000)の有効性が示唆される。エンパワードされた教員のOCBが促される効果は,個々の教員の制御焦点が調整する可能性がある。
例えば,促進焦点の教員がエンパワードされると,組織成員としての理想自己が活性化し,コストよりも報酬に意識づけられ,より多くのOCBを遂行すると思われる。一方,抑制焦点の教員は,職域の曖昧な教職において,義務自己の活性化によって,規範的に義務を感じ得るOCBが促進される可能性がある一方,コストに焦点化される傾向により,エンパワードされた場合も過度な市民行動は抑制されると想定される。
方 法
楽天リサーチ(株)によるWeb調査サービスにより,現職教員300名(男性223名,女性67名)にアンケートを行った。アンケートには,(1)フェイス項目(年齢,現任校の勤務歴,性別),(2)制御焦点(鎌田,2017),(3)エンパワーメントリーダーシップ (鎌田,2017),(4)OCB(鎌田,2017),その他本研究目的に含まれない項目群(組織風土,コミットメント等)が含まれており,5件法リッカート尺度に基づく回答を求めた。
結果と考察
OCB(変革志向OCB,課題志向OCB,関係志向OCB; 鎌田,2017)を説明変数とした多変量重回帰分析により,エンパワリングリーダーシップ,制御焦点の主効果・交互作用を検討した。全OCBに関し促進焦点の主効果が有意 (βs=.24-.38, p<.01) であり,変革志向OCB(β=.13,p<.05),関係志向OCB(β=26,p<.01)については抑制焦点の主効果も有意であった。最後に課題志向OCB(β=.17, p<.05)と関係志向OCB(β=.16, p<.05)に関して,エンパワーメントリーダーシップと促進焦点の交互作用が認められた(Figure1, 2)。
以上により,(1)校長のエンパワリングリーダーシップは,教員のOCBを促進すること,(2)促進焦点,抑制焦点のどちらもが様々なOCBを促し得ること,(3) 促進焦点の教員が校長のエンパワリングリーダーシップを認識する場合に,課題OCBや関係OCBが最も多く実行されることが示された。
--------------------------------------------
引用文献リストは,発表当日に掲示する。
付 記
This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number 17K18314.
『自由裁量的で,公式的な報酬体系では直接的ないしは明示的には認識されないものであるが,それが集積することで組織の有効性および効果性を促進する個人行動(Organ, 1983)』はOCBと呼ばれ,組織の生産性との関連が確認されてきた(Podsakoff et al., 2014)。学校組織において,教員は様々なOCBを行っており,それらが学校を安定化させ,トラブルを抑制し,組織開発を促していると示唆される(鎌田,2017)。
一方,組織マネジメントの視点からは,「任意」であるはずのOCBの総量や質,機能を組織レベルで確保する目的で「管理」することの困難さが指摘されてきた。Organ et al. (2006)は,OCBの生起を,機会,能力,動機付けの関数として捉えている。特に動機づけに関し,OCBを外因的に促すリスクは多くの研究者が提言しており(Bolino et al., 2013),内発性を促す文脈を構築することが重要である。この点について,組織成員に影響力を与え,価値観や規範に訴えるタイプのリーダーシップ行動である,エンパワーメントリーダーシップ(Arnold et al., 2000)の有効性が示唆される。エンパワードされた教員のOCBが促される効果は,個々の教員の制御焦点が調整する可能性がある。
例えば,促進焦点の教員がエンパワードされると,組織成員としての理想自己が活性化し,コストよりも報酬に意識づけられ,より多くのOCBを遂行すると思われる。一方,抑制焦点の教員は,職域の曖昧な教職において,義務自己の活性化によって,規範的に義務を感じ得るOCBが促進される可能性がある一方,コストに焦点化される傾向により,エンパワードされた場合も過度な市民行動は抑制されると想定される。
方 法
楽天リサーチ(株)によるWeb調査サービスにより,現職教員300名(男性223名,女性67名)にアンケートを行った。アンケートには,(1)フェイス項目(年齢,現任校の勤務歴,性別),(2)制御焦点(鎌田,2017),(3)エンパワーメントリーダーシップ (鎌田,2017),(4)OCB(鎌田,2017),その他本研究目的に含まれない項目群(組織風土,コミットメント等)が含まれており,5件法リッカート尺度に基づく回答を求めた。
結果と考察
OCB(変革志向OCB,課題志向OCB,関係志向OCB; 鎌田,2017)を説明変数とした多変量重回帰分析により,エンパワリングリーダーシップ,制御焦点の主効果・交互作用を検討した。全OCBに関し促進焦点の主効果が有意 (βs=.24-.38, p<.01) であり,変革志向OCB(β=.13,p<.05),関係志向OCB(β=26,p<.01)については抑制焦点の主効果も有意であった。最後に課題志向OCB(β=.17, p<.05)と関係志向OCB(β=.16, p<.05)に関して,エンパワーメントリーダーシップと促進焦点の交互作用が認められた(Figure1, 2)。
以上により,(1)校長のエンパワリングリーダーシップは,教員のOCBを促進すること,(2)促進焦点,抑制焦点のどちらもが様々なOCBを促し得ること,(3) 促進焦点の教員が校長のエンパワリングリーダーシップを認識する場合に,課題OCBや関係OCBが最も多く実行されることが示された。
--------------------------------------------
引用文献リストは,発表当日に掲示する。
付 記
This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number 17K18314.